[CML 042733] 今日の言葉 ――日本国憲法という「仏」の下絵はGHQが作ったが、その表情、手の動きなど細かな意匠は森戸辰男ら日本人によって描かれ、朝日訴訟一審の裁判長浅沼武のような人々によって魂が込められてきた。
higashimoto takashi
higashimoto.takashi at khaki.plala.or.jp
2016年 3月 31日 (木) 12:40:31 JST
Blog「みずき」:どのようにして憲法25条・生存権条項に「日本人が魂入れた」のか。そのこと、その経過がとてもよ
くわかる秀逸な論攷です。
【どのようにして憲法25条に「日本人が魂入れた」のか】
憲法25条は「生存権」と呼ばれ、生活保護など社会保障の憲法上の根拠となる条文である。日本国憲法はGHQ案が「下書
き」になっていることはよく知られているが、実はそこに25条の「健康で文化的な最低限度の生活」という文言はない。この
趣旨の文言を憲法改正草案として初めて盛り込んだのは、戦後すぐに立ち上がった民間団体「憲法研究会」だった。1945
(昭和20)年12月に彼らが公表した「憲法草案要綱」にこうある。《一、国民ハ健康ニシテ文化的水準ノ生活ヲ営ム権利ヲ有
ス》この条文を付け加えることを提唱したのは、経済学者の森戸辰男であった。
その源流はドイツのワイマール憲法151条1項に由来する。《経済生活の秩序は、すべての人に、人たるに値する生存を保
障することを目指す正義の諸原則に適合するものでなければならない》森戸はワイマール・ドイツに留学した経験を持ち、ワ
イマール憲法に深い共感を持っていたという(遠藤美奈「『健康で文化的な最低限度の生活』再考」P108、『憲法と政治思想
の対話』所収)。憲法研究会は元東京大学教授の高野岩三郎、在野の憲法史研究家の鈴木安蔵、先述の森戸らによって
1945(昭和20)年11月5日に旗揚げされた。どの政党よりも早くできた彼らの草案は新聞の一面に紹介された。また、GHQで
のちに憲法改正問題の中心人物となるマイロ・ラウエル陸軍中佐は「この憲法草案中に盛られている諸条項は、民主主義
的で、賛成できるものである」と高く評価したという。(略)
後退していく社会保障制度によって社会から取りこぼされていく人たちを前に、国はあまりに無策だ。現在、子どもの貧困は
6人に1人といわれる。政府はその対策で民間資金を活用するため昨年10月に「子供の未来応援基金」を設立したが、昨年
12月6日の時点で集まった金額はわずか315万円である。大口の企業からの寄付が集まっていないという。しかし、これは本
来は募金のようなもので解決すべきものではなく、政策や税金の投入によって解決されるべきものではないだろうか。ここで
は憲法25条が無力化されて、国の努力義務まで放棄しているように思える。(略)
日本国憲法は「押しつけ憲法」だという人々がいる。たしかに下書きはGHQで作られたことは否定できない事実だ。しかし「仏
作って魂入れず」という言葉もある。日本国憲法という「仏」の下絵はGHQが作ったが、その表情、手の動きなど細かな意匠
は森戸ら日本人によって描かれ、朝日訴訟一審の裁判長浅沼武のような人々によって魂が込められてきた歴史があるのだ。
生存権は「施し」でもなければ「絵に描いた餅」でもなく、戦後の日本人が発案して支えた「権利」であることを改めて主張した
い。(神田憲行「日経ビジネスオンライン」2016年3月30日)
以下、省略。全文は下記をご参照ください。
http://mizukith.blog91.fc2.com/blog-entry-1851.html
東本高志@大分
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