[CML 045487] 食料自給率もオーガニックも少ない日本で。映画『聖者たちの食卓』と子ども食堂.映画未来の食卓から考えるTPP
dctthanks at excite.co.jp
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2016年 11月 1日 (火) 11:46:37 JST
日本の食料事情
現在の日本の食料事情
2013年「和食;日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録されました。また日本人の食生活はバラエティに富み、世界一豊かだとも言われています。しかし、日本の食料自給率は減少傾向にあり、カロリーベースで約6割、生産額ベースで3分の1の食料を、それぞれ輸入に頼っています
日本の食料自給率はカロリーベースで39%、生産額ベースで64%
日本人の食生活の大きな変化
食料自給率低下の原因の一つは私たちの食生活の大幅な変化にあります。米や野菜など食料自給率の高い食料を中心とした食生活から、畜産物や油脂、加工食品等を多く摂取する食生活へと変わりました。これらの食品そのものやその原材料や飼料を輸入に頼る場合が多いため、食料自給率が低下することとなりました。
これからの食料輸入
世界の人口は70億人を突破し、今も増え続けています。世界規模で食料問題が深刻化する中、今までのように多くの食料を外国から輸入し続けるのは難しくなる可能性があります。私たち日本人にとって世界の食料事情や食料自給率の問題は他人事ではありません。
http://www.syokuryo.jp/fan/japanese-problem.html
相変わらず低い食料自給率。食料自給率が低いとなぜいけない
http://www.kyoto.coop/kokusan/curriculum1.html
セカンドハーベストJAPAN
http://2hj.org/
食と農業の未来像 〜エコロジカル農業(生態系農業)〜
http://www.greenpeace.org/japan/ja/campaign/food/7principles/
いま私たちの食は、矛盾を抱えています。
世界人口70億人のうち、10億人が肥満に悩み、10億人が飢えに直面している
食料の30%が収穫後のロスや流通の途中、購入された後に廃棄されている
農業は地球の淡水資源の70%を使用し、世界各地で水不足や水質汚染の原因となっている
私たちに、健康的な農業と豊かな食生活を約束してくれるのは、有機農業や自然農法などの”生態系農業”です。 自然と生物多様性を大切にし、古くからの知恵と最先端の農業技術をかけあわせた農法です。 巨大企業を中心とした”工業型農業”ではなく、人々と農家、つまり消費者と生産者を中心におき、コミュニティのつながりを深めます。
生態系農業が叶える7つのこと
1 食料の自己決定権:
生産者と消費者が巨大企業にコントロールされずに、自分たちの食べ物を自由に作り、手に入れられること。
ここ日本でも、生態系農業を実践している農園があります。農家と消費者が、単に野菜を売る・買うだけの関係ではなく、一緒に育てて収穫する農園です。
色とりどりの美しい畑には、化学肥料を使わず、より自然に近い状態でさまざまな農産物を育てています。
2 農家と農村地域社会へ利益:
食べ物を作り出してくれる農家や漁師のコミュニティが、労働に見合う安定した生活を送れること。
3 経験と科学を活かした生産方法と持続的な食:
農家の培ってきた経験と科学に基づく方法で、必要なところで持続可能な生産をし、穀物を大量に消費する家畜の大量生産や食料廃棄物を減らすこと。
4 生物多様性と多様な種子のシステム:
単一の作物栽培=モノカルチャーをやめ、多種多様な作物を育てることで、自然本来の生物多様性や景観を守り、私たちの食卓の彩りや栄養バランスを守ること。
5 持続的な土壌の健全性ときれいな水:
今日、淡水汚染の最大の原因は農業。化学物質で水や土壌を汚染することなく、土の豊かさを保つこと。
6 生態系の力を活用した無農薬の害虫防除:
植物や益虫を使って雑草や害虫をおさえ、化学農薬の使用をカットすること。 例えばイチゴ栽培。ニンニクを混植することによってニンニクの匂いを嫌ってイチゴに害虫が寄りにくくなる。
7 気候変動に対応できる食料生産:
気候変動によって世界中で干ばつや洪水が起きている。生態系農業が育てる有機的な土は、自然災害に負けず、食料を生産し続けること、そして食料システムを再デザインすれば、気候変動の影響を和らげることができる。
[子どもたちの食(2)]明日、飢えないという幸せ 「世界食料デー」に観る食卓のドキュメンタリー
2016年10月11日 食と農
10月16日は、世界食料デーということをご存知だろうか。NPOやNGO、国際機関が呼びかけ、飢餓や食料問題など、世界の食について考えようという取り組みだ。「みんなで食べる幸せ」があれば、明日を生きられる――映画を見ながら、そんなことを子どもといっしょに学んでみるというのもいいだろう。メジロフィルムズ代表で映画ライターの松下加奈さんに、2つの「食卓」にまつわるおすすめの映画をうかがった。
毎日10万人分の食事を無料で提供する食堂
これまで飢餓や食料問題といえば、南半球、アジアやアフリカなどの途上国の問題として捉えられてきました。でも最近は、飽食の国、日本でも「貧困」は確実に忍び寄っていて、もはや地球の裏側の話ではなく、もっと身近なトピックになっています。そんないま、これからの食を考えるうえでヒントになる、2つのドキュメンタリー映画を紹介したいと思います。
ひとつ目は、2014年に公開となった『聖者たちの食卓』というインドのドキュメンタリーです。私は、以前勤めていた映画配給会社のアップリンクで、この映画の担当をしていました。
舞台は、インドとパキスタンの国境付近にひっそりと建つ黄金寺院という金ピカのシク教の寺院です。その寺院には、毎日10万人分の食事を無料で提供している巨大食堂があります。映画には、その膨大な食事、主に豆カレーを用意するキッチンの舞台裏や、驚愕するアクロバティックなインド流後片付け術が次々と映し出されます。
朝、畑で収穫するところから始まり、大きな鍋で玉ねぎを炒めたり、インドの薄焼きパンであるチャパティを次々と焼き上げたり、粛々と厳かに、でもインドらしい騒がしさのなか、祈りとともに食卓の準備が進んでいきます。食事は多くのボランティアのスタッフや寄付でまかなわれていて、時にシングルマザーや、家庭内暴力で行き場のない親子のセーフティネットにもなっています。
寺院で働く人のなかには、盗賊や理由(わけ)ありの、いわゆる外の社会で生きていけなくなった「裏稼業」の人たちもいます。労働を対価に、寝食の場所と安らぎを得る人々は後を絶ちません。人種も階級も社会的な立場も関係なく、食べることに困った多くの人々が、ここを訪れ、食を得ているのです。
飢えないという確信は、本能的な安心感と創造性を育む
私は、この映画と貧困が加速する日本の状況を重ね合わせたとき、一見豊かな食がある日本にも、みんなが安心してごはんを食べることができる場が必要なのではないかと思い始めました。
そんなときに縁があり、この映画といっしょに、「こども食堂」という、子どもは無料、大人は寄付することでいっしょに食べられる1日限りの無料食堂を、都内のお寺を借りて開催することになりました。
発起人はオルタナティブなライフスタイルを提案する雑誌『マーマーマガジン』の編集長、服部みれいさん。みれいさんは、この映画を観て、すぐに「こども食堂をやりたい」と話してくださったのです。
食材は、すべてつながりのある農家さんからいただいた季節の野菜。料理家のたかはしよしこさんが、腕によりをかけて食事を作ってくれました。それは、単に映画を紹介するという仕事を越えたところで、多くの人が一体となっての取り組みでした。
人参嫌いのお子さんが、有機人参で作ったスープをぐびぐび飲み干す姿は印象的でした。嫌いなものを食べられるよう工夫してもらったり、「おいしいね!」と伝える相手がいる。食卓を囲むということは、うれしい感情を誰かと共有できることなんだなと思います。何より、満足そうにおなかいっぱいにしている子どもたちの姿を見ていると、こちらまで満たされていきました。
コンビニに行けば、簡単に食事が手に入る。ワンコインで安易におなかを満たすこともできる。そんな日本に生きている私たちには、飢えなんて想像しがたいことです。でも、この映画に出合って、「平等におなかを満たす」ということは、いかにむずかしいことなのか、いかに貴重なことなのか、ということを考えさせられました。
満腹から来る、明日飢えないという確信は、本能的な安心感と、次の食事の心配をせず、明日は何をして過ごそうという創造性を育みます。満腹というのは、とても人間的で、本当に大切なことなのだと気付かされます。
子どもと老人の給食を、すべてオーガニック食材にするという挑戦
食卓のあるべき姿として、もうひとつ紹介したいのが、『未来の食卓』という南フランスのドキュメンタリーです。ゴッホが晩年を過ごしたアルルの近く、バルジャック村というのどかな田舎町を舞台に、子どもたちの給食と老人たちの食事を、すべてオーガニック食材にしようと、村長たちが四方八方、奮闘する姿を描いた作品です。
公開は2007年、今から9年近く前です。オーガニック食材が、今ほど認知されておらず、日本では生協や自然食品の専門店に行かないと手に入らない入手困難な食品でした。来日された映画監督のジャン=ポール・ジョーさんが、「オーガニックの緑茶を飲みたい」と言うので、担当だった私は、オーガニックショップを探して六本木をさまよったのを覚えています。
当時に比べると、オーガニックという言葉も浸透し、有機の食材を使ったおしゃれなカフェや惣菜屋も増え、さらに自然派のコスメやシャンプーも専門店ができるようになって、市民権を得たと思っています。
久しぶりに映画を見直し、9年たった今でも思うのは、この給食をオーガニックにするという方法は、色褪せないテーマだということです。毎日一定数の食事をまかなう給食というシステムにオーガニックが組み込まれることによって、その土地の食材を使い、地域の経済を潤し、雇用も生まれ、子どもたちには土地への愛着も育まれる。地球の裏側から、肉や野菜を輸入して、それが国内の野菜より安くスーパーに並ぶということ自体が不自然なのだと気がつきます。
世界のオーガニック市場を拡大させているのは、お母さんやお父さんたち
映画の中には、最初オーガニックに無関心だった大人たちが、子どもたちの影響でオーガニックに目覚めていくというシーンがあります。大型スーパーでの買い出しから解放されて、近くの個人商店で買い物をするようになると、選択肢が減って、悩まなくて済み、冷蔵庫も必要なものだけでスッキリするようになったというお母さんたちも出てきます。野菜が苦手だったフィリップ君も、野菜のおいしさに目覚め始めます。
ひとつの変化がムクムクと化学反応を起こし、広がっている様子は、観ていてすごく気持ちがいいし、とても勇気づけられます。
無理強いは決してしないけれど、食という毎日の選択から未来をつくっていくということ。映画の公開以降も続く、世界に広がるオーガニック市場の拡大は、「やっぱりよいものを食べたい」、そんな想いを誰もがもっているそのことの証明にほかなりません。それを牽引しているのは、お子さんをもつお母さんやお父さんなのだと確信しています。
お腹を満たすこと、信念を持って食べ物を選ぶことの大切さ、世界食料デーのこの機会に、家族といっしょにご覧いただいてはいかがでしょうか。
[子どもたちの食(1)]TPPの脅威から、どうしたら日本の米を守れるのか?
2016年09月20日 食と農
日本政府が秋の臨時国会で批准をめざすTPP(環太平洋パートナーシップ協定)。その是非を巡っては、ともすれば、経済的な効果やメリットのみで語られがちだが、その先に子どもたちに手渡したい未来はあるのだろうか。シリーズ「子どもたちの食」では、重要な岐路に立つ私たちが、何を選び、どう行動していったらいいのかを考えていきたい。まずは、TPPが日本人の主食である米に与える影響について、みてみよう。
充分、自給できるのに、TPPで輸入が増えるという矛盾
「政府は一貫して、『重要品目である米は“聖域”だから、必ず守る』と主張してきましたが、交渉の結果、本当に守られたといえるのでしょうか」――TPPを巡って、そう疑問を呈するのは、新潟県阿賀野市の米生産者、阿部萬紀夫さん(JAささかみ)だ。
これまで日本では、米についてはWTO(世界貿易機関)協定に基づいて、ミニマム・アクセスという一定の輸入枠(玄米で77万トン)を設け、その枠内の米については関税ゼロ、輸入枠を超えた分には高水準の関税を課してきた。TPPでもこの枠外の関税はひとまず維持されることになり、これをもって政府は「米は守られた」と説明している。
だが、事はそう単純ではない。というのも、TPPでは、これまでのミニマム・アクセス米に加えて、新たにアメリカとオーストラリア向けに、最大約7.8万トンの無税の輸入枠が設けられてしまったからだ。つまり、無税で輸入される米の総量はおよそ1割増えるということだ。
「国産米に代わって無税の安い輸入米が外食産業などで主食用として使われていけば、国産米が余剰になってしまう」と危惧する阿部さん。宮城県大崎市の米生産者、齋藤鈴男さん(JAみどりの)も、「輸入米の数量が増えて日本にある米の総量が増えれば、当然、米価は下がる。今でもギリギリの経営状況なのに、これ以上下がったら、米作りをあきらめる農家も出てくるでしょう」と不安を口にする。
国内で食べる分を国内生産で充分まかなえているにも関わらず、輸入を増やそうとする矛盾。政府の試算では、TPP発効後も米の生産量や価格には一切変化がないとしているが、新潟県など8府県が独自に行った試算の結果だけでも、見込まれる米の生産減少額は最大約224億円(※1)。これは秋田県の米産出額の約3割(※2)に当たる大きな額であり、政府の見方を、「あまりにも楽観的すぎる」と指摘する声もある。
※1:毎日新聞(2016年5月7日)より
※2:農林水産省「農林水産統計 平成26年農業産出額及び生産農業所得(都道府県別)」より
ただでさえ減っている米の消費。限られた市場で輸入米との競争が激化
日本の米生産者にとってさらに深刻なのは、米の消費減少が止まらないことだ。食生活が欧米化したことや高齢化などにより、一人あたりの年間消費量は、ピーク時の1962年の約半分までダウン。人口減少もあり、日本全体の需要量も、毎年約8万トンのペースで減り続けている。最近では、効果に疑問が出ているにもかかわらず、ごはんを食べない炭水化物抜きダイエットも話題になっている。
ただでさえ「米余り」が切実なところに、TPPでは、毎年減っている消費量とほぼ同じだけの米が追加で輸入されることになるのだから、生産者の不安は想像に難くない。「政府は、米のだぶつきを防ぐために備蓄用の買い入れを増やすと言っていますが、本当に効果があるのでしょうか。安い輸入米が外食産業などで主食用として使われていけば、その影響を受けて国産米の価格も下がってしまうかもしれません」(阿部さん)
また、主食用以外にも、「米粉調整品」といわれる、和菓子や米菓に使われる原料や、「米加工品」(せんべい、もち、だんごなど)についても関税の撤廃・削減が決まっており、これらの輸入が増えることにも、生産者は脅威を感じている。
思い出したい、土地のものをいただく「身土不二」の考え方
「とても身近な食材なので、みなさん、あまり意識していないようですが、お米の栽培は本当に苦労が多いんですよ」と語るのは、有機農業などの検査員として全国を飛び回る有限会社リーファース代表の水野葉子さん。
「病気もあるし、虫はつくし、やっと収獲しようと思ったら台風が来る。秋田や山形では最近、野生のサルの軍団が田んぼにやって来て、お米をボリボリ食べていくという話を聞いてびっくりしました。厳しい現実と向き合いながら、おいしくて安全なお米を作ろうと汗水流している生産者には、本当に頭が下がります」
TPPに象徴されるように、モノやカネが国の枠を越えて行き来するグローバル化の流れ。けれど、水野さんが食べ物に関して大事にしている信条は「身土不二(しんどふじ)」だ。
「身土不二とは、季節のもの、ご先祖様が食べていたものを食べるということですよね。私にとっては、国内のものを食べるということが身土不二に通じることだと思っています。土が健康なら作物も健康。健康に育った作物をいただいて、私たちの細胞が作られ、健康につながる。私も20代の頃よりも今のほうがずっと健康なくらいなんですよ」
消費者でもある水野さんが感じているのは、農と食を守るカギは「食べる側にある」ということ。「安いからといって私たちが外国の農産物ばかりを選んでいたら、日本の農業は成り立っていきません。知り合いの生産者も、『買ってもらえることで僕らは勇気を与えてもらっているんだ』と言っていました」
お米があるのは“当たり前”ではなくて、“ありがたい”こと
「日本の消費者が、日本でがんばっている生産者を応援するという気持ちを強くすれば、TPPなんて怖くないと私は思います」と水野さん。検査員として、生協パルシステムの産地を何度も訪れている水野さんは、作り手と食べる人とが連携しながら農業を支えるしくみとして、パルシステムが各地で展開してきた「産直」を評価する。
「パルシステムには、公開確認会や産地交流会など、組合員が生産者の話を聞く機会があります。産地に行けば、たとえば、農薬を半分に減らすことがどれほど大変かが実感でき、食に対する組合員の意識も明らかに変わります。そのように、いろんな機会を通して産地をサポートする気持ちが生まれ、みんなで日本の食を守ろう、という形になればいいですね」
前述した阿部さんと齋藤さんも、パルシステムの産直米の生産者。「長年安定した価格で買い支えてもらっていることで、経営の計画も立てやすくなっています」(阿部さん)、「環境や安全に配慮した米作りへのこだわりがきちんと理解されていることが励みになっています」(齋藤さん)と、二人の言葉からも、厳しい経営環境のなかでも、消費者との絆が米作りを続けていく原動力になっていることが伝わってくる。
「みなさん当たり前に思っているかもしれませんが、お米があることは、本当は『当たり前』ではなくて、『ありがたい』こと。TPPをひとつのきっかけに、今こそ私たち一人ひとりが、食を守る、日本の農業を守るということを、自分の問題として考えるべきときではないでしょうか」(水野さん)
※本記事は、パルシステムのチラシ『TPPに対抗! 国内の米生産者を応援』(2016年9月3回配付)より再構成しました。
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