[CML 042541] 日本共産党の「右傾化」の根源になっていると思われる党員の「共産党信仰」的理性について――阿部治平さんの『マルクスなら今の世界をどう論じるか』(聴濤弘著)評価を通して考えてみる。
higashimoto takashi
higashimoto.takashi at khaki.plala.or.jp
2016年 3月 19日 (土) 12:14:20 JST
長年、中国で外国語学校の教師をつとめ、現代中国の政治、経済の民間レベルの実情に造詣の深い阿部治平さんが「日本共産
党の元幹部は中国をどう見ているか」という記事の中で元共産党参議院議員で同党の国際部長や政策委員長を歴任した当時、
共産党有数の理論家と言われていた聴濤弘さんの新著『マルクスなら今の世界をどう論じるか』の書評を書いています。
阿部さんは聴濤さんの著書の中の発言を引きながら自身の論評を加えているのですが、私はその書評を読みながら、当時、共産
党有数の理論家といわれていた聴濤さんの理論の核心は、マルクス主義的見地に立った政治学や国際政治理論そのものという
よりも、あえて名づければ「共産党信仰」といってよいそれ自体は科学的とはいえないある種の宗教的理念(帰依心)の所産と見る
べきものではないかという思いを強くしました。
そのように見れば、共産党有数の理論家である聴濤氏でさえその理論の核心が「共産党信仰」というパッション(情動)によって支
えられているのであってみれば、ましてや知識層ではない一般党員やシンパサイザーにあっては「共産党信仰」というパッションが
同党支持の構造的な基底をなしているであろうことは見やすい道理です。
昨年末の共産党指導部の天皇臨席下の国会開会式出席問題や「当事者不在の国家間処理という点で、日韓政府が請求権問題
は『完全かつ最終的に解決した』とする協定を結んだ五十年前の躓きの亡霊」(米山リサさん・トロント大学教授)でしかないやはり
昨年末の日韓「合意」を「一定の前進」とする「志位談話」に関して共産党員や同党シンパサイザーから皆無といってよいほど批判
があがらないのは、彼らの共産党支持は「理念」によるものではなく、「共産党信仰」が同党支持の構造的な基底となっていること
を示すひとつの証左と見てよいでしょう。
共産党はもはや「理念」の政党ではなく、公明党という「宗教政党」とほぼ同質の「信仰政党」に陥っていると見た方が実質に見合っ
た評価というべきではないか。
私が聴濤氏の理論を「共産党信仰」的なものでしかないとみなすのは、以下は中国共産党の評価に関わる問題であり、日本共産
党の評価に関るものではありませんが、聴濤氏は無条件に共産党支配を善なるものと肯定し、そこから社会主義の展望を語ろう
としているからです。こういう理性のありかたは、それは「理性」と呼ぶよりも「共産党信仰」と名づけた方がよりふさわしいでしょう。
阿部治平さんによれば、聴濤氏は中国共産党の評価について次のように述べています。
聴濤氏は、中国は資本主義化した道をさらに一層深化させる方向に進むのか、今後ある時点で社会主義的転換が起こ
るのか、と自問自答している。そして「当然転機が起ることを期待する。期待の論拠は中国が1949年に革命を成功させ
て以来、さまざまな事件を繰返してきたが、66年間、社会主義の理念を放棄したことはないという点である」
このくだりにはびっくりする。「中共が支配しているから社会主義だ」というのと、「中共は社会主義の理念を放棄していな
いから、社会主義へやがて転換する」というのはよく似た理屈である。いずれの判断も、中共に労農人民の立場に立っ
た社会改革の意志と能力があるという前提があってはじめて生まれるものである。論拠というにはあまりに脆弱である。
聴濤氏は中共もまた変化したことにお気づきでない。中国の一般庶民はもちろん、権力のない何千万という下部党員も
ほとんどが内心では中共から距離を置いている現実をどうお考えだろうか。
阿部治平さんは聴濤さんの上記の認識を「中共に労農人民の立場に立った社会改革の意志と能力があるという前提があっては
じめて生まれるもの」という評価をしていますが、そのことを別の言い方で言えば「共産党信仰」ということになるでしょう。
いま、そうした聴濤さん流の理性のありかたは共産党内では常態化していると見てよいでしょう。それが共産党の今日の「右傾化」
の根源となっているというのが私の見るところであり、問題提起です。
以下、省略。全文は下記をご参照ください。
http://mizukith.blog91.fc2.com/blog-entry-1831.html
東本高志@大分
higashimoto.takashi at khaki.plala.or.jp
http://mizukith.blog91.fc2.com/
CML メーリングリストの案内