[CML 048504] JR車中カメラ設置をうけて、KASIKO防犯カメラの法的問題配信

りょうこ baffydct at gmail.com
2017年 6月 8日 (木) 10:03:39 JST


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防犯カメラの法的問題

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防犯カメラ映像の公開中止事件

先週平成26年8月13日、東京都中野区の古物商「まんだらけ」が、警視庁の要請を受けて万引き犯の防犯カメラ映像の公開を中止するというニュースがありました。

※参考リンク:47ニュース 8月14日の記事 <http://www.47news.jp/47topics/e/256114.php>

今回は、店舗の万引きに対する自衛手段として、防犯カメラによる撮影や録画映像の公開や共有がどこまで許されるのかということを検討してみたいと思います。

店舗における防犯カメラによる撮影

まずは、店舗において防犯カメラによる撮影をすることが法的に許されるものかどうかについて解説します。

現在、店舗内を防犯カメラにより撮影・録画することは一般的に行われており、法的にも当然に許されるものと思われるかもしれません。
しかし、後掲の判例で示されるように、防犯カメラによる撮影・録画が客の肖像権やプライバシー権を侵害する可能性もあり、無制限に許容されるものではない点に注意が必要です。

【京都府学連事件 最高裁昭和44年12月24日判決】
この事件は、警察官が許可なく学生デモ隊を写真撮影した行為が適法なものかが争われたものです。
裁判所は、「個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由を有する」「これを肖像権と称するかどうかは別として、少なくとも、警察官が、正当な理由もないのに、個人の容ぼう等を撮影することは、憲法13条の趣旨に反し、許されない」と判示しています。
判例は、警察という国家権力との関係において「みだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由」を認めており、少なくとも正当な理由のない無制限な写真撮影を認めておらず、これは防犯カメラによる撮影についてもほぼあてはまると言えそうです。

【コンビニ防犯カメラ事件 名古屋地裁平成16年7月16日判決】
上記最高裁判決は、警察という国家権力による撮影が問題になりましたが、私人との関係で防犯カメラの撮影の適法性が問題になったのがこの事件です。
裁判所は、肖像権が私人相互においても尊重されるべきこと、買い物の内容について他人に知られたくない場合もあることを認めた上で、一方で、商店の経営者には来店客及び従業員の生命・安全やその財産を守るために一定の措置をとることが認められると判断しています。
その上で、防犯カメラを設置の可否については、「目的の相当性、必要性、方法の相当性等を考慮した上で、客の有する権利を侵害する違法なものであるかどうかを検討する」と判断しています。

※参考:裁判所ホームページ裁判例情報:名古屋地裁平成16年7月16日判決
<http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/540/007540_hanrei.pdf>

万引きは犯行後に判明することもあり、証拠保全のために事前に防犯カメラによって撮影・録画しておくことについて目的の相当性と必要性は認められるべきでしょう。あとは撮影方法が相当であるかが問題となりますが、万引き防止という目的との関係で明らかに不必要又は過剰な防犯カメラの設置でなければ許されるものと考えられます。

防犯カメラ映像の公開

それでは、今回の「まんだらけ」の事件のように、防犯カメラ映像を公開する場合はどうなるでしょうか。
考えるべき視点としては、)蛭肇メラ映像の公開が名誉毀損罪、脅迫罪、強要罪などにあたらないかという刑事の問題、∨蛭肇メラ映像の公開が不法行為等にあたり損害賠償請求を受けないかという民事の問題、があります。

〃沙の問題について、防犯カメラ映像の公開が直ちに名誉毀損罪、脅迫罪、強要罪に該当するものではありませんが、万引き犯として写真を公開し、出頭や返品、賠償を要求するなどした場合にはこれらの犯罪の構成要件に該当してしまう可能性があります。
仮にこれらの犯罪の構成要件に該当してしまった場合でも、名誉毀損罪(刑法230条)については真実性の証明による免責(刑法230条の2)がされる余地がありますが、免責の要件を全て満たすことができるかは疑問のあるところです。

※真実性の証明による免責(刑法230条の2)
名誉毀損にあたる行為であっても「公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。」とされています。
そして、「公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。」とされているため、万引き犯に関する事実であれば「公共の利害に関する事実」という要件はみたすことになりそうです。

※なお、脅迫罪・強要罪等の犯罪については正当防衛により免責されることを考えることができますが、正当防衛(刑法36条1項)は「急迫不正の侵害」に対する防衛行為を免責するものであって、万引き犯の防犯カメラ映像の公開という事後的な行為について適用はないものと考えられます。

¬瓜の問題について、前述の京都府学連事件判決やコンビニ防犯カメラ事件で示されたように個人には肖像権があり、また名誉やプライバシー権も存在します。
裁判で判断がなされていない犯罪行為をその防犯カメラ映像とともに公開することは、公開された個人の肖像権、名誉権、プライバシー権を侵害するものと言わざるをえず、損害賠償請求の対象となる可能性があると考えられます。

※損害賠償の根拠としては不法行為(民法709条)となる場合が多いでしょう。
「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」

ここで、例えば新聞やテレビなどの報道で容疑者の写真や名前を公表する場合に違法とならないこととの違いはどのようなところにあるのでしょうか。
新聞やテレビなどの報道の場合、公表の目的は報道という表現の自由の行使という正当な目的であるという特徴があります。
一方で、店舗が万引き犯の映像を公開することは、その主目的が私的制裁にあるものと考えられ、刑罰権を国家が独占している日本では私的制裁という目的は正当化の理由にならないということが言えます。

防犯カメラ映像の共有

最新の顔情報認識システムを利用して防犯カメラに撮影された万引き犯などの顔情報を複数の企業・店舗で共有する仕組みも最近話題になりました。

※参考:GQ 平成26年4月8日の記事「顔認識の防犯カメラ 『万引き犯』の情報共有に問題は」
<http://gqjapan.jp/more/andmore/20140408/facial-recognition-privacy>

こちらは、顔写真を公開したり、万引き犯に出頭や返品を要求するものではないので、前述の公開のように刑事の問題が発生する可能性は少ないですが、個人情報の第三者提供にあたる余地があり、個人情報保護法上の法的問題が生じます。

具体的には、客に無断で顔情報の共有がされた場合、個人情報保護法23条の個人データの第三者提供の制限に違反する可能性があります。
法的問題としては、顔情報が「個人情報」にあたるのかという問題があります。
また、例えば万引き犯が検挙されてその同意を得た場合のみ顔情報を提供する仕組みをとるなど、その第三者提供の方法によって法的問題は生じない場合もあります。

※個人情報とは、「生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)」とされています(個人情報保護法2条1項)。

なお、個人情報保護法違反の制裁措置としては、無断の第三者提供が即時に罰則の対象となるのではなく、原則として行政機関による勧告や措置命令があり、その命令に違反した場合に罰則が科せられるという仕組みになっています。

さいごに

最近の警察の統計資料によれば、万引きの認知件数に対する検挙率は7割程度となっており、被害品の返還や被害弁償の済んでいない万引きによる店舗の被害も相当あるものと考えられます。
また、いわゆる万引きGメンを雇うためなど万引き対策の経費も相当にかかります。
そのため、「まんだらけ」の事件について、私個人としては、店舗側の自衛手段として防犯カメラ映像を公開するという手段を検討することについて、一定程度共感する部分もあります。
しかし、やはり私的制裁が禁止されるべきこと、万が一公表の内容が間違っていた場合に個人の社会生活に及ぼす影響の大きさ、公表という制裁行為をとることによる店舗のイメージダウンの可能性などを考えると、公開はリスクの高い方法であり、公開を中止した「まんだらけ」の対応は常識に沿った合理的判断として評価されると考えています。

参考記事:
・企業の個人情報管理と個人情報保護法~その1~
<http://kasiko.me/%e4%bc%81%e6%a5%ad%e3%81%ae%e5%80%8b%e4%ba%ba%e6%83%85%e5%a0%b1%e7%ae%a1%e7%90%86%e3%81%a8%e5%80%8b%e4%ba%ba%e6%83%85%e5%a0%b1%e4%bf%9d%e8%ad%b7%e6%b3%95%ef%bd%9e%e3%81%9d%e3%81%ae1%ef%bd%9e/>
・企業の個人情報管理と個人情報保護法~その2~
<http://kasiko.me/%e4%bc%81%e6%a5%ad%e3%81%ae%e5%80%8b%e4%ba%ba%e6%83%85%e5%a0%b1%e7%ae%a1%e7%90%86%e3%81%a8%e5%80%8b%e4%ba%ba%e6%83%85%e5%a0%b1%e4%bf%9d%e8%ad%b7%e6%b3%95%ef%bd%9e%e3%81%9d%e3%81%ae2%ef%bd%9e/>
・企業が従業員の電子メールを閲覧・管理する権限
<http://kasiko.me/%e4%bc%81%e6%a5%ad%e3%81%8c%e5%be%93%e6%a5%ad%e5%93%a1%e3%81%ae%e9%9b%bb%e5%ad%90%e3%83%a1%e3%83%bc%e3%83%ab%e3%82%92%e5%8b%9d%e6%89%8b%e3%81%ab%e9%96%b2%e8%a6%a7%e3%83%bb%e7%ae%a1%e7%90%86%e3%81%99/>
・企業におけるオンラインストレージサービス利用の法的リスクと対応
<http://kasiko.me/%e4%bc%81%e6%a5%ad%e3%81%ab%e3%81%8a%e3%81%91%e3%82%8b%e3%82%aa%e3%83%b3%e3%83%a9%e3%82%a4%e3%83%b3%e3%82%b9%e3%83%88%e3%83%ac%e3%83%bc%e3%82%b8%e3%82%b5%e3%83%bc%e3%83%93%e3%82%b9%e5%88%a9%e7%94%a8/>
・BYOD(Bring Your Own Device)の法的リスクと対応
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   - 2014年08月18日
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本記事は、2014年08月18日公開時点での情報です。個々の状況によっては、結果や数値が異なる場合があります。特別な事情がある場合には、専門家にご相談ください。
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この記事のアドバイザー
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