[CML 064476] アジア世界KK重要情報(90)

kenkawauchi @ nifty.com kenkawauchi @ nifty.com
2022年 5月 19日 (木) 16:07:16 JST


アジア世界KK重要情報(90)

           2022年5月19日

 私は、河内謙策です。私は、アジアと世界の平和や人権等をめぐる諸問題につき、
私が重要と考える情報を皆様に発信させていただきます。私は体調がよくないので、
大体月に2回ぐらいのペースでの発信になるかと思います。この情報の転送、転載は
自由です。私の意見については、皆様が批判をされることは自由ですが、私は、体の
都合があるので、反批判はしませんので、御了解ください。

 弁護士 河内謙策 連絡先:東京都豊島区南大塚3丁目4番4-203号
(TEL03-6914-3844、FAX03-6914-3884)

Email:kenkawauchi @ nifty.com

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 『文藝春秋』6月号掲載の座談会について



 2022年6月号の『文藝春秋』に、これからのウクライナ問題を考えるうえで、見逃
せな

い重要な座談会が掲載されています。この座談会は、「日米同盟vs中・露・北朝鮮」
というのが全体のタイトルで、出席者は、山下裕貴 自衛隊元陸将、阿南友亮 東北
大学大学院 法学研究科教授、小泉悠 東京大学先 端科学技術センター専任講師、
古川勝久 国連安全保障理事会・北朝鮮制裁委員会 専門家パネル元委員 という顔
ぶれです。従来の著名なロシア専門家でなく、気鋭の「新人」を揃えたところに、同
企画の意気込みが見られます。

 同座談会は、3章構成で、第1章「ウクライナ戦争で笑うのは誰か」で、全体を俯瞰
し、第

2章「日本列島が戦場になる日」で、①中国が台湾・尖閣侵略、②北朝鮮 核ミサイ
ルが着弾

、③ロシアが北海道に侵攻、の3つのシミュレーションをおこない、第3章「欧州の
『平和ボケ』から日本は学べ」でしめくくっています。

 全体は、雑誌という制約があるからでしょうが(座談会をした時点と雑誌発売日の
間に日数がある)、少し、突っ込みが不足している感があります。たとえば、ロシア
の核使用や中国の介入問題については、十分に触れられていません。また、ロシア軍
やウクライナ軍の間の「通常」の戦闘の問題についても、補給の問題や兵器の優劣の
問題、戦術の問題、軍隊や国民の士気の問題には十分には触れられていません。

 つい、無い物ねだりをしてしまいましたが、

読んで、議論する価値が十分にあることは、間違いありません。お勧めいたします。



 『文藝春秋』6月号掲載の

 J・ミアシャイマー論文を読む



 シカゴ大学教授J・ミアシャイマーといえば、

国際政治学の大家で、この「アジア世界KK重要情報」でも、何回か、その論文を引用
させていただきました。

 そのミアシャイマーのユーチューブで配信されたインタビューの奥山真司による翻
訳が

『文藝春秋』2022年6月号に掲載されています。

 このインタビューのタイトルは「この戦争の最大の勝者は中国だ」というもので、
このインタビューの内容も、タイトルと同様に、極めて刺激的なものです。

 ミアシャイマーは、米国をはじめとする西側の対東欧政策が今日の危機を招いた、
と述べています。すなわち、「西側の対東欧政策の柱は、NATO(北大西洋条約機構)の
東方(旧ソ連諸国)への拡大です。これこそが、現在の危機の根本的な要因なので
す」と言うのです。

 私は、冷戦体制の崩壊後、西側諸国が冷戦体制の崩壊は、西側の勝利と考えて、自
己に対する反省の意識や国民感情の分析もないままに、西側の思考様式や政治的・経
済的仕組みを、ソ連や東欧諸国に、かなり機械的に押し付けていったことは誤りで
あったと思います(この背景には、アメリカの日本に対する占領の「成功」を評価す
る意識もあったようです。また、この政策はネオコンと呼ばれる勢力が中心になって
いました)。(これにより多くの人が精神的に傷つけられました。プーチンも、その
一人だったようです。だから、プーチンの帝国主義思想の根源にはロシア民族主義が
あります。もちろん無条件にアメリカ化に飛びついた人もいましたが。)私は、21世
紀の初めに、アメリカに留学していたので、アメリカ人が傲慢になり、一種のユー
フォリア意識にとらわれていたことを見ています。そして、ソ連・東欧に対する西側
の優越意識を背景にして、NATOの東方拡大がすすめられたのです。ロシアはNATO拡大
を嫌悪し、恐怖を感じたのです。ミアシャイマーのいうように「熊の目を棒でつつい
たのです」。

 しかし、西欧諸国が、適切でないNATO拡大政策をとったことが背景にあるとして
も、だからといって、ロシアの勢力圏思想にもとづく行動が許されることはないので
す。

 たとえば、韓国が共産主義になったとしても、その共産主義体制が悪いからといっ
て日本が韓国に侵略して、その体制を是正することは許されないのです。それが、第
2次大戦後の国際社会の原則・国際法の原則なのです。

この原則を認めなければ、結局、力による現状変更を認めることになってしまうので
す。

 ミアシャイマーは、この点で誤っています。私は、どうしても賛成できないので
す。



 ミアシャイマーは、ウクライナのために米国は東アジアへの軸足移動ができなく
なっている、また、ロシアを中国の側に追いやってしまっている、と批判します。

 私は、米国が、もっと早くから、たとえばロシアに強力な軍事的警告をすべきだっ
たとか、

米軍の一部をウクライナに駐留させるなど、今よりも適切な政策をとるべきであった
と考えますが、ウクライナを支援することは、やむをえない必然であったと考えます
(中国の台湾・日本への侵略に対する対抗策が不十分になっていることは、ミアシャ
イマーの言っている通りだと思います)。

 また、ミアシャイマーの言っていることからすれば、ロシアは中国よりも我々の方
に味方するように、われわれが行動すべきだったと言っているように見えます。しか
し、これも、私は納得できません。ロシアと中国の間には、たしかに矛盾があります
が、それを大きく見ることはできません。それは、北方領土問題で、安倍内閣がロシ
アを日本の方に引き付けようとして失敗したことで明らかです。



 ミアシャイマーがいう、「日米両国で『込め』に連携せよ」ということに、私は大
賛成で、私は、そのために、長い間奮闘してきました。それだけに、ミアシャイマー
の上記の点の見解には賛成できないのです。

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