[CML 048898] 沖縄県のHPに「差止訴訟提起の表明について」という頁が特設されたのを機に翁長知事の「埋立承認取消しの取り消し」の過ちを改めて考える――元裁判官の仲宗根勇さんの「取消しの取り消し」批判再掲

higashimoto takashi higashimoto.takashi at khaki.plala.or.jp
2017年 6月 23日 (金) 09:43:14 JST


今回の翁長知事が提起した「差し止め訴訟」以前の問題として、その前の翁長知事の「埋立承認取消しの取り消し」行為自体が
誤りであるという法律的観点からの批判論があることをご存じない方も多いのではないか。本サイトでは翁長知事及びオール沖
縄の側の視点の紹介はあっても同知事及びオール沖縄を批判するまっとうな視点からの論の紹介は皆無といってよいからです。
私が以下、元裁判官の仲宗根勇さんの論を紹介しようとするのはそういう理由からです。 


沖縄県は最近、翁長知事が提起している差し止め訴訟に関連して同県のHPに「差止訴訟提起の表明について」という頁を特設
し、同頁中の「最高裁判決との関係」という項目の中で記者からの質問に答える形で「沖縄県は、最高裁判決に従い、埋立承認
取消しを取り消しました。これにより、前知事が埋立を承認した原点に戻り、辺野古問題に関するその後の行政手続については、
公有水面埋立法に基づく埋立承認が適法であることを前提に対応することとなります」と述べ、埋立承認取消しの取り消しは「最
高裁判決に従」った結果だという認識を述べ、現在、辺野古の海が沖縄防衛局(国)によって日々埋め立てられ、取り返しのつか
ない事態にまで立ち到ろうとしていることについて正当化を図ろうとしているようです。 

http://www.pref.okinawa.jp/site/chijiko/henoko/latest.html

しかし、「埋立承認取消しの取り消し」は法律的にはする必要がないものでした。翁長知事はその法律的にする必要がない「埋
立承認取消しの取り消し」をして、辺野古の埋め立ての工事再開という危機を自ら招いてしまったのです。その責任はきわめて
大きなものがあります。

以下、「埋立承認取消しの取り消し」は法律的にはする必要がまったくない法律的な理由をPeace Philosophy Centreブログ(乗松
聡子さん主宰)の「辺野古埋め立て「違法確認訴訟」最高裁で県が敗訴しても知事は判決を理由に埋立承認取消を取り消すこ
とはできません/させてはいけません―元裁判官仲宗根勇氏との問答」という記事から仲宗根さんの論を再引用させていただこ
うと思います。
http://peacephilosophy.blogspot.jp/2016/12/govenor-onaga-cannotmust-not-cancel-his.html

仲宗根さんの論は要約次のようなものです(下記の仲宗根さんの論は翁長知事が埋立承認取り消しを取り消さないという前提
の上に立って述べられていますが、論の趣旨は変わりません)。

『私が100%予想した通りの判決理由と主文です。少し専門的な話をしますが、判決というのは二つの部分で構成されています。
一つは判決主文。もう一つの部分が、判決理由。主文を導くための理由付けを記載します。「判決理由」には既判力はなく「主文」
にだけに既判力がある。既判力というのはその後の両当事者の裁判において前にした裁判が効力を有することを「既判力を有
する」というのです。民事訴訟法114条では「主文のみが既判力を有する」となっている。

昨日の判決理由は国の言い分をそのまま認めたものでありますが、われわれは何ら動揺することもない。あれには既判力はな
い。本来既判力のない判決理由にその既判力をもたせようと県が国と合意したのが3月4日「和解」の第9項です。判決主文、
判決理由、またその後についてもこれに従う、という三つの、三重の拘束で、手を縛っておったわけです。この9項がはたらくに
は国地方係争処理委員会が沖縄県の審査申し立てに対して(国が県に埋立承認の取消の取り消しを求めた是正指示が)違法
であるとか違法でないとかという判断を下した場合には5項又は6項にもとづいて、是正指示の取り消し訴訟を出すということに
なっていました。違法でないと判断した場合は5項、違法であると判断したのに国が委員会の勧告に応じた措置を取らないとき
は6項にもとづく訴訟となるが、この裁判が確定した場合は主文、判決理由、その後も、お互い協力し合うという三重の縛りをか
けておりました。

ところが今回の違法確認訴訟というのは、沖縄県が5項又は6項に基づいて是正指示取り消し訴訟をする必要がなくなったの
で、国がやむなく違法確認訴訟を出したわけです。つまり、これは3月4日の和解条項5項又は6項に基づかないので、3月4
日の和解とは無関係であり、この違法確認訴訟に9項ははたらかない。これが和解条項の裁判所や訴訟関係者における常識
的な読み方なのです。国地方係争処理委員会が、国の是正指示を違法であるともないとも判断せず、協議をしなさいといった。
だから県は是正指示取り消し訴訟は提訴しなかった。しかし昨日の、国に調教された裁判官は、安倍官邸の是正指示の効力
は維持されているので沖縄県はこの是正指示取消訴訟を出すべきであったと、判決理由の中で言っている。それは和解9項
をはたらかそうという悪知恵です。国の代理人は第1回弁論期日において、この訴訟は3月の和解条項に従って行われるもの
であると陳述し、また菅官房長官も記者会見で何度も「和解条項にしたがって」と言ったが、和解9項をかぶせよう(9項で県知
事の以後の公有水面埋立法上の権限行使や承認撤回の主張を封じようとする)という意図だ。しかし和解9項は、5項又は6
項にもとづく、沖縄県が出す是正取消訴訟についてのみ適用できるのである。沖縄が協議に期待して地方委員会の結論にし
たがって協議をやるということで、是正指示取り消し訴訟の訴えを出さなかったことについて、この裁判官は、するべきだったと
言って和解条項に全く反するようなことを判決理由中で言っているわけです。

この裁判の後に国はおそらく取り下げた代執行訴訟、つまり翁長知事が(埋立承認取り消しを)取り消さないので国が替わって
取り消しましょうという訴えを出すはずです。その訴訟で最高裁まで行って負けた場合は、国が翁長知事の承認取消を取り消し
て、仲井真知事の埋立承認が復活する。そうなると工事再開ができる。しかし、沖縄県にはまだ承認後の事情の変更、公益を
問題にして、承認の撤回という、「取消」とは異なる別の法的手段が残っている。これをいつ行使するか、それが県の頭脳を集
めるべきことです。つまり3月4日の和解第2項及び第8項で、裁判が確定するまで工事は中止するということになっているので、
裁判を長引かせれば長引かせるほど中止の期間は長くなる。撤回の裁判で問題になるのはすでにやった工事量、国はこの違
法確認訴訟の訴状の中で、すでに工事の契約金額のうち577億円を支払っていると主張しており、昨日の判決の理由にあっ
たように思いますが、撤回となると、撤回の理由となった公益の内容や程度と、国がすでに撤回までに費やした既成事実との
利益衡量、バランス論で撤回の裁判の勝敗が決まるのであり、だからこそ撤回までは工事中止を長引かせ工事量を増やさな
いことが必要なのですよ。』

東本高志@大分
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