[CML 057933] 本の案内。
服部 一郎
kamitotomoni @ yahoo.co.jp
2020年 2月 23日 (日) 23:22:23 JST
服部です。 皆さんお久しぶりです。最近世間の話題はコロナウイルスの蔓延一色となりつつあります。すでに春闘など運動関係の行事にも影響が出ており、今後どうなるのか不安な面もありますが、それはさておき今回は昨年末に刊行された本を紹介したいと思います。 『全臨時労働者組合結成五〇周年記念誌 「全臨労」 走り続けた五〇年』です。この本は1969年に結成された全臨時労働者組合(以下全臨労)の結成50年を記念し、その運動の軌跡や特徴をかつて参加した活動家たちの寄稿やインタビューなどでまとめたものとなっています。この組合は名称からわかるとおり、全産業、あらゆる雇用形態の非正規労働者をすべて組織化し、巨大な力を持つ労働組合を作り出そうという極めて野心的な意図のもとに結成されました。ただ実際のところ、組織のほとんどすべては新聞関係の臨時労働者によって占められていました。新聞関係といっても新聞社の記者などを対象としていたのではなく、新聞が発行されたのちの発送、輸送、そして販売店での配達を担う臨時労働者、つまり今でいう非正規労働者を主たる組織化の対象となっていましたが、とくに配達関係の非正規労働者が組合の主たる部分を占めており、彼らは同時に学生でもありました。彼らはただ勤労学生だったわけではなく、新聞奨学生として学費を負担してもらう代わりに住み込みで朝から晩まで新聞の配達、勧誘、そして集金まで休む間もなく働かされ続けるというような過酷な境遇に置かれていました。学費の負担という金銭的な拘束によって、まともに学校へ行くことすらままならないような過酷な労働を強いられていれば当然不満は募っていきます。また当時大学では学生運動が高揚していました。そのような状況下にあっては全臨労のような運動が生まれてくるのは必然だったとも言えるでしょう。この学生運動の高まりが全臨労を生み出したという点はこの運動が既存の運動とはまた異なるラディカルでユニークなものとなった一因でもあっただろうと考えられます。もっともその取り組みが成功したかどうかはまた別問題ですが、ともかく非正規労働者の組織化という課題が今の時点でも日本の労働運動にとって決定的課題であるといわれているような状況にあっては、全臨労という運動の存在は非常に先進的であったことは、明白でしょう。今一度、この運動の軌跡や特徴、そして何を目指したのか、という点は再考されるべき価値があると思われます。詳しくは本書をご一読ください。 最後に一点、この全臨労は1986年には事実上消滅していますが、1973年に非主流派(反執行部派)の活動家が分裂し
もう一つ全臨労が存在した時期がありました。こちらはその後名称を全労(全労働者組合)と変更して現在も活動を続けています。両者を混同して理解しないようご注意ください。 なおこの本は一般では流通しておりませんが、模索舎では取り扱われています(定価2500円+税)。
また直接購入を希望される方は事務局(メールアドレス:y3181955-k @ r8.dion.ne.jp)へご連絡をお願いします。
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