[CML 045252] 「クリントンvsトランプ」バトルをどういう視点から見るのか

まっぺん mappen at red-mole.net
2016年 10月 9日 (日) 12:59:43 JST


まっぺんです。
塩見さん、ご無沙汰しております。先日の「上」につづき「中」と、米大統領選挙に
ついての詳細な観察、ご苦労様です。いろいろ勉強させていただきます。「下」につ
いても期待しております。
 ところで、この大統領選挙を観察するにあたって、我々はどういう立場から、この
バトルを眺めるべきなのでしょうか。私としては、その「立ち位置」を気にするもの
です。これは塩見さんへの反論ではなく、同調するのでもなく、「別の見方」からの
意見です。

「クリントンvsトランプ」という場合には、すでに民主党・共和党それぞれの候補者
が決まった段階での両党候補者の争いという「限定された条件」での観察になります
が、両候補とも、「アメリカ国民の代表候補」というよりは「アメリカの富裕者」を
代表しているものであり、貧困者たちの意志を代表するものとは言えません。した
がってどちらが勝っても、そのイニシアティブが貧困者大衆の側に獲得されることは
ありません。サンダース候補こそはその可能性をもっていた唯一の候補でしたが、す
でに敗退してしまいました。

今回の米大統領選挙を見ていて、私は14年前のフランス大統領選挙を思い出しまし
た。フランスは保守派と社共派が拮抗していて両者のあいだで政権交替があるのです
が、2002年の選挙では保守の共和国連合からジャック・シラク、社会党からリオ
ネル・ジョスパンが立候補しました。しかし両勢力とも、政権を担当していた時には
グローバリゼーション政策を進めていたため、有権者の心はこの両者から離れてゆ
き、その外側の、つまり保守派はより右派で排外主義な候補へ、左派はより左の候補
への投票が増えたのです。今までの選挙では保守派と社共派の候補がそれぞれ勝ち
残って決戦投票となっていたのに、その年には左派票が多くの極左派候補に分散し、
右派票は極右の統一候補となっていたジャン・マリ・ルペンに集中した結果、保守の
シラクと極右のルペンが決戦投票に残ってしまいました。翌日からフランス全土で大
デモ行進が行われました。「どちらも投票するな」という方針もありましたが「ファ
シスト(ルペン)打倒のためペテン師(シラク)に投票せよ」というスローガンも行
われました。結局はシラクが勝ったのですが、彼は就任演説の時に「自分の勝利は決
して支持者のおかげばかりじゃない」と認めています。

グローバリゼーションの嵐の中で翻弄される世界の貧困者たちの前には、14年前の
フランス大統領選挙の時のように、また今回の米大統領選挙のように、どちらを選ん
でも回答にならないような回答しか用意されていません。今の日本でもそれは言えま
す。自民党に対抗する勢力として民進党は「回答」になるのか? 野党勢力の統一と
団結が必要な時に民進党は未だに共産党とは距離を置こうとしています。このような
日本でもそうですが、アメリカでもまた、「大統領選挙ではどちらが勝つか」を観察
するばかりでなく、大統領選挙を通じて何ができるのかを考え、またアメリカ市民運
動、労働運動、貧困者の運動の中に「明日を展望する」方向性を見出してゆくことが
必要なのだと思っております。



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