[CML 060743] 核兵器禁止条約を巡る発言とYoutube紹介

kodera @ tachibana-u.ac.jp kodera @ tachibana-u.ac.jp
2021年 1月 26日 (火) 10:18:50 JST


皆様 
小寺です。たびたび長文のメールを送ってご迷惑かもしれませんがお許しくださ
い。
「核兵器禁止条約」が発効した日、アメリカのペリー元国務長官が「なぜ米国は
核兵器禁止条約を支持すべきか」を原子力科学者会報に寄稿しました。“Why the 
United States should support the Treaty on the Prohibition of Nuclear 
Weapons” Bulletin of the Atomic Scientists
そこでぺリー氏はレーガン元大統領の言葉「核兵器は完全に非合理的で、完全に
非人道的で、殺す以外に何の役にも立たず、地球と文明の生命を破壊する可能性
がある」を紹介し、さらに次のように述べています。
「アメリカでは独立宣言で述べられた原則が当時の現実と矛盾していたが(特に
奴隷制と女性の権利の剥奪)、そう「あるべき」であるという旅を続けてきた。
「核兵器の廃絶も『あるべき』ものとして精力的に追求しなければならない。」
「条約だけでは核兵器の廃絶をもたらすには不十分だが、それは私たちをさらに
山に押し上げるために必要な重要な理想を確立する。」
「私たちは、非核の山の頂上に向かってこの新しい道を切り開く最初の核武装国
になりましょう。」

日本でも平和アピール7人委員会の声明を先日紹介しましたが、日弁連会長声明
も出ました。
https://twitter.com/JFBAsns/status/1352435492864679936
「本条約は、本条約によって禁止され、違法とされる全ての行為に対し、その当
事者に説明する責任を強く求めていく根拠ともなる。たとえ『投資』行為や威嚇
を目的とする『安全保障戦略』であろうとも、それを実行する当事者は、その説
明責任を果たさなければならないのであり、まさに核兵器禁止という新たな国際
法秩序が現出したのである。」
日弁連は、「日本国憲法第9条が第二次世界大戦の深い反省から生まれたのと同
様に、核兵器廃絶も『二度と過ちを繰り返さない』という人類が共通に有するべ
き反省から生まれていることを決して忘れない。 」
 菅首相は「日本は署名しない」と明言していますが、今国会でその「説明責任」
をはたさせるとともに、公明党も賛成している締約国会議へのオブザーバー参加
をする方向で議論を深めてほしいものです。

 欧米では議会が動き始めています。1月22日のNHKBS「国際報道2021」は、ベル
ギーで国民の77%が条約参加を支持する中で条約を評価する新政権が誕生したこ
とと、スペイン下院外交委員会で核兵器禁止条約を歓迎し政府に核軍縮の行動を
求める決議が採択されたことを丁寧に報じました。また核保有国や日本がオブザ
ーバーとして会議参加を歓迎するというオーストリアのクメント軍縮大使の発言
や、「バイデン政権は条約が核なき世界という共通の目標に貢献すると声明する
ことは可能だ」という米国の軍備管理協会事務局長の発言も紹介しています。そ
して今年は、START延長、8月のNPT再検討会議、そして核禁止条約締約国会議の3
つが新たな動きを生み出す可能性があるとしています。

またNHKの「時論公論」では石川解説委員が中南米33か国が参加しているトラテ
ロルコ条約(ラテンアメリカ及びカリブ核兵器禁止条約、発効1968年)に言及し
ています。「締約国に対し核兵器の使用または威嚇を行わない」という規定を含
む条約を全ての核兵器国が批准しており、核兵器禁止条約がいわば地域的に実現
していることにふれています。一方今回核兵器禁止条約を批准したベトナム、タ
イ、マレーシアなどが加わっているバンコク条約(東南アジア非核兵器地帯条約、
発効1997年)は核保有国は批准していません。その批准を進めること、そして日
本は核兵器禁止条約と理念を共有することを明確にし締約国会議にオブザーバー
参加すべきだと提起しています。

これ以外の報道番組が核兵器禁止条約の意義を伝える報道をほとんどしていない
ことに失望しましたが、私たちはマスメディアが報じなくてもインターネットTV
で重要な事実を知ることができます。1月21日配信の「核兵器禁止条約発効―日本
はなぜ条約に反対するのか」(60分)では朝日新聞で核問題に長く取り組んでこ
られた田井中記者が語っています。
https://www.youtube.com/watch?v=feFOToRUIv0&t=202s
 非常にわかりやすく、しかも深くこの条約の意義が説明されています。この中
で条約発効でおこる3つの変化を次の様に指摘しています。
① 核は悪、核は毒(放射能の影響、とりわけ隠されてきた内部被曝)との認識の
広がり。
② 被曝大国アメリカの目覚め
 ネバタの核実験により胎内被曝したトーマスさんが2014年、ウイーンで開催さ
れた核兵器の人道的影響に関する国際会議に参加して証言し満場の拍手を浴びた。
アメリカの核実験による被曝者は100万人、その被曝大国アメリカで被曝者が立
ち上がることは、奴隷制撤廃や現在のBLM運動のように、今後アメリカ社会が変
わる可能性を秘めている。
③ 核抜き日米同盟の模索と独自核武装の終わり
 
また田井中さんはこの条約制定過程を実際に見てこられた方だけに、様々な話を
語ってくださいました。2013年から14年にかけて開催された核兵器の人道的影響
に関する国際会議で核兵器を使う可能性が高い国としてパキスタンがあげられ、
もし印パ戦争で核が使われればどうなるか科学者が検討したそうです。そして偏
西風により東南アジアが放射能で汚染され大変な被害が生じることが予測され、
核兵器禁止条約をつくる方向に一気に動き出したのです。その中心になったのが
オーストリア政府のクメント氏です。彼は長崎で谷口稜曄(すみてる)さんに会
い、写真で見た焼けただれた背中の傷の少年が生きていたことに感動し、核を絶
対悪と感じ、禁止条約制定をリードしていったのです。
今後バイデン政権はオバマ政権がやり残した核先制不使用宣言を行なう可能性が
あります。その時に日本はまた反対するのでしょうか。核保有のポテンシャルを
持つという佐藤栄作政権以来の政策をやめ、核抜きの日米同盟を模索すべきだ、
橋渡しと言うのであれば核保有国とグローバルヒバクシャとの橋渡しをすべきだ
と田井中さんは主張します。
 この条約は核兵器に汚名を着せ、核抑止論を問い直すものであり、広島・長崎
の被爆直後から米軍が言い続けてきた内部被曝はなかったという嘘の終わりであ
り、核産業に投資しないという国際的な動きにより軍事産業が核で儲ける時代の
終わりである、そういう様々な意味で「核兵器の終わりの始まり」なのです。
 ぜひご覧ください。

また一昨日行われたChoose Life Project『決断すれば、今日から核はなくせる。
 
核兵器禁止条約発効で世界が変わる日』を下記で視ることができます。(84分)
https://www.youtube.com/watch?v=orwOsfOknsc
安田菜津紀さんが司会をされ、川崎哲さん、被爆者の木戸さんと和田さん、林田
さん、コムアイさんが核禁止条約の受け止めやこれからの取り組みについて語り
あいました。サーロー節子さん、中満さん、フィンさんのビデオメッセージも紹
介されています。
日本政府が無視しているこの条約発効の意義を様々に考え、広めていきましょう。
小寺隆幸








CML メーリングリストの案内