[CML 042384] 無責任な日本政府、卑屈な朝日新聞 Re: グランサコネ通信16−06  「ジョシコーセイ・オサンポ」!!

maeda at zokei.ac.jp maeda at zokei.ac.jp
2016年 3月 10日 (木) 03:15:13 JST


前田 朗です。
3月9日

> 
> グランサコネ通信16−06「ジョシコーセイ・オサンポ」!!
> http://maeda-akira.blogspot.ch/2016/03/blog-post_8.html
> 
> 


 朝日新聞3月9日記事「JKビジネス、国連勧告に日本反論 「不正確な文言」
」は次のように書いている。
http://www.asahi.com/articles/ASJ390PGRJ38UHBI03P.html

まったく呆れた話である。第1に、日本政府の無責任。第2に、日本政府の主張
を垂れ流す朝日新聞。

まず、事実経過を確認しよう(朝日新聞は基本的事実を書かないから)。

2015年10月、子ども売買・買春・ポルノ特別報告者は、日本を公式訪問し
て調査を行った。
2016年3月3日、特別報告者は日本訪問報告書を国連人権理事会に提出し、
受理された。
2016年3月8日、特別報告者は、人権理事会で報告書のプレゼンテーション
を行った。
2016年3月8日までに、日本政府は、報告書への反論を人権理事会に提出し
た。
2016年3月9日、朝日新聞は日本政府の主張を報道した。
*
第1に、朝日記事によると、日本政府は<「日本と日本の文化の実情について、
不正確で不十分な文言を含んでいる」と主張。報告書の29点の記述について、
日本政府の見解を示した。>という。

29点が何を指しているのかは知らないが、ありうることではある。人権理事会
の特別報告者――拷問特別報告者、恣意的処刑特別報告者、人種差別特別報告者、
マイノリティ特別報告者、表現の自由特別報告者、信仰の自由特別報告者、女性
に対する暴力特別報告者など多数――は世界各国を訪問調査して報告書を作成して
いる。それゆえ、当該国家・地域の歴史的経緯や文化を十分理解せずに、事実誤
認をし、異なる解釈を述べることは頻繁に起きている。

問題は、(1)特別報告者を招請した政府が十分な資料を提供したのか、(2)
受け入れに当たって、当該問題に関する専門家やNGOがきちんと対処したのか、
(3)特別報告者が国際人権法と当該国家の現実に照らしてどのように理解した
のか、(4)いかなる勧告をしたのか、ということになる。

子ども売買特別報告者の報告書がいかなる過程を経て作成され、いかなる誤解が
あり得たのかは、精査しなければならない。それをしないまま、日本政府の主張
だけを朝日新聞は記事にしている。この時点ですでにジャーナリズム失格。

もう一つ重要なのは「文化」を強調している点である。日本政府は国際人権の舞
台でしばしば「文化相対主義」を唱えるようになってきた。「西洋には西洋の文
化があり、日本には日本の文化が或る。だから、西洋の基準で判断するな」と言
うものだ。この主張を強く唱えてきたのは、日本と中国だ。半分はなるほどと思
うかもしれないが、「人権」について「文化相対主義」を取ることが許されるか
どうかは別の話である。自由、平等、人間の尊厳といった基本に関して文化相対
主義を持ち出すことの危うさを知るべきだ。「普遍性」を否定することになるか
らだ。もちろん、普遍性は理念であって現実ではないが、理念を掲げることに大
きな意味がある。

第2に、特別報告者の報告書が、いかなる関心から、いかなる事実を明らかにし、
いかなる勧告をしたのか。それが国際人権法においていかなる意味を持つのか。
こうした基本事項を見る必要があるにもかかわらず、無視される。大局を見ずに、
細部の揚げ足取りに励むのが日本政府だ。

クマラスワミ「女性に対する暴力」特別報告書の例を想起すればよくわかる。3
0数ページの報告書の基本部分に反論できず、1996年にはその報告書に賛成
を表明したにもかかわらず、2014年の朝日新聞記事訂正に便乗して、ほんの
一部の記述を殊更取り上げて、18年もたってから、クマラスワミ元報告者に報
告書の訂正を求めるという異常な挙動に出たのが日本政府である。同じことを繰
り返しているのではないか。

第3に、それでは、日本政府は何を指摘したのか。朝日記事は2点だけ紹介して
いる。いずれも大局ではなく、部分的な問題である。それだけしかないのだろう。
それとも、日本政府は大局的な観点から問題を指摘したが、朝日新聞が瑣末な点
だけを記事にしたのだろうか。そういうことはないだろう。

第4に、具体的に見てみよう。朝日記事によると、<報告書は「JKビジネスは、
それを立派なアルバイトと考えている12歳から17歳の女子中高生の間で、ま
れなことではない」と指摘した。それに対して、日本政府側は「女子中高生に狙
いを絞った調査など、客観的な情報に基づいていない」と批判し、「国際社会に
対して、女子中高生の誤ったイメージを発信してしまうため、日本はこの一文を
容認できない」とした。>という。

意味不明である。日本にJKビジネスがあること、対象が女子中高生であること、
それが「まれなことではない」こと、いずれも事実である。「日本はこの一文を
容認できない」というのは理解できない。「多くはない」と言いたいのだろうが、
特別報告書は「多い」とは言っていない。

そもそも、「女子中高生に狙いを絞った調査」などと言っているのは報告書の読
み方が間違っている。報告書は「女子中高生に狙いを絞った」のではない。「女
子中高生に狙いを絞って買春をする男性に狙いを絞った」のである。「それを容
認する社会に狙いを絞った」のである。当たり前だ。こんなこともわからずに
「反論」しているのはどうしようもない馬鹿だ。それを横流しする朝日新聞記者
は文字通り無能である。

第5に、朝日記事によると、<児童買春の被害に絡んで、報告書が「国際的圧力
が、児童虐待製造物(児童ポルノ)の撲滅に着目させる役目を果たしている」と
指摘したことには、「真実ではない。警察も児童買春事件を積極的に捜査してい
る」と反論した。>という。

これも報告書の方が正しい。日本の子ども買春・ポルノは1990年代から国際
的批判を浴びてきた。エクパット、そしてなんと国際刑事警察機構からも、日本
の子どもポルノは異様、との指摘を受けたのである。それを受けて、子ども売買・
ポルノ禁止法が制定された。まさに特別報告書が言っている通りである。

「警察も児童買春事件を積極的に捜査している」というのは嘘ではない。だが、
子ども買春事件がいっこうになくなっていないのも事実である。だから、もっと
努力せよ、工夫せよ、ということで多くの勧告が出されたのだ。日本政府は「勧
告、ありがとうございます。さらに努力します」と言って努力すればよいのだ。

朝日記事はどうしようもない。子ども買春・ポルノ問題に取り組む研究者やNG
Oの意見をなぜ聴かないのか。インターネットで調べるだけでも、特別報告者の
指摘のウラがとれる。それすらしないで、日本政府の主張を垂れ流すのはなぜか。
*
それにしても稚拙な記事だ。特別報告者の報告書をきちんと読めば、こんな記事
にはならない。研究者やNGOに取材すれば、こんな記事にはならない。ちょっ
とインターネットで歴史的経過を調べれば、こんな記事にはならない。アベコベ
政権にひれふして提灯記事を書くのが新しい朝日の伝統になりつつあるが、卑屈
な人間にまともなジャーナリズムは不可能である。





CML メーリングリストの案内