[CML 057295] 違憲訴訟問題 星野安三郎さん(故人)にお聞きする

motoei @ jcom.home.ne.jp motoei @ jcom.home.ne.jp
2019年 11月 26日 (火) 10:20:54 JST


(情報記載いしがき)

違憲訴訟問題(参考資料)

憲法学者星野安三郎さん(現在故人)に聞く

(一)「控訴するにあたって(案)」について星野さんの感想。

控訴理由書をどう構成するか、弁護士さんとよく協議して作るとよい。裁判所が一回
だけで結審にせず、何回か事実真理をしなければ…と思わせるには、裁判官が読む控
訴理由書にすること。読まれなければこちらの意思は伝わらない。「そんな事はけし
からん」、とこちらが思っていることでも、裁判官はプロとしてそれなりに自信を
持っている。書き方には気をつけるといい。

例えば、三回しか審理しなかった」とストレートに非難するよりも、「これまでの訴
訟では十数回口頭弁論を開いて事実真理をしたから、このとおり書証も人証も十分準
備し、期待して控訴審にのぞんでいる」と持ち上げながら、反省も促す書き方でない
と読まない。私達と同じ次元でない考えの人間を、どのようにして同じ次元に戻す
か、工夫が必要だ。

但し、指摘すべき事は細かく指摘すること。



(ニ)「日本国憲法の生成過程と憲法の役割・意義」

「原告適格」「精神的苦痛と具体性」「統治行為論への反論」その他、控訴審を控え
て私達からたくさんの質問が出されたが、星野さんは、日本国憲法・第九条があるた
めに、どれだけ大きな役割を果してきたかを歴史的形成過程を踏まえ、条文に則し
て、九条や各人権条項の意義をつかんで欲しいという趣旨で話を進められた。第九条
から新旧憲法の比較、人権についてはアメリカの独立宣言やフランスの人権宣言にも
言及するなど、話は多岐にわたったが、その中の三つを紹介する。



①「自衛隊は絶対憲法違反である」と言うだけでは人を説得できない。法律の条文に
則し、歴史的背景も踏まえて説明できなければだめ。第九条一項は、「日本国民は」
で始まる。なぜ「日本国は」ではないのか。君主や大統領の名ではなく、始めて「人
民の名において」と宣言した不戦条約に由来する。ただし天皇主権の日本は、この部
分を削除して批准した。主権在民になって「日本国民は…」と宣言した輝かしい意義
を忘れてはいけない。かつては条約の締結も、戦争か平和かも、天皇の大御心(おお
みこころ)で決められ、国民は「臣民」としてそれに協力させられるだけだった。
「国権の発動たる戦争と武力による威嚇、または武力行使…」となぜ三つ並べたの
か。不戦条約、国際連盟規約、国連憲章規約など、二度にわたる世界大戦の反省の上
に立ってできた諸条約の延長線上にあるのが第九条である。



②日本国憲法は、残念ながら民定憲法ではない。大日本帝国憲法の改正憲法。帝国議
会と天皇の協約憲法である。両憲法に書かれていることを正確に知ると、それぞれ何
を大事にしたかがわかるし、何が書かれていないかを見ると、何を大事にしなかった
か、何を無視したか、元々眼中になかったか、そんなことを書くと人民がつけあがる
と考えて書かなかったのか、等々のことがわかってくる。旧憲法には「平和」がな
い。天皇は宣戦し、いつまでも戦争を続けられないから和を講じ、条約を締結する。
つまり戦争をするのが天皇の仕事。生命を育む事は一言もない。皇位は男系で継承さ
れ、女性、子ども、労働者、老人、病人や平和等々も書いていない殺風景な憲法だと
いったことがわかる。旧憲法は国体の尊厳、平和憲法は個人の尊厳、個人の尊厳と人
間の尊厳の違いも話された。



③星野さんの話は面白く、ところどころで脱線する。その脱線した話の中に、はっと
することが折りこまれている―以下はその一つ。

敗戦を告げる詔勅、いわゆる「玉音放送」の中に、「朕(チン)ハ帝国ト共ニ終始東
亜ノ解放ニ協力セル盟邦ニ対シ、遺憾ノ意ヲ表セザルヲ得ズ」といい、最後のほうで
は「確(カタ)ク神州ノ不滅ヲ信ジ…」と言っている。つまりあの戦争は、アジアの
解放戦争であって侵略戦争とは考えていない。満州国や汪政権など傀儡政権を盟邦諸
国と言う。「国体」が護持され、神州の不滅を信じよと言う。昭和天皇がこういう言
葉を残していることが、どれだけ大きな問題であるか。だがマスコミはこれを自覚し
て報道していない。森前首相の「神の国」発言にも繋がる。



以 上 (2002年8月星野さんのお話一部報・告テロ特措法・鴻巣合宿・まとめ原告
世話人・東 幸一郎)

(安倍首相が過去の戦争は侵略戦争ではない、と述べていることも理解できました。
2019.11.26再掲・石垣敏夫)





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