[CML 054095] 「家庭裁判所物語」 清永聡 日本評論社
大山千恵子
chieko.oyama at gmail.com
2018年 10月 29日 (月) 08:33:11 JST
「家庭裁判所物語」 <https://www.web-nippyo.jp/9293/> 清永聡
<https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B8%85%E6%B0%B8%E8%81%A1> 日本評論社
<https://www.nippyo.co.jp/shop/book/7853.html>
戦争によって孤児となった子どもたち、戦後は「政治による人災」ともいえる扱いに激しい憤りを感じた。
1948年に*「浮浪児根絶緊急対策要綱」*が閣議決定。
>*浮浪児を根絶できない大なる理由が、人々が浮浪児に対して安価な同情により又は自己の一時的便宜によって、彼らの浮浪生活を可能ならしめている*
ことにあることを、一般社会人に深く認識せしめ「浮浪児に物をやるな」「浮浪児から物を買うな」の運動を強く展開して*浮浪児生活存続の温床を絶つ*こと。
なんだい、これ。ひどい政府、内閣。
そういうなかで高く理想を掲げて、理想の家庭裁判所を創ろうとしたひとたち。児童施設で百人の嬰児が餓死する時代。知恵を絞る姿に感動する。
また*人間扱いされてなかった女たち、憲法、民法への対応にも眼を見開かせられる。*
戦争裁判の記録と政府の公文書を閲覧したNHK記者による、丹念な記録。
裁判官を描いた5年前の「法服の王国」
<https://blog.goo.ne.jp/chieko_oyama/e/e03468678a75366072ffc1c1ddd6c61a>
で暗澹たる歴史を知ったが、本書は希望を見出す良書。
*少年法の改悪のくだりには、怒りを持ちながら読む。*
------------- 目次 -----------------
*第1章 荒廃からの出発*
1 「家裁の父」帰国する
2 みじめな最高裁
3 家庭裁判所の前身
4 「愉快そうなオジさん」
5 BBSの生みの親
6 アイデアマン
7 殿様判事ニューヨークを観る
8 新少年法と「ファミリー・コート」
9 女性法律家第一号
10 「少年」と「家事」の対立
11 進まない設立準備
12 元旦の家庭裁判所発足
*第2章 家庭裁判所の船出*
1 屋根裏の最高裁家庭局
2 家裁の五性格
3 家裁職員第一期生
4 「高級官吏」調査官を求む
5 二つの雑誌
6 村岡花子と対談
7 戦争被害者のために
8 戦災孤児を救う
9 民間の施設に託す
10 孤児の養子縁組
11 ヒロポン中毒
12 少年審判の心得
*第3章 理想の裁判所を求めて*
1 日本婦人法律家協会
2 建物の苦労
3 履行確保
4 滝に打たれる
5 日本一の所長さん
6 司法の戦争責任
7 理想の学校
*第4章 少年法改正議論*
1 多忙な第三課長
2 少年事件の「凶悪化」
3 示された試案
4 「原爆裁判」
5 「少年友の会」発足
6 真っ向からの反論
7 長官を怒らせる
8 「首を絞められてじっとはしない」
9 ゴールト判決
10 もう一つの東大裁判
11 宇田川の遺言
*第5章 闘う家裁*
1 再結集した人々
2 波乱の幕開け
3 長官の激励
4 烈しい応酬
5 支援する人々の輪
6 「誤算と誤解」
7 水面下の妥協案
8 日弁連の猛反発
9 管理と統制へ
10 「整備・点検の時代」
*第6章 震災と家裁*
1 烈しい揺れ
2 家庭裁判所は弱者のために
3 被災者に寄り添う
4 少年事件への影響
5 震災孤児を救う
6 家庭裁判所は死なず
--
大山千恵子
ブログ 「千恵子@詠む...」 毎日更新http://blog.goo.ne.jp/chieko_oyama
CML メーリングリストの案内