[CML 064427] ゼレンスキー氏について

久下格 kuge_on_cml @ aoisora.org
2022年 5月 14日 (土) 22:18:40 JST


●ゼレンスキー氏について●
=あるいは、ロシア発のフェイクニュースについて=

 元国労の久下です。ウクライナをめぐって、ロシア発のフェイクニュースが世界中で拡散されています。下記のリンクもその一つですね。古い友人たちが facebook でこの記事を持ち上げているのを読んで悲しくなりました。

https://www.mag2.com/p/news/538575
「ゼレンスキー大統領の懐が侵攻後も膨らみ続けている謎」

 フェイクニュースの特徴のひとつに、「少しの真実に膨大な嘘が混ぜられていることが多い」というのがあります。この記事はまさにそのひとつです。
 たしかにゼレンスキー氏は胡散臭い。腐敗した親ロシア派と腐敗した新西欧派が交互に政権については私腹を肥やしてきたなかで、腐敗一掃と国民和解を旗印に大統領選挙に圧勝したゼレンスキー氏は、当初は本気だったのかもしれません。しかし、ゼレンスキー氏はズルズルと腐敗した社会体制に取り込まれていったように思います。彼の後ろ盾となったのも、やはり腐敗したオルガルヒでした。
 そして確かに、ゼレンスキー氏が租税回避地に資産を隠したことが、昨年10月、ICIJ (国際調査報道ジャーナリスト連合)の公表した「パンドラペーパー」で指摘されています。しかし、真実はここまでです。記事が指摘する蓄財額はあまりに巨額(考えられない?額)です。
--------記事より--------
「昨年公表された「パンドラペーパーズ」によって、ゼレンスキー氏は大統領に就任した後の2年間で8億5000万ドルもの蓄財をなしたことが暴露されたのです。」
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 8億5000万ドルといえば、約1100億円です。パンドラペーパーによってゼレンスキー氏による年間500億円以上の蓄財が暴露された?? ちょっと考えにくいと思いました。そんなことがパンドラペーパーに書かれているのか? 調べる必要があると思いました。また、「ロシアの軍事侵攻が始まって以来、大統領の資産は毎月1億ドルのペースで膨れ上がっている」ともあります。2月末の侵攻からすでに2か月半。ゼレンスキー氏が毎月130億円づつ私腹を肥やしているとすれば、戦争が始まってから彼は325億円を蓄財したことになります。しかし、この金額について記事はニュースソースを明らかにしていません。
 実際、ICIJ の公表したパンドラ文書ではどうなっているのか? ICIJのサイトで「Zelensky」を検索すると7つの記事が見つかります。
 https://www.icij.org/?s=Zelensky

 そのうち、パンドラ文書を解説している記事は下記と思われます。
 https://www.icij.org/investigations/pandora-papers/political-and-business-links-to-pandora-papers-roil-parliaments-anti-corruption-and-tax-authorities-as-global-fallout-swells/

 記事中にゼレンスキーの画像があって、「Explore the offshore connection」という文字をクリックするとゼレンスキーを紹介するページに飛びます。
 https://www.icij.org/investigations/pandora-papers/power-players/?player=volodymyr-zelenskyy
 以下、その紹介文を DeepL で訳出しました。
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パンドラ文書に含まれる流出文書により、ゼレンスキーは匿名のオフショア法人の株式を所有しており、現在では政治的に近い同盟者である彼のビジネスパートナーも同様であったことが明らかになった。文書によると、ゼレンスキーは英領バージン諸島で登記されたMaltex Multicapital Corpというペーパーカンパニーの株式を所有しており、流出した記録には、映画制作・配給会社の株式を保有していると記されている。
2019年3月、大統領に選出されるわずか1カ月前に、ゼレンスキーは、いわゆる実質的な所有者の株式を、キエフで最も親しい大統領補佐官のひとりとなる親友でビジネスパートナーのセルギイ・シェフィールに密かに譲渡した。彼らはゼレンスキーがウクライナの大統領になる前に、映画制作事業で一緒に働いていた。
2019年6月25日の文書によると、シェフィールはゼレンスキー政権に参加した後もマルテックス社の株式を保持していた。シェフィールとゼレンスキーは、ICIJパートナーの度重なるコメント要請に応えていない。
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 今回、ICIJ のサイトで私が見つけることのできたゼレンスキー氏の疑惑はこれだけです。別の個所があれば教えてください。もちろん、所有している会社の株式を租税回避地に隠すのは問題ですが、これは1000億円以上の不正蓄財を告発した記事ではありません。記事を執筆した浜田かずゆき氏は、ニュースソースを示すべきです。もちろん、3月以降の300億円以上の蓄財についても。
 パンドラペーパーでゼレンスキー氏がとり上げられたことについては、海外の大手メディアも書いています。しかし、「タックスヘイブン(租税回避地)を利用した取引にかかわっていた」と言う指摘以上の記事は見つかりませんでした。
・ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は、2019年大統領選で当選する直前に、資産を秘密の国外企業に移した。(BBC Japan 2021/10/04)
 https://www.bbc.com/japanese/58784715
・国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が新たに入手した資料から、ヨルダンのアブドラ国王やウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領を含む世界の政治指導者らがタックスヘイブン(租税回避地)を利用した取引にかかわっていたことが明らかになった。(Forbes 2021/10/15)
 https://forbesjapan.com/articles/detail/43650)

●検証の結果

 ゼレンスキー氏は大統領になる前に、仲間とともに資産を租税回避地に退避させていた。…このこと以上の事実は確認できませんでした。

●浜田かずゆき氏はどんな人か?

 ところで、この記事をかいた浜田かずゆき氏とはどんな人か調べてみると…。元参議院議員。自民党→国民新党→新党改革→次世代の党→日本のこころを大切にする党→おおさか維新の会。めちゃめちゃ右翼やん。WiLL にもよく書いていらっしゃいますね。
・日中関係についての浜田氏の主張
中国については、日本との歴史的なかかわりを蒸し返して日本の持つ技術や資金を巻き上げていると指摘し、その具体例として、遺棄化学兵器問題を挙げた。浜田は、日中間の20世紀前半の戦争の歴史に関して、「中国は過去の歴史を梃子にすれば、日本からはありとあらゆる譲歩を獲得することができると考えている」として、「魔法の杖」のように扱われていると評している。(Wikipedia)
・陰謀論の人でもあります。
新潮45の2005年3月号に「スマトラ沖地震に隠された仰天情報」との論文を寄稿した。この中で浜田はスマトラ島沖地震が「地震兵器」、「津波兵器」により引き起こされた可能性があるとし、アメリカの関与を示唆した。また総務大臣政務官就任後、2011年7月の衆議院東日本大震災復興特別委員会で「地震や津波を人工的に起こすのは技術的に可能で、国際政治、軍事上で常識化されている」と持論を展開した。(Wikipedia)

●オランダの「民主主義のフォーラム」?

 記事の中に、「オランダの『民主主義のフォーラム』では、…(ゼレンスキー氏に)情報公開を求めた」とあるのを読んで、?? と思いました。「オランダの『民主主義のフォーラム』」とは?
 市民運動のような名前ですが「民主主義フォーラム」は反移民を掲げ、EUに懐疑的な極右政党です。EUの極右にはロシアのプーチン体制を擁護する勢力が多いのですが、「民主主義フォーラム」はそうした立場に立っている可能性が高いと思われます。浜田氏はオランダの極右政党によるゼレンスキー攻撃の尻馬に乗っているのではないでしょうか?
https://www.afpbb.com/articles/-/3317788

●侵略者と戦うウクライナ人を支援しよう。それはゼレンスキー氏を無条件で支持することではない。

 今、私たちは、ゼレンスキー氏が胡散臭いとしても、ゼレンスキー政権の政策に支持できない政策があるとしても、ロシアによるウクライナ侵略反対! ロシア軍はただちに撤退しろ!という一点で統一して、闘うべきではないでしょうか?
 私は長く労働組合にいたので、今、ウクライナの労働者がどのような状態に置かれているのかが一番気がかりですが、フランスなど西側の労働組合の中には、ウクライナ東部、前線に近い労働組合に支援物資を直接届ける運動に取り組んでいる組合もあります。ウクライナの労働者は労働組合を維持する一方で、ウクライナ軍(正規軍)や領土防衛隊(市民軍)に参加し、また非武装の後方要員として、男も女も力をあわせてロシア軍と戦っています。
 戦争が終わった時、どのようなウクライナを再建するのかが問われるでしょう。その時、私は労働者階級が、市井の人々とともに主体となって民衆の国を再建することを望みます。そのためには労働組合の組織を維持し続けること、ゼレンスキー政権から独立した展望を持ち続けることは非常に大切だと思います。しかし、ロシア軍に蹂躙されればウクライナはなくなってしまうのです。80年前、日本帝国主義の侵略に対して、中国の人民が宿敵蒋介石の軍隊と手を結んで、国共合作で戦ったように、今はロシア軍と戦うべき時だと思います。
 ロシアとも戦う! ゼレンスキーとも戦う! という主張の友人たちの、戦争を憎む気持ちは疑いません。しかし、ロシア発のフェイクニュースを拡散するのはやめましょう。悲しくなります。


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