[CML 053391] IK改憲重要情報(269)

河内 謙策 kenkawauchi at nifty.com
2018年 8月 13日 (月) 19:27:32 JST


IK改憲重要情報(269)[2018年8月13日]

私たちは、内外の改憲をめぐる動きと9条改憲反対運動についての情報を発信しま
す。

(この情報を重複して受け取られた方は失礼をお許しください。転載・転送は自由で
す)

弁護士 市川守弘、弁護士 河内謙策

連絡先:〒170-0005東京都豊島区南大塚3-4-4-203 河内謙策法律事務所
電話03-6914-3844,FAX03-6914-3884

河内が参加している「南シナ海問題署名運動」のサイトは以下のとおりです。

http://www.southcs.org/
__________________
(以下の見解は、河内の見解です。市川の見解は必らずしも河内と同一ではありませ
ん。御了解ください。)

   移民・外国人労働者について

 私は、「IK改憲重要情報(265)」で、政府は外国人労働者・移民の急拡大を決
意しており、秋の国会に出入国管理法の改正案が提出されるのは必至であるとお知ら
せしました。

 このメールでは、政府の外国人労働者・移民の急拡大問題を理解するためのいくつ
かの問題を取り上げてみます。

 まず、外国人労働者・移民の定義の問題です。
 移民とは何でしょうか。普通は、当初から永住・日本国籍取得を前提に新たに来日
する外国人をさす場合に「移民」という言葉が用いられます。
 では、そのような定義での政府統計は存在するのでしょうか。法務省の「在留外国
人統計」は、そのような定義にもとづく移民の数は集約していません。
http://www.moj.go.jp/housei/toukei/toukei_ichiran_touroku.html

 実は、国際移住機関(IOM)は移民を「通常の居住地以外の国に移動し、少なく
とも12か月間その国に居住する人」と捉えています。外国人の移動の目的を問わない
のです。これにより、
移民問題の範囲が簡潔明瞭になります。
http://www.iomjapan.org/information/migrant_definition.html

このように「移民」を捉えた場合にどうなるでしょうか。
 「西日本新聞」5月30日付は、次のような記事を書いています。
「経済協力開発機構(OECD)加盟35ヵ国の最新(2015年)の外国人移住者統計
で、日本への流入者は前年比約5万5000人増の約39万人となり、前年の5位から韓国
をぬいて4位に上昇した。(中略)日本が事実上の『移民大国』であることが浮き彫
りになった」
 移民の定義をめぐる議論の実践的帰結がこれです。「日本は閉鎖的だ」とか「日本
は外国に比べて移民が少ないからもっと受け入れなければ」という議論の誤りが明ら
かになるのです。(この項は、有本香「食いものにされる日本」『正論』9月号120頁
参照)

 日本にいる外国人労働者の状態

 私は刑事弁護の関係で、群馬県のある外国人の居宅を訪問したことがあります。北
関東には、外国人労働者を雇用する企業が点在しています(昔の群馬のイメージでは
測れません)。私の依頼者が住んでいた家に行くと、6人か7人の外国人が狭いアパー
トの1室に雑居しているので、びっくりしました。
 外国人労働者と言っても様々です。行きつけのスナックの「お姉さん」をイメージ
してはいけません。
 日本弁護士連合会は、2013年6月20日に「外国人技能実習制度の早急な廃止を求め
る意見書」を発表しています。
https://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2013/130620_4.h
tml

 また、2011年4月15日付で「外国人技能実習制度の廃止に向けての提言」を取りまと
めていますが、その提言の中で具体的な外国人労働者状態を調査した結果を発表して
います。
https://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2011/110415_4.h
tml

 外国人労働者と地域との関係は、難しい問題を提起しています。地方の自治体が、
積極的に外国人誘致に乗り出す例が多いのです。たとえば、農業の外国人依存率をみ
ると茨城県では3人に一人、香川県では5人に一人、長野県では6人に一人となって
います。漁業の外国人依存率は、広島県では二人に一人、高知県では3人に一人と
なっています。
https://www.ootapaper.com/entry/2018/03/25/210853

 『週刊東洋経済 eビジネス新書No.78』は外国人労働者についての豊富な事例を紹
介しています。ぜひ読んで見てください。


    私の反対論

 今回の急拡大に私は反対です。
 私の最大の反対理由は、外国人労働者・移民のこれ以上の受け入れは、日本社会の
安定を破壊する危険があるからです。
 日本の社会は、おそらく古墳時代以降、あまり移民を受け入れないでやってきまし
た。つまり、移民を受け入れなかった1000年余の歴史の上に、現在の日本の社会があ
るのです。そして、その日本の社会は、先人の苦労により、諸外国にくらべて相対的
に安定した社会となってきたのです。よく言われる、日本で忘れ物をしてももどって
くる、とか、日本人は人間は善人だと思っている、とか、日本では安心して暮らすこ
とができる、ということがそれを表します。私は、日本社会には多くの欠点があるこ
とは知っています。特に日本の政治、国際政治=外交は、ひどいものです。しかし、
日本社会は諸外国に比べると、相対的にはいい面が多いのです。
 移民が入ってくることにより、それが崩れる危険が大きいのです。それに反対する
ことは、けっして日本人のエゴというべきではありません。人間の当然の感情です。
 外国人と共生しなければならない、ということを強調する人がいます。現在、日本
にいる外国人と共生することは当然ですが、それと外国人の大量流入は話が別です。
 外国のEUの官僚が「なぜ日本人は私たちが失敗したことを見ていながら、また、
同じことをするのか」というのは当然です。「EUは失敗したかも分からないが、日
本でやればうまくいく」というのは傲慢以外の何物でもないと思います。
 今回外国人労働者・移民の急拡大を支持する人びとは、それがEUと同じように失
敗したときには、御先祖さまになんとお詫びするのでしょうか。現在に生きる人が何
でも自由に決めれると考えるのは、これまた傲慢と言わずしてなんと言うのでしょう
か。日本国憲法は、過去から未来にかけての日本の連続性を前提にしていると思いま
す。
 
            以上
 




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