[CML 064500] 村岡到著『日本共産党はどうなるか』(ロゴス)についての書評(紅林)
qurbys @ yahoo.co.jp
qurbys @ yahoo.co.jp
2022年 5月 22日 (日) 22:04:24 JST
紅林です。
村岡到著『日本共産党はどうなるか』(ロゴス)
についての書評を『図書新聞』に書いたと先日
お伝えしましたが、その際は、掲載号が発売中
のため、その内容はお伝えしませんでしたが、
次号が発売されましたので、下記書評の原稿を
お送り致します。
紅林 進
qurbys @ yahoo.co.jp
(以下、『図書新聞』3543号 2022年5月21日(土)(実際の発売日は5月14日(土)掲載)
日本共産党の理論的混迷の解明と脱皮の方途を提起する書
共産党の党員や支持者の方々にもぜひ読んでほしい
村岡到著『日本共産党はどうなるか』(3・15刊 四六版200頁 本体1700円 ロゴス)書評
評者:紅林進(フリーライター)
著者村岡到氏は、第四インターに所属し機関紙「世界革命」の編集部に配属されていた一九七五年から<日本共産党との対話>を提起し、その後、第四インターを離れ、「政治グループ稲妻」を立ち上げ、一九九六年に解散し、その後も文筆活動を続け、一貫してこの立場を貫き、日本共産党に関する数冊の書を著している。著者は、自身の批判のいくつかは共産党に取り入れられたり、あるいはその方向に進んでいる事例(「市民と野党の共闘」など)もいくつかあると明らかにしている。
本書は「第Ⅰ部 日本共産党との対話を求めて」、「第Ⅱ部 日本政治との対決」からなり、第Ⅰ部は「序章 日本共産党の党勢後退の深刻な実態」から始まり「日本政治の後進性と日本共産党の位置」、「私と日本共産党との関係」、「党勢後退の現実を直視し、脱皮を」、「日本共産党の活動概略」、「日本共産党の理論的混迷」、「志位委員長の講演の検討」、「三人の指導者への追悼文」という七つの章で構成、第Ⅱ部は「参院選にむけた対決点は何か?」、「医療は社会主義の主要課題」、「政局論評(季刊『フラタニティ』巻頭)再録」という三つの章で構成されている。「三人の指導者」とは何らかの接点があった、宮本顕治、上田耕一郎、吉岡吉典の三氏である。上田氏からの年賀状が添付されている。
また、「創語」なるコラムには、ベーシックインカムが話題になる前に提起した「生存権所得」や「平和の創造」「非暴力抵抗権」「歪曲民主政」「立候補権」「清廉な官僚制」「法拠統治」「友愛労働」「生活カード制」「複合史観」「党主政」など二一の言葉が列記されている(『友愛社会をめざす』(ロゴス、二〇一三年)で詳述)。
野党共闘を中心的に主導した日本共産党は、昨年十月末の衆議院選挙で一二議席から一〇議席に後退し、得票数でも四四〇万票から四一六万票に減らした。同党は最近は党勢の実数を公表しないが、著者は党勢後退の実態を明らかにする。党勢のピークは党員が一九九〇年に四九万人、「赤旗」読者は八〇年に三五五万部だったが、二〇二〇年一月の第二八回党大会では、「二七万余の党員、一〇〇万部の『赤旗』読者」とされた。ピーク時と比べると党員は五五%、「赤旗」は二八%に後退している。
第5章「日本共産党の理論的混迷」では、著者は先ず同党の「綱領の出発点の錯誤」を上げ、結党当時の時代認識の誤りを指摘する。次に「『敵の出方』論の誤り、その根源」、「『社会主義生成期』から『社会主義とは無縁』へ」、「『一国一前衛党』論と『民主集中制』論」、「『社会主義・共産主義』の迷妄」、「『階級闘争』、脱却か、継承か?」、「廃語の数々」、「理論を主張する前提」と節を立て、同党の理論的混迷を解明する。その中には「敵の出方」論や「社会主義生成期」論など同党がすでに捨て去った論もあるが、「『一国一前衛党』論と『民主集中制』論」は現在でも継続されている。この点は、私も共産党の脱皮にとって重要な課題だと考える。著者はその克服の方途として「複数前衛党と多数尊重制」を提唱する。逆に、「社会主義・共産主義」の用語については、マルクスも、時期によっては多少の相違もあるが、めざすべき未来社会として「社会主義」、「共産主義」のどちらの用語も使っているから、私としては「社会主義・共産主義」としても違和感はない。ジャルゴンと非難するのは言いすぎである。
また、著者は「階級闘争」思考からの脱却を主張するが、私はその考えには同意できない。生産手段を所有する階級と、所有せず、そのために自らの労働力を売るしかない階級が存在し、新自由主義の下、格差と搾取が一層拡大している中、表面上の形態は変わったとはいえ、厳然と存在する階級関係を見失ってはならないと私は考える。
著者は、第6章第3節で「政権構想」の重要性と「閣外協力」の必要性を力説しているが、この主張はまったくその通りだと思う。立憲民主党を中心とする自公政権に代わる新政権が誕生するとして、その場合に「日米安保条約破棄」などの基本政策を曲げずに、新政権誕生に協力するためには、閣外から協力するしかない。党の基本政策を曖昧にして政権に参加すれば、安保破棄の基本政策を捨て安保・自衛隊を容認して自社さきがけ政権に入り、その結果、社会党の凋落に導いた村山富市社会党の二の舞になるであろう。逆に党の基本政策を貫こうとすれば閣内不一致で内閣の崩壊に導くであろう。
第Ⅱ部「第9章 医療は社会主義の主要課題」について。この章は季報『唯物論研究』の「特集・資本主義を超える」(二〇二一年十一月)に掲載された論文からのものであり、同誌の次号(二〇二二年二月)で田上孝一氏が「著者の問題意識は正当だ」と評している。これは、前記の「政権構想」の一環であり、私も同意する。
本書は、日本共産党を批判的に支持する立場から長年観察してきた著者ならではの考察と提案が詰まった書であり、共産党の党員や支持者の方々にもぜひ読んでほしい書である。
CML メーリングリストの案内