[CML 064944] 21世紀ラテンアメリカにおける米国のクーデターとクーデター未遂事件
yorikazu shimada
ningen @ hotmail.com
2022年 7月 18日 (月) 03:47:34 JST
米帝が支援する「民主化運動」はとりあえず疑おうということでいいと思います。嶋田
------------
21世紀ラテンアメリカにおける米国のクーデターとクーデター未遂事件
スタンスフィールド・スミス著 January 6th, 2022
https://dissidentvoice.org/2022/01/21st-century-us-coups-and-attempted-coups-in-latin-america/
21世紀の間、米国は、企業エリート、伝統的なオリガーキー、軍隊、企業メディアと協力して、米国企業の利益よりも国民のニーズを重視するラテンアメリカ政府に対するクーデターを継続的に試みてきた。米国がラテンアメリカの国々で組織したクーデターは、20世紀だけの現象ではない。
しかし、今世紀に入り、米国の支配者は新たなクーデター戦略に転じ、ソフトクーデターに頼っている。それは1970年代のチリ、アルゼンチン、ウルグアイなどにおける悪名高い残虐な軍事的ハードクーデターから大きく変化したものである。これらの新しいクーデターにおける米国の中心的な関心の一つは、そのクーデターにできるだけ合法的で民主的な外観を維持させることであった。
超大国米国は、ソフトクーデターの成功は、反政府デモや抗議行動に人々を動員することにかかっていると認識している。ジーン・シャープ流のカラー革命は、米国際開発庁(USAID)、全米民主主義基金(NED)、米国民主党国際研究所(NDI)、国際共和党研究所(IRI)、オープン・ソサエティ財団、フォード財団など、米国やヨーロッパのNGOから多額の資金提供を受けている。彼らは「人権」を公言する組織(ヒューマン・ライツ・ウォッチ、アムネスティ・インターナショナルなど)、地元の反体制組織、そして最近ではリベラル左派のメディア(Democracy Nowも)を利用して、その下準備をする。
米国の体制転覆作戦は、今世紀に入り、途方もない成功を収めた3つのメカニズムを見出した。第一に、制裁と完全な経済封鎖を通じた一国に対する経済戦争は、標的とする政府に対する国民の不満の高まりをつくりだす。第二に、企業メディアとソーシャル・メディアを使って偽情報(多くの場合、「人権」「民主主義」「自由」「腐敗」にかんするもの)を流し、米国の経済的利益よりも自国の発展を優先させる指導者に対する大衆運動を煽ることである。これは、CIAのソーシャルメディア作戦に大きく依存し、偽情報で国を覆い尽くす。第三に、法による戦い。民主主義的な合法性を装うことで、自国の国家主権を守る人々を失脚させることである。法による戦いに関連するものとしては選挙を通じたクーデターがあり、ハイチ、ホンジュラス、ブラジルなどでは、選挙を利用してクーデターを引き起こすか援助した。
クーデターの試みの多くは、国民が政府を守るために結集し、米州機構(OAS)、南米諸国連合(UNASUR)、リオ・グループといったラテンアメリカの組織がこれらの政府を守るために重要かつタイムリーな連帯宣言を行ったため、失敗に終わった。今日、リオ・グループはもはや存在せず、UNASURは大幅に弱体化し、OASは今や完全に米国の支配下にある。
米国が支援するクーデターとクーデター未遂
2001年ハイチ
ドミニカ共和国に拠点を置くハイチ人の準軍事組織が、アリスティド大統領の政権所在地である国立宮殿への攻撃を開始した。この攻撃は失敗に終わったが、1980年代のニカラグアのコントラと同様に、準軍事組織は2004年までハイチへの襲撃を繰り返し、2004年の米軍による直接クーデターへとつながる重要な役割を担った。
2002年 ベネズエラ
米国政府は、ウゴ・チャベスに対する4月11日から14日までの短期クーデターに部分的に資金を提供し、支援した。
2002-3年 ベネズエラ
ベネズエラ国営石油会社PDVSAの経営陣は、ウゴ・チャベスを政権から追い出すために「石油ストライキ」(実際は石油労働者のロックアウト)を組織した。これは2003年初頭に再び失敗した。
2003年 キューバ
2003年3月の米国のイラク侵攻に至るまで、ジョン・ボルトンは、サダム・フセインのイラクが大量破壊兵器(WMD)を持っていると虚偽の主張と同じように、キューバはテロ目的の生物兵器を生産するテロ支援国家であると主張した。この間、米国はキューバに向けた反キューバ・プロパガンダを強化し、キューバの「民主化推進」団体への資金提供を増やす一方、反キューバの右翼団体も活動をエスカレートさせた。米国は「反体制派」グループに金を払い、そうした集団が7隻の船と飛行機をハイジャックして米国にたどり着くなど、抗議と混乱を組織させたが、彼らは起訴されることはなかった。その目的は、キューバに無秩序をもたらし、生物的大量破壊兵器疑惑とあいまって、秩序回復のための国際的な介入を要求することであった。キューバは2003年春にこの運動を鎮圧した。
2004年 ハイチ
20世紀初頭風のクーデターで、米軍はハイチに侵攻し、アリスティド大統領を誘拐し、中央アフリカ共和国に亡命させた。
2008年 ボリビア
メディア・ルナ(国内東部の反政府地域)のクーデター未遂には、米国が資金提供したボリビア低地の右翼指導者と一部の先住民族集団が関与していた。彼らは豊かなメディア・ルナ地方を他の地域から分離しようとした。その過程で、彼らはエボ・モラレス大統領の支持者20人を殺害した。
ボリビア政府のフアン・ラモン・キンタナは、2007年から2015年の間に、NEDは経済・社会組織、財団、NGOなど約40の機関に1000万ドルの資金を提供したと報告している。米国大使館の公電には、社会運動や先住民族の運動をエボ・モラレス政権に敵対させようとしたことが記されている。
2009年 ホンジュラス
ホンジュラス軍は、米国の命令により、マヌエル・セラヤ大統領を拘束し、パルメロラの米軍基地に連行した後、コスタリカに亡命させた。これにより、残忍な新自由主義的なドラッグ密売政権の時代が始まったが、2021年、セラヤの妻であるシオマラ・カストロの地滑り選挙で幕を閉じた。
2010年エクアドル
9月、先住民族組織CONAIEとPachakutikに支援された軍と警察部隊によるラファエル・コレア大統領に対するクーデターが失敗した。米国は警察と軍隊に浸透し、NEDとUSAIDはそうした先住民族組織に資金を供給していた。
2011年 ハイチ
2010年に20万人の死者を出したハイチ地震の後、ヒラリー・クリントン国務長官は、ハイチへの米国の援助を打ち切ると脅してミシェル・マテリを大統領に押し付けた。クリントンはハイチに飛び、マテリが選挙評議会によって予選通過者の1人として認められていなかったにもかかわらず、彼を2人の決選候補の1人に指名するよう要求した。有権者のボイコットで、投票率が20%未満だったにもかかわらず、マテリは「決選投票」の勝者と発表された。ハイチ人の多くがボイコットした理由のひとつは、国内で最も人気のある政党である「ラヴァラの家族」(アリスティド元大統領の政党)が投票対象から外されていたことだ。そのハイチの選挙には、USAID、カナダ、OAS、欧州連合などの外国組織が資金を提供した。
2012年 パラグアイ
フェルナンド・ルゴ大統領は、17人の死者を出した土地占拠にかんする農民と警察による対立でスケープゴートにされた。ルゴ大統領は、法的クーデターにより、自らを擁護する機会もなく罷免された。
2013年 ベネズエラ
ニコラス・マドゥロが僅差で勝利した4月の選挙後、米国が支援し敗北したエンリケ・カプリレスは、選挙が操作されたと主張し、支持者を街に動員し激しい抗議行動を行った。当時のUNASUR諸国の強さもあり、米国は他の国にマドゥーロの勝利を拒否するよう説得することができなかった。
2014年 ベネズエラ
レオポルド・ロペスとマリア・コリーナ・マチャドが率いる "La Salida"(出口)という名の街頭抗議行動は、マドゥロ大統領を政権から追い出すことを目的とし43人の死者を出した。ここでもアメリカは、UNASURでもOASでも、他の中南米諸国の政府からマドゥーロを非難させることはできなかった。
2015年エクアドル
2012年から2015年の間に、NEDから3000万ドルが政党、労働組合、反政府組織、メディアへ送られた。2013年だけで、USAIDとNEDはエクアドルで2400万ドルを使った。これが実を結んだのは2015年、USAIDの資金提供に感謝したCONAIEが、先住民主導の蜂起を呼びかけたときだ。8月上旬のデモ行進に始まり、8月10日にキトで蜂起とゼネストを決行した。クーデター未遂は失敗した。
2015年 ハイチ
大統領選の新たなクーデターには、米国から3000万ドルもの資金が提供された。米国もOASも選挙は無効であるとのハイチ人の要求を拒否。警察は野党の支持者を攻撃し、実弾やゴム弾で多くの人々が死亡した。ミシェル・マテリ大統領の選んだ後継者ジョブネル・モイーズが大統領となった。
2015年 グアテマラ
米国は、グアテマラ右派のオットー・ペレス・モリーナ大統領が十分に従順でなかったため、クーデターを仕組んだ。
2015年 アルゼンチン
アルゼンチンの検察官アルベル・ニスマンは、クリスティーナ・フェルナンデス大統領が1994年のユダヤ人コミュニティセンターの爆破事件に関与しているという偽の刑事告発を行った数日後に殺害された。これはスキャンダルとなり、彼女を失脚させ、新自由主義者を再び政権に就かせるために利用された。新自由主義勢力とメディアは、この事件を利用して、キルチネル連合が再び大統領選挙で勝利するのを妨害したのである。
2015〜2019年 エルサルバドル
米国の支援を受けたエルサルバドルの右派野党は、ファラブンド・マルティ民族解放戦線(FMLN)のサルバドール・サンチェス・セレン大統領の政権を不安定化しようとした。 保守派のマスメディアは政権に対する中傷キャンペーンを展開し、警察署長によれば、ギャングによる殺人の急増は、死者数を増やしてFMLN政権を排除するためのキャンペーンの一環であったという。後にサンチェス・セレンとFMLNのメンバーであった他の元政府関係者は、「新自由主義や他の支配形態に対する民衆の組織と抵抗を解体しようとする保守的な権力集団が近年用いている戦略」である法的戦争の標的となった。
2016年 ブラジル
米国が支援する右派運動が、労働者党のジルマ・ルセフ大統領に対し、「汚職」を理由にキャンペーンを開始した。企業メディアに助けられ、彼らは2015年を通じてブラジルの大都市で一連の抗議行動を組織した。2016年3月、大規模な政治デモで50万人以上が集まり、ルセフ大統領の弾劾を支持した。彼女はついに議会で弾劾され、法的クーデターは成功し罷免された。
2017年 ベネズエラ
レオポルド・ロペス率いるマドゥロ大統領の退陣を求める暴力的な抗議デモ(グアリンバ)が発生し、126人の死者が出た。グアリンバは全国制憲議会の選挙後に終了した。
2017年 ホンジュラス
米国は、広範な選挙不正と政府による抗議活動に対する数十人の殺害を伴うフアン・オルランド・エルナンデス大統領による選挙クーデターを支援した。OASが新しい選挙を要求していたにもかかわらず、米国はすぐに彼を大統領として承認し、他の国にもそうするよう圧力をかけた。
2018年 ニカラグア
反FSLNメディアとソーシャルメディアの偽情報キャンペーンに支えられた米国の支援による暴力的な抗議活動は、ダニエル・オルテガ大統領とサンディニスタを権力から排除しようとした。2ヵ月後、国民感情は暴力的な抗議行動に強く反発し、抗議行動は崩壊した。
2018年 ブラジル
ルーラ・ダ・シルバ元大統領が大統領選の有力候補だったが、米国とブラジル右翼の法的戦争作戦により、虚偽の汚職容疑によって投獄された。ブラジルの有権者に数億のWhatsAppメッセージを送る大規模なフェイクニュース作戦に助けられ、ボルソナロが選挙に勝利した。
2019年 ベネズエラ
1月、ペンス米副大統領が米国の承認を確約した後、フアン・グアイドはベネズエラの大統領であることを宣言した。4月30日、グアイドとレオポルド・ロペスが計画した空軍基地外での蜂起は失敗に終わった。その後、コロンビアからの傭兵の攻撃は、大統領官邸にいるマドゥロ大統領の捕獲に失敗した。
2019年 ボリビア
米国は、エボ・モラレスに対するクーデターを、モラレスが選挙を操作したという虚偽の主張をソーシャルメディアキャンペーンで行うなどして、画策した。OASはクーデターを合法化する上で重要な役割を果たした。ヘアニネ・アニェスによる悲惨なクーデター政権は、わずか1年余り続いただけだった。
2021年 キューバ
米国は7月と11月にキューバ政府に対する抗議行動を画策し、資金を提供した。米国は、新しい「独立した」報道機関やソーシャルメディアのプラットフォームを構築することで、反革命的指導者の新世代を築こうとした。これらは、2003年の抗議行動よりも悲惨な失敗に終わった。
2021年 ボリビア
10月、右派は、現在収監されているアニェス前大統領の釈放を要求し、クーデターとゼネストを組織しようとした。この試みは、メディア・ルナの中心地であるサンタクルスでのみ成功した。その後、大衆組織は、MAS政権を守るために150万人を集めて首都に結集した。
2021年 ペルー
右派のオリガーキは、先住民の民衆運動から生まれた指導者であるカスティージョ新大統領を「永久に道徳的能力がない」という理由で失脚させようと、法的戦争を用いて失敗した。しかし、カスティージョ大統領に対して、「汚職」に関する新たな法的戦争訴訟が起こされた。
2021年 ニカラグア
米国は、2018年のニカラグアの抗議行動を繰り返すことを計画し、それとダニエル・オルテガ政府が大統領選挙の前に、米国が資金提供した野党の「事前候補者」を投獄したというでっち上げキャンペーンと組み合わせた。このクーデターの試みは失敗したが、米国とOASは選挙結果を認めることを拒否した。
2022年、米国はキューバ、ニカラグア、ベネズエラ、ボリビア、ペルー、そして今回、進歩的なボリッチ大統領が選出されたチリに対して「体制転覆」作戦を継続すると予想される。
今世紀に入ってからの21年間に米国が支援した27件のクーデターとクーデター未遂のリストは不完全なものかもしれない。例えば、米国の傀儡であるエクアドルのレニン・モレノ前大統領が、現在収監されているホルヘ・グラス前副大統領や、現在亡命中のラファエル・コレア前大統領に対して行った法的戦争のでっちあげは、含まれていない。
このように米国のクーデターやクーデター未遂を列挙することも誤解を招きかねない。20世紀を通じて、米国は定期的ではなく日常的に植民地に介入し、新植民地主義体制を押し付け、無条件で米国に市場を開放し米国の外交政策に同調する体制を維持してきた。
「民主化促進」という建前で、アメリカは正反対の目的に向かい、民主的で民衆的な政府に対してクーデターを起こそうとするのだ。国民と国民の権利のために立ち上がる政府と指導者は、まさに「民主化促進」のクーデターの標的なのである。
現在、米国が依存するソフトクーデター作戦は、ターゲットとなる国のNGOや右翼団体に資金を提供し、ジーン・シャープ式の「民主化促進」プログラムを訓練することだけではない。米国のリベラル、リベラル左派のオルタナティブ・メディアやNGOの多くは、現在、企業の資金援助を受けており、その政治的方向性をより親帝国主義的な方向へと押し進めている。これは、エボ大統領のボリビアやラファエル・コレア大統領のエクアドルに対するソフトクーデターの試みによく表れている。これらのNGOやオルタナティブ・メディアは、帝国主義的な介入に偽りの人道性を与えているのだ。
さらに、こうした体制転覆作戦は、今や公然と国内で米国民に対して利用されている。これは、2016年のヒラリー・クリントンのトランプに対する「ロシアゲート」にかんする情報操作と、2020年にトランプがおこなった民主党に対する選挙不正にかんする情報操作によってつくられた、米国民の混乱と政治的分裂に見られるものである。米国の介入主義に反対するわれわれには、こうしたソフトクーデターの新しい巧妙な干渉方法を暴露し、他国の国家主権を尊重することを要求し、企業支配者によるこの操作に反対する米国民を結集することが求められているのである。
CML メーリングリストの案内