[CML 045683] 藤原正彦問題~再び「ジプシー」(スィンティ・ロマ)表現を考える~

檜原転石 hinokihara at mis.janis.or.jp
2016年 11月 17日 (木) 05:47:45 JST


連載 差別表現

小林健治
檜原転石です。

日本低国では差別語を使って批判されても、差別者への一定数の擁護者が出てし
まい、結局は差別が野放しにされるという度しがたき現実がある。



▼2016.10.31 Monday

ウェブ連載差別表現 第189回 再び「ジプシー」(スィンティ・ロマ)表現
を考える



 http://rensai.ningenshuppan.com/?eid=207



■藤原正彦氏の『週刊新潮』コラム「管見妄語」

 藤原正彦氏が『週刊新潮』(2016年10月20日号)のコラム「管見妄語」で、再
びロマ民族について差別的な記述をしている。3年ほど前にも同様の記事を書い
ていたが、今回は、より念入りにロマ民族に対する差別的な描写をおこなっている。



「外国へ行く時、金銭をどう携帯するかはいつも問題である」、との書き出しで
始まるコラムは、新婚旅行先のローマで、尻ポケットに入れた財布を狙って「尻
につられて寄ってきたジプシーの子供の一団を『この野郎』と一喝したら、助け
を乞うような表情をして逃げ出した。」



 さらに、



「7年前にはローマでジプシーの若い女が、歩道で私にスッと身体を寄せて来
た。……ふいにポケットに手が伸びた。瞬間に意味不明ながら『ダー』と叫んだら
泣きそうな顔をして退いた。」



 この「ウェブ連載差別表現」第1回が「ジプシーという言葉について」であ
り、その後も折に触れて「ジプシー」という差別語を使用した差別表現について
書いているが、基本的な部分を再録しておく。



■「ジプシーという言葉について」――第1回連載差別表現より抜粋



……それはさておき、まずは「ロマ・スィンティ」民族の呼称の歴史と現状につい
て、見ていくことにしましょう。

ヨーロッパ全域で暮らす少数民族に「ロマ」(「ジプシー」)がいます。「ジプ
シー」という言葉は「エジプトからやってきた人」つまり「エジプシャン」とい
う誤解から発生し、差別的な意味あいをもつ言葉として認知されています。

 それにかわって、彼らが自称する「ロマ」が公称です(「ロマ」という言葉
は、ロマの言語であるロマニ語で「人間」を意味しています)。もともと、イン
ド北西部(パンジャブ地方)を発端の地とし、10世紀ごろ(6〜7世紀という説も
ある)から移動を開始し、現在1000万人を超えるロマ民族が、ヨーロッパ各国・
西アジア・北アフリカ・アメリカなどに広く居住しています。

 ヨーロッパでは「ジプシー」という呼称が「劣等民族」「泥棒」「不道徳者」
という認識の下、蔑称として使用されてきた歴史があります。現在「ジプシー」
と“他称” されている人々の呼称は、11世紀ころギリシャにあらわれた彼らに対
し、ギリシャ語で「異教徒」を意味する“アツィンガノス”(「不可触民」という
意味もある)と呼んだことに端を発しています。その後、ヨーロッパ各地で多様
なバリエーションをもって、「ツィゴイナー」(ドイツ)、「ジタン」(フラン
ス)、「ジプシー」(イギリス)など差別的に他称されるようになったわけです。

 21 世紀の2010 年にも、フランス政府がEU憲法違反にもかかわらず、8000人以
上のロマを国外に強制追放するなど、ヨーロッパ諸国で生活するロマ人への不公
正なあつかいと排斥がつづいています。

 日本でも大手旅行会社がヨーロッパ旅行にさいして、事前配布した資料のなか
に「ジプシー」を犯罪者とみなした記事を掲載し、抗議された例も一つや二つで
はありません。




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