[CML 061094] 在京6紙の10年目の3・11当日の社説・記事を比較して

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2021年 3月 13日 (土) 23:57:26 JST


紅林進です。

朝日、読売、毎日、東京、日経,産経の在京6紙の10年目の3・11当日の社説・記事を原発事故に焦点を当てて比較して、思ったことを述べます。

社説・記事でも、最も大きく取り上げたのは、毎日新聞と東京新聞で、毎日新聞は社説は「大震災10年 福島の再生 ともに歩む決意を新たに」と題して、内容には帰還に重点を置くなど若干問題もあるものの取り上げている。また紙面でも第1面で「長男一家を失った福島県浪江町佐藤俊一さん(72)」を取り上げ、第2面で「原発避難者傷深く」と取り上げるなど大きく扱っている。「あの日の私 未来の私」という被災者の方々のコラムも各紙面に載せている。

東京新聞は、社説で「影こそ伝えたい 3・11から10年」と題して、復興ばかりでなく、原発事故の影を伝え続けることの大切さを述べています。記事でも第2面に「3.11後 独は全廃へ 日本などは廃炉進むが… 世界の原発 微増443基 新設止まらぬ中ロ CO2削減も名目に」という記事、第24・25面の「こちら特報部」では、「福島第一 あの時の危機感薄れてないか」「『事故現場』備え進まず」という記事を載せている。

情けないのは朝日新聞で、「津波被災地の10年 『主役は住民』の理念新たに」という社説を掲げたものの、その中には「原発事故」も「福島」の文字も一切なし。「天声人語」も原発事故への言及なし。記事では、第15面の「オピニオン」ページで、民俗学者赤松憲雄さんの「東北『内なる植民地』 中央に貢ぐ仕組み 原発も五輪も同じ『東京は安全です』」という意見を載せ、別刷りの付録のしかも第4・5面という外からは見えずらいところに「東京電力福島第一原発事故から10年」という図表を載せたのみで、それ以外の記事中には、原発事故への言及はほとんどなし。
ところで朝日新聞は「社説」を紙面の奥深く「オピニオン」面(この日は第14面)の目立たぬところに引っ込めてから久しいが、これでは煽情的な言論戦(まともな言論とは言えないと思うが)を挑んでいる産経新聞などに対抗できないであろう。

一貫して原発推進を後押ししてきた読売新聞は、この日「惨禍の教訓を次代につなごう 復興の成果と課題を検証せよ」という社説を掲げ、その最後で「福島再生も地域主体で」と小見出しをつけて載せているが、原発推進を後押ししてきた反省は全くない。記事中では原発事故についてほとんど取り上げない。

日本経済新聞は、「3・11から10年 巨大地震からも命を守る減災の国へ」という社説を載せたが、その中では原発事故もその危険性も、原発事故からどう減災するのか(それには原発を廃めるしかないのだが)一言も言及がない。記事では第46面(社会面)に内堀雅雄福島県知事の「処理水の風評対策万全に 県企業の廃炉参加めざす」というインタビューを載せ、「原発の処理水の海洋放出をめぐる問題の本質は風評対策だ」という非常に問題のある発言を述べさせている。

最も問題なのはやはり産経新聞で、この日の社説では「東日本大震災10年 風化に抗い風評を断とう 復興を『日本再生』の原動力に」を掲げたが、そこでは原発事故には一言も触れず、「福島の復興を妨げている風評被害の根絶は、最も重要な課題の一つである。風評の根絶なくして日本の再生はない。」と言い、今も続く原発事故の被害と汚染を「風評」と言い、隠蔽し、なかったものとして風化させようとしている。第7面のオピニオン面の「正論」と称するコラムでも、門田隆将(作家・ジャーナリスト)の「震災、今も続く風評被害の苦悩」を載せているが、そこでもトリチウム水の放出の危険性を「風評」だと言い、一方で「米国による"トモダチ作戦"」を賛美する。第8面(国際面)でも、「日米の結束示したトモダチ作戦 インド太平洋連携へ発展」という記事を大きく載せ、第30面(社会面)では、国友昭(当時の陸自連隊長)の「命救う誇り」という記事をデカデカと載せている。また第5面(総合面)には、(産経新聞のみならず他の右翼雑誌にも左翼や市民団体を批判する悪意ある文を書きなぐっている、産経新聞論説委員兼政治部編集委員の)「阿比留瑠比の極限御免」では、「10年前 菅元首相の危機管理」と題して、当時の首相で現立憲民主党最高顧問の菅直人氏を揶揄している。
ところで産経新聞は、翌日3月12日(金)の社説で、「福島事故10年 廃炉前進に国は全力を挙げよ 脱炭素には原発が欠かせない」を載せ、こともあろうに福島原発事故10年に際して、脱炭素を名目に、原発推進を掲げるとは恥じ知らずにもほどがある。そして「『司法リスク』という言葉が生まれている。定年退職を控えた裁判長の法廷で原発が止められる傾向があることを最高裁は傍観してはなるまい。とまで書き、最高裁の違法・不当な介入まで唆している。



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