[CML 056439] 公文書に見る徴用工の生活

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2019年 8月 2日 (金) 22:15:51 JST


半月城です。
 徴用工問題をきっかけに日韓関係が悪化の一途をたどっていますが、徴用工
が炭坑などでどのような生活を送ったのか、その一端が外務省の報告書に述べ
られているので紹介します。
 報告書自体の目的は内地人(日本人)と在日朝鮮人との融和をいかに図るか、
また炭坑徴用工の移動(逃亡)をいかに少なくするかについての「対策」を述
べたものです。この資料を抜粋し、現代仮名づかいに置きかえた文を紹介しま
す。
 この資料はごく表面的なことを記したものに過ぎないので、付録として徴用
に関する小生の書き込み、および麻生太郎副総理の先代が経営した麻生炭鉱に
ついての解説文のURLを記しておきます。ぜひ、あわせてお読みください。

権藤嘉郎「報告書」
  1944年(昭和19)10月
 このたび、ほぼ二十数日間にわたり大坂、山口、福岡訪問を瞥見する機会を
得たが、その大部分を炭坑方面で過ごし、一般民間方面を見たのは僅かである。
その間の自分の見聞したものを基礎にして、多少抽象に過ぎる嫌いはあるが、
内地における半島人問題の所在及びそれに対する愚見の一端を述べることにす
る(途中省略)。

一.大坂における内鮮人間の融和状況とその対策に関する管見
  (省略)

二.炭坑労務者の移動性に対する対策
第一.移動状況とその原因
 各炭坑における出動労務者、特にその中の単身労務者の移動状況は相当数に
上り、多いところでは一年間に七割、少ないところで二割、平均してほぼ半数
程は逃亡している現状であって、炭坑側としてはその防止策に腐心している様
子であるが、別に見るべき効果がないようである。かような現状であるので、
能率の増進を図るというまではほとんど考えてもいなく、せいぜい稼働率の向
上(構内に繰り込ませること)という目に見える部面について労務係が躍起に
なっている程度であった。
 移動原因については種々な方面から調べて得た結論は、応募当初より逃走す
べく計画していた、いわゆる計画逃走者を除く大部分の者は次の諸点がその主
なる原因のようである。
 (1)炭坑労務の忌避
 (2)生活環境に対して嫌悪を感じていること
 (3)物心両面に対する不満
 (4)食物の不足
 (5)悪ブローカーおよび不良なる同僚の誘惑

(1)炭坑労務の忌避
 私も数日間坑夫と共に構内作業をいささか体験して見たが、深い所では何千
尺という地下でしかも身体の屈伸さえ不自由な低い坑内において頭灯を唯一の
目標に異様なガスの混った空気と炭塵にまみれながら敢闘する彼らの労働は、
それが削岩機を握ったり坑木を立てたりする先山級であろうと、ツルハシとシ
ャベルを取ったりトロッコを押す一般坑夫であろうとを問わず、地上における
いかなる労働よりも苛烈なるものであることを知った。しかも地上作業の如く
晴雨なければ、外部的変化もない誠に十年一日の如く単調なものである。それ
にも増して嫌がるのは落盤その他の事故発生に対する恐怖である。かかる要
(悪)条件だらけのものに対して今まで農業以外に従事したることがない彼ら
が嫌って、同じことなら他の地上作業に移りたいと思うことはむしろ当然であ
る。
しかし、この点は炭坑労務の本質的弱点であるから、危険防止・事故発生後の
適切なる措置に万全を期して彼らにある程度の安心を与えると共に、他の地上
作業に比して如じない待遇(同じことなら逃げたくなるから)をしてやらなけ
ればならない。しかるに不幸にしてその点をそう発見することができなかった
し、かえって事故発生後の措置が悪かったため、労働者が動揺したという事実
と、現に不安がっている事実や金も他に比して余計残らないこと(この点は後
に述べる)や、また、種々の点において工場労務者より恵まれていない事実を
聞かされたり見せつけられたりしたことを残念に思う。
 以上の特別優優(遇)の道がそうないとすれば、残された道は彼らに採炭と
いう自分らの勤労に対する重要性をより強く認識せしむることであるが、その
点もまた不満足であった。
 
(2)生活環境に対して嫌悪を感じていること。
 彼らの多くは野良育ちの自然児である。それが故郷を離れ、人情風俗が違う
不慣れの土地で集団的な生活をすること自体が決して愉快なことではない。そ
れに言語不通なる監督者の監督下において、朝から晩までしかつめらしい軍隊
的訓練に服し、起居寝食一切の行動が外部的強制によってなされることは嫌悪
を通り越して耐えられない苦痛のようである。「訓練が嫌だ」、疲れ切って坑
外に出て帰るときでさえ「あの嫌な所にまた行くのか」と感ずるのが大部分の
気持ちだといわれては、彼らは寮生活を一種の服役生活くらいに思っているの
ではないだろうか。それでも従来は二年という満期の楽しみが待っていたので
あるが、現在では定着の□□で何時になるか知らぬ全く絶望的な状態に置かれ
ている。この点こそ労務管理の中で最重要なことであって、何とかして現場を
彼らの住み心地の良い安住の地たらしめたいと念願することは、現場を見たも
のなら何人も痛感するところであろうと信ずる。ただ、幸いに坑内においては
混合作業をしているが、半島人が多い関係からか内鮮人間の衝突はごく希であ
るらしい。

(3)物心両面に対する不平不満
 まず、精神的方面をみるに、その原因は労務管理の不充分のためのものもあ
るが、労務係担当者の一生懸命になっている気持ちが言語不通のため反映され
ず、かえって悪く解されている点が彼らの自卑的ひがみからくる場合が多いよ
うに思われた。たとえば、飯が足らなくても内地人はそうでないだろうと邪推
し、ちょっとした言葉にも我々は人間扱いにしないのだと思い、極端なのは労
務係がかわいがっても、あれは嘘だと聞く場合が多いという。私の見聞した
点でも4丈(畳)半に6人ないし8人も入れていた所もあったし、ちょっとし
たことに手を出す労務係があったから、双方が反省して、これを正す必要があ
ると思った。
 次は賃金に対する不平も多く聞いたが、それは次に述べる食物不足の点とか
らんで「腹が減って働けないから間食をするのだが、買い食いをすると一銭も
残りません」とはしばしば聞かされたことであり、「我々に対する税金が高い
ですよ」といっていた。賃金は他方面の工員より一般的に多いそうであるが、
送金額は一般に僅少であったし、朝鮮のドブ酒(濁酒)一升が7〜8円、餅1
個が1円の闇値であることを聞かされては右の訴えもマンザラ嘘でないようで
ある。
(注、当時の米価は10kgで3円17銭である)。
http://www2.ginzado.ne.jp/jyun/kosihikari/beika.htm

(4)食物の不足
 「腹が減っては働けません」とは至る所で聞いた。しかし、彼らは重労働の
丙の配給に特配その他、増産配給で5合以上(所によっては人員のやりくりで
これ以上)は食べている現状で無理はいえんと思うが、彼らは一般に大食いで
あり(自由労務時代に半島労務者は平均1升飯を食っていたとのこと)、配給
に対する認識が足らんの上に自分等の配給米を横流しして皆食べさせないので
はないかと疑う点もあった。非常に不満の声が大きかった。この点は現実の問
題であり、労働と直接の関係にあるので、真剣に検討して対策を樹てなければ
増炭に大きな影響をきたしやしないかを恐れるのである。

(5)外部の誘惑
 前記(1)ないし(4)の原因で嫌いになっているところへ賃金の高く(炭
坑より少なくとも二、三倍)、飯は自由に食べられる(ヤミまたは幽霊人口の
配給により)、訓練規律もなく、しかも半島人のみでする地上作業があると誘
惑されては、飛びつくのは彼らのごとく勤労の国家性および増炭の緊急性をあ
まり認識していない者にとってはむしろ当然である。それに軍の緊急なる工事
(例、設営)に逃げ込めば炭坑側も手がつけられないから安心して行けるわけ
である。かかる工事の下請けのブローカーや、その手先になっている悪同僚の
誘惑が大部分であるそうである。この点は軍方面も充分な理解をもって他の方
法、たとえば炭坑に労力供出を命ずる等の方法を講ずべきであると思う。これ
らの方法によって炭坑側の不要なる労力消費と労務者、いな半島人全体の不名
誉な事実を少しでも少なくしたいものである。その他のブローカーは、警察の
一層の努力を待つ他はない。

第二.労務管理改善策に関する若干の考察
(以下省略)

出典
 外務省外交史料館戦前期外務省記録、A門政治、外交5類、帝国内政0項0目
 資料:本邦内政関係雑纂/植民地関係(内務省関係)第二巻
 (8)復命書及意見集/2 復命書及意見集の2(16頁から)
 アジア歴史資料センター、レファレンスコード検索記号:B02031285600
 https://www.jacar.archives.go.jp/aj/meta/default
付録1
 「官あっせん」および「徴用」
 http://www.han.org/a/half-moon/hm023.html#No.190
付録2
 「麻生炭鉱での朝鮮人強制労働」
 http://www.pacohama.sakura.ne.jp/kyosei/2asou.html
以上



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