[CML 048008] Re: マクロンは本当に2017年フランス大統領選挙で有権者の支持を得ていたのか?

まっぺん mappen at red-mole.net
2017年 5月 12日 (金) 12:40:28 JST


まっぺんです。CMLの皆さんにはいつも貴重な情報やご教示をいただき感謝しており
ます。
太田さんの論について「反論」というほどの確信をもっているわけではないので「疑
問」として提出いたします。

フランス大統領選挙における太田さんのご意見には考えさせられるものがあります。
「上位2名」という方式がそもそも公平かどうか、というものですね。
その結論についてはともかく、ご提示のシミュレーションについての疑問です。
太田さんは以下のような場合を仮定していらっしゃいます。

>
マクロン   24
ルペン    23
フィヨン   22
メランション 21

仮定2:フィヨン支持者の選好順位はフィヨン>マクロン>メランション>ルペンと
する。
仮定3:マクロン支持者の選好順位はマクロン>フィヨン>メランション>ルペンと
する。
仮定4:メランション支持者の選好順位はメランション>フィヨン>マクロン>ルペ
ンとする。
仮定5:ルペン支持者の選好順位はルペン>フィヨン>マクロン>メランションとす
る。
>

この仮定によればコンドルセ式選挙制度ではフランソワ・フィヨンが1位となるだろ
う、ということですね。
それは、仮定3から仮定5まで全ての支持者が「2位にフィヨンを挙げている」からで
す。
それなら、そのような結論になるのは当然と言わねばなりません。
その場合にまず検証しなければならないのは、この仮定が自然であると考えられるか
どうか、です。
しかし、この仮定には無理があるのではないでしょうか。
それは「支持者は一番支持する候補を1位に、より自分に近い方の候補を2位に挙げ
る」
のが自然だと一般的に考えられるからです。そこで、4候補の支持者が2位に誰を挙
げるかを考えてみましょう。

今回の場合、
(1)「右翼か・左翼か」という基準で右から並べれば
   ルペン(極右)フィヨン(中道右派)マクロン(中道)メランション(左派)

(2)経済政策では
   ルペンは保護主義、メランションは反新自由主義、あとのふたりは新自由主義
という順序になります。

(1)の「右か左か」を基準にするなら、メランション支持者が二位にフィヨンを選
ぶのは考えにくい。
当然にもマクロンを選ぶでしょう。そうなれば、僅差でやはりマクロンなのではない
でしょうか?

(2)について、もうひとつの考え方ですが、「反新自由主義」を基準にするなら、
メランション支持者が2位にルペンを選ぶ可能性が考えられます。
これは米大統領選挙で失業者や低所得層が新自由主義の被害にたまりかねて
排外主義にすがりついた結果、トランプが選ばれたのに似ているように思います。

ただ、この可能性はあまりないでしょう。ナチス支配の経験を持つフランス人が極右
の排外主義者を選ぶ可能性は少ない。
実際、第2回投票でもルペンに大きく差をひろげてマクロンが勝っています。
また、これは今回だけの現象ではありません。15年前、ほぼまったく同じことが起
こっています。
2002年の大統領選挙では第1回投票で、1位が右派共和国連合のジャックシラ
ク、2位がルペンの父親のジャン・マリ・ルペン。
フランスでは大きな勢力を持つ社会党のリオネル・ジョスパンは通常は2位なのです
が、その時は3位で敗退しました。
この時は左右どちらの政権党もともに新自由主義政策であったため、それに反感を
もった有権者が
右派は極右へ、左派は極左へ、それぞれ票を投じた結果でした。
しかし極右派はルペンに統一できたが、極左派はバラバラであったため、このような
結果となったわけです。
この時の2回目の投票がフランス人の傾向をよく表しているように思います。
ルペンの得票は第1回目とほとんど変わらず18%ほどだったのに対してシラクは8
2%という驚異的な得票率となりました。
フランスの「反ファシズム」の伝統が非常に強固であるのを感じないではいられませ
ん。

結論としては、やはりマクロン当選はコンドルセ式でも動かないのではないだろう
か、というのが私の意見です。
もっとも、それももちろん「仮定」にすぎません。



-----Original Message-----
From: cml-bounces+mappen=red-mole.net at list.jca.apc.org
[mailto:cml-bounces+mappen=red-mole.net at list.jca.apc.org] On Behalf Of OHTA,
Mitsumasa
Sent: Friday, May 12, 2017 1:40 AM
To: uniting-peace at freeml.com
Subject: [CML 047997] マクロンは本当に2017年フランス大統領選挙で有権者の支持
を得ていたのか?

[転送・転載歓迎します。重複受信の際はご容赦ください。]

2017年フランス大統領選挙はフランス式2回投票制によってマクロンが勝利を収めま
した。しかし、コンドルセ式選挙制度であれば、マクロン勝利という結果にはならな
かった可能性があります。

コンドルセ式選挙制度とは、投票者が候補者すべてに選好順位を付けた投票を行い、
候補者に総当たり戦、すなわちあらゆる組み合わせの2人対戦を行わせ、全投票者に
よる絶対多数決で候補者間の選好順位を決めるものです。

実際の第1回投票では下記の有力4候補がかなりの接戦でした。

エマニュエル・マクロン(中道、無所属、新自由主義)
マリーヌ・ルペン(極右、国民戦線、保護主義)
フランソワ・フィヨン(中道右派、共和党、新自由主義) 
ジャンリュック・メランション(左翼党、反新自由主義)

2017年フランス大統領選挙を下記の仮定で単純化して、コンドルセ式選挙制度のシ
ミュレーションをしてみます。

仮定1:上記4候補が立候補し、第1選好投票(第1回投票に相当)の得票数は下記の通
りとする。

マクロン   24
ルペン    23
フィヨン   22
メランション 21

仮定2:フィヨン支持者の選好順位はフィヨン>マクロン>メランション>ルペンと
する。
仮定3:マクロン支持者の選好順位はマクロン>フィヨン>メランション>ルペンと
する。
仮定4:メランション支持者の選好順位はメランション>フィヨン>マクロン>ルペ
ンとする。
仮定5:ルペン支持者の選好順位はルペン>フィヨン>マクロン>メランションとす
る。

結果は、フィヨン>マクロン>メランション>ルペンという選好順位となり、マクロ
ンではなくフィヨンが勝者となります。

コンドルセは、フランス式2回投票制のように相対多数の上位2名だけで決選投票を行
うことの不合理を教えているのです。


太田光征



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