[CML 054512] 新刊紹介『日本人と〈戦後〉』

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2018年 12月 13日 (木) 13:06:32 JST


◎『日本人と〈戦後〉――書評論集・戦後思想をとらえ直す』
 木村倫幸/著
 (新泉社、2018年12月)

四六判並製・352ページ・定価2400円+税
ISBN978-4-7877-1820-4
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784787718204
https://www.amazon.co.jp/dp/4787718207/

〈戦後〉とは、〈日本〉とは何か――。

過酷な戦争体験を経て現れた〈戦後〉とは何だったのか。
鶴見俊輔、上山春平、司馬遼太郎、石堂清倫らの思索を手がかりに、
近代日本の歩みと戦後史、戦後思想を見つめ直す。

「戦後レジームの解体」の只中で、
日本社会と〈戦後〉を複眼的に問い返す気鋭の書評・思想論集。

・第一章 〈戦後〉とは何かを考える
・第二章 日本とは何かを考える
・第三章 思想とは何かを考える

詳細目次:
https://www.amazon.co.jp/dp/toc/4787718207/

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https://www.value-press.com/pressrelease/212671
過酷な戦争体験を経て現れた〈戦後〉という時代の中を、私たちは〈戦後〉的 
価値観のもとで生きてきました。しかし、その〈戦後〉はいまや解体され、崩 
壊の危機に瀕しています。
その只中に刊行する本書は、そもそも〈戦後〉とは、〈日本〉とは、〈日本 
人〉とは何だろうか、というテーマの探究を主眼に据えた42本の書評と8本の 
論考で構成されています。歴史認識をめぐる史観の対立が先鋭化し、日本社会 
全体の戦争の捉え方に大きな変化が生じた時間軸の中で、さまざまな書物の批 
評を通して、近代日本の歩みと戦後史、戦後思想を丁寧に読み解き、問い直し 
ていきます。
本書が、私たちの生きる社会のありようを冷静にとらえ返し、平和の尊さを見 
つめ直す書物として、広く長く読みつがれることを願っています。

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本書は、著者が過去20年にわたり執筆してきた42本の書評と8本の論考で構成 
されている。

この20年というのは、「自由主義史観」が跋扈し、「戦争論」「戦後論」につ 
いての論争が盛んになり、戦争責任等の歴史認識をめぐる史観の対立が先鋭化 
して、日本社会全体の戦争の捉え方に大きな変化が生じた時期と重なる。

また、これと軌を一にして、周辺事態法など日米新ガイドライン関連法の成立 
(1999年)、国旗国歌法施行(同)、有事法制の成立(2003年)、自衛隊のイ 
ラク派遣(同)、防衛庁の省への格上げ(2007年)、集団的自衛権行使容認の 
閣議決定(2014年)、安保法制の成立(2015年)、さらには憲法改定を目指す 
動きに象徴されるように、いわゆる「戦後レジームの解体」に向けた政府の施 
策が推し進められた期間でもある。

そのような時間軸の中で、本章の各論では、先の戦争をめぐるさまざまな言説 
を見つめ直し、苛酷な戦争体験ののちに現れた「戦後社会」とは何であったの 
かを改めて問うている。

この本の著者は、長年にわたり鶴見俊輔の言説を探究してきた人だが(既刊に 
『鶴見俊輔ノススメ』新泉社、2005年)[ 
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784787705037  ]、本書において 
は、上山春平の『大東亜戦争の遺産』から櫻井よしこまで、そして戦争文学か 
ら現代の古市憲寿の言説までと、その射程はひろい。

巻末には鶴見俊輔の追悼文が収載されているが、そのなかで、いま瀕死の重体 
にある「戦後民主主義」について、鶴見がすでに50年前に残していた言葉が引 
用されているので、紹介しておきたい。

「私は戦後を、ニセの民主主義の時代だと思うが、しかし、だからといって、 
それを全体として捨てるべきだとは思わない。ニセものは死ねと、ほんものと 
しての立場から批判する思想を、私は、政治思想としては、信じることができ 
ない。それは精神の怠惰の一種、辛抱の不足の一種だと思う。しかし、自分を 
ほんものと規定しないかぎり、ニセものをニセものとして見て批判する運動に 
は共感をもつ。自分を幻想なきものと規定しないかぎり、民主主義をふくめて 
戦後のさまざまの幻想を批判する運動に共感をもつ。戦争中の軍国主義と超国 
家主義のにない手がそのまま戦後の平和主義と民主主義のにない手であるよう 
な日本の現代が、ニセものでないはずはない。」(「二十四年目の『八月十五 
日』」1968年、『鶴見俊輔集9』所収)

「戦後日本の民主主義に失望することはない。この民主主義が、実は軍国主義 
によってになわれてきたこと、今も部分的にその状態が続いていることを直視 
して、これと正面から対立することを自分に課して生きてゆけばいい。(略) 
戦後日本の民主主義のニセもの性を照し出す実にさまざまの光源から、私たち 
は光をかりてくる必要がある。在日朝鮮人の問題、沖縄の問題、占領軍からも 
政府からも見捨てられてきた原爆被災者の問題、十五年戦争の事実をかくそう 
とする教科書検定制度の問題。それらの問題からとって来た光によって、私た 
ちは日本政府のとなえる民主主義のニセもの性をはっきりさせるとともに、私 
たちの戦後民主主義のニセもの性をあわせて照し出し、そのニセもの性ととも 
に生きる決意を新たにしたい。」(同)

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◎関連本
 『〈戦後〉の誕生――戦後日本と「朝鮮」の境界』
 権赫泰・車承棋/編
 中野敏男/解説
 中野宣子/訳
 (新泉社、2017年)

四六判上製・336ページ・定価2500円+税
ISBN978-4-7877-1611-8
https://www.amazon.co.jp/dp/4787716115

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