[CML 063588] アジア世界KK重要情報(31)

kenkawauchi @ nifty.com kenkawauchi @ nifty.com
2022年 2月 15日 (火) 14:16:31 JST


アジア世界KK重要情報(31) 

     2022年2月15日



 私は、河内謙策です。私は、アジアと世界の平和や人権等をめぐる諸問題につき、
私が重要と考える情報を皆様に発信させていただきます。私は体調がよくないので、
大体月に2回ぐらいのペースでの発信になるかと思います。この情報の転送、転載は
自由です。私の意見については、皆様が批判をされることは自由ですが、私は、体の
都合があるので、反批判はしませんので、御了解ください。

 弁護士 河内謙策 連絡先:東京都豊島区南大塚3丁目4番4-203号
(TEL03-6914-3844、FAX03-6914-3884)

Email:kenkawauchi @ nifty.com

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   『奇妙な敗北』のお勧め!!



マルク・ブロックという名前を聞かれたことがあるでしょうか。

 1886年生まれのフランスの歴史学者、20世紀後半に世界の歴史学に大きな影響を与
えたアナ―ル学派の創始者の一人で、日本でも『歴史のための弁明』や『封建社会』
等の邦訳があります。

 彼は、熱烈な共和主義者で、第1次世界大戦も第2次世界大戦も従軍しています。彼
は、1940年5月に始まった、ナチのフランス侵略に反対し、更にフランスの敗北後の
レジスタンス運動に参加、ゲシュタポに逮捕され、1944年6月16日に銃殺されます。

 彼は、自分の立場を次のように述べています。

「私はフランスに生まれ、フランスの文化の泉から多くを享受した。フランスの過去
を自分の過去とし、フランスの空の下でなければ安らげない。だから今度は私がフラ
ンスを守る番だと、最善を尽くしたのだ。」



 彼の平和に対する誠実な姿勢は世界の人々に大きな感銘を与えましたが、彼が第2
次大戦に参加したのち、レジスタンスに参加するまでの間に書いた『奇妙な敗北  
1940年の証言』は、反戦文学・歴史書の金字塔です(平野千果子訳で、岩波書店から
新訳が出ています)。

同書を読めば、非常に日本の現在の情勢と共通点も多く、考えさせられることが多い
ので、ぜひ読まれることをお勧めしたいのです。

  <https://ja.wikipedia.org/wiki/マルク・ブロック>
https://ja.wikipedia.org/wiki/マルク・ブロック



 マルク・ブロックのこの本は、ナチスのフランス侵略に直面した、フランスの人々
の意識と行動を、バルザックのように丁寧に分析するところに特徴があります。人民
戦線の後だから、さぞフランスの人々は激しく抵抗しただろうと思うと、実際は反
対、政治的にも、思想的にも、混乱が支配するのです。マルク・ブロックが「奇妙な
敗北」という所以です。

 

 2,3の例を見てみましょう。

 

 マルク・ブロックは、フランスの敗北についての最大の原因を「指揮の無能」に求
めます。

「参謀部が多くの罪をおかしたことは、否定しようがないだろう。

しかし、それは軽蔑からというよりは、想像力の貧困さと現実感覚の欠如によるもの
だったと私は思う」

「私たちの軍の敗北に共通しているのは、いずれにも怠慢がはびこっていることだっ
た。司令官や司令官の名のもとに行動している者たちは、この戦争についてじっくり
考えることができなかったのだ。言い換えるなら、ドイツ軍の勝利は、基本的には頭
脳による勝利であり、そこにこそもっとも重大な問題があるはずである」

「わが軍の司令官たちは、山積する矛盾の中で、1940年において、1915-1918年の戦
争をそのままなぞるつもりだったのだ。ドイツ軍のほうは、1940年の戦争をしていた
のにである。」



 ナチスの侵略に対して青年の決起を勝ち取れなかったのは「私たちの指導者、そし
ておそらく私たちの指導者階級というものには、危機にある祖国への断固とした英雄
的精神が、何か欠けていたのである」と述べています。



 マルク・ブロックは、労働組合の過失についても手厳しい。「今回の戦争における
労働組合運動の過失は、参謀部の過失以上に否定できないものだった」「国益軽視の
風潮が広範に広がっていたことは、その結果が戦争の成り行きに重くのしかかるに十
分だった」



 フランスにおける平和主義者の言動にも厳しい批判がなされています。「彼らは戦
争とは無意味な荒廃を蓄積していくものだと教えていたし、それは正しい。しかし、
意思をもって行おうとした決心した戦争、あるいは殺戮と正当防衛との区別をするの
を忘れていた。死刑執行人に首を差し出せと勧めるようなものではないかと、彼らに
詰め寄っても、「誰も君たちを攻撃などしない」と答えたものだ。なぜなら彼らは好
んで言葉遊びをしたし、おそらくは自らの思想を正面から見つめる習慣をなくしてい
たので、自分たち自身の曖昧さの網の中にとらえられたのだろう。」

「彼らがささやきあっているのを私も耳にしたことがあるが、ヒトラー主義者は結局
のところ、世の中で言われるほど悪意に満ちているのではないのだという。暴力に
よって侵略に反対するよりも、扉をみな大きく開けた方がおそらくは苦しみを避ける
ことができるのかもしれない[という]。」



 詳細については、ぜひ本書に直接アプロ―チしてください。

なお、二宮弘之著『マルク・ブロックを読む』(岩波書店)も御参照下さい。

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            以上





















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