[CML 057954] 「プリズン・サークル」 坂上香 刑務所を撮る

大山千恵子 chieko.oyama @ gmail.com
2020年 2月 26日 (水) 07:49:41 JST


*クリエイティブ・コモンズ
<http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%82%A8%E3%82%A4%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%96%E3%83%BB%E3%82%B3%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%82%BA>にて、転載。*

*救援連絡センター
<http://www.toben.or.jp/message/libra/pdf/2007_6/p14_15.pdf>発行「救援」紙の、2面の連載コラムより*

*「プリズン・サークル」  **坂上香 刑務所を撮る*

取材許可まで六年、撮影二年。日本の刑務所を、初めて撮影したというのが特色のドキュメンタリー。官民協働の新しい刑務所「島根あさひ社会復帰促進センター」。名前からして監獄みたいじゃないね。

会話禁止の刑務所で、訓練生は語り始める。最初は言葉が出ない。しだいに言葉を回復していく過程。

*TC(セラピティック・コミュニテイ、回復共同体)*の実践。坂上香監督の「ライファーズ 終身刑を超えて」そして「トークバック
沈黙を破る女たち」を観てきたものとしては、とても気になる。

長尺のドキュメンタリーだが、途中で入るアニメーションと音楽が道案内をしてくれる。

*ブレイディみかこ*の、コメントは「人の苦しみがすべて他者との関わりから生まれるのなら、それを癒すのもまた他者との関わりでしかあり得ない」、そうなのだ。

そして、みかこは続けて指摘する。他者と関わる手段は「会話」であること、暴力へのカウンターは「言葉」であることに改めて思いを巡らせたと。うん。わたしも、そう思った。もし、それができるなら他の監獄でもありえるだろう。ヘイトが進む獄外でも。信じたい。

映画を見ていて、受刑者が*過去に受けた暴力の連鎖に圧倒される。*事件の加害者というより、人生の被害者じゃないかとすら思える。

親から抱きしめられたことがない青年。どうやら、これに反応するひとが多いようだ。進歩的文化人ね。でもでも、封建的な栃木ど田舎で育った私も抱きしめられた記憶がない。親も教師も体罰あったりまえの世界で、抱擁文化は皆無。テレビの中で外国人のすることだと思ってた。女性差別おびただしい地域で女々しいことは、価値が低い。なんせ毎朝毎晩、おどろおどろしい「君が代」が大音量で流れるなか「日の丸」に直立不動させられる小学校だもの。私がハグを初めて体験したのは、田舎から逃亡して大学を卒業した後だった。

今も躾と思って虐待する親はいるだろうし、万引きを始める七歳児は増えていくだろうし、行政も冷たくなるばかり、保護された施設も地獄。あああ、日本。恐ろしい国。

映画の最後に、*日本全国の受刑者四万人のうち、このプログラムが受けられるのは四十人*
との報告。ナイアガラ瀑布のまえで玩具の柄杓で水をすくってるような、圧倒的な数の差。くらくらするぞ。

*でも、一歩は始まったんだ。*拍手。よく見ておこう、新たな試み。




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大山千恵子
ブログ 「千恵子@詠む...」 毎日更新http://blog.goo.ne.jp/chieko_oyama


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