[CML 044044] 【毎日新聞「水説」:アベノミクスは経済成長をめざす。アベノミクスは参院選の争点である。  だが、グローバリゼーションの荒波がうねる中、人口減少と少子高齢化の日本で成長を求める政策は正しいか、そもそも成長できるのか−−という根本が問われることはない。】 前提をめぐる疑問=山田孝男

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2016年 7月 5日 (火) 09:52:50 JST


前提をめぐる疑問=山田孝男

毎日新聞2016年7月4日 東京朝刊
http://mainichi.jp/articles/20160704/ddm/002/070/073000c

 アベノミクスは経済成長をめざす。アベノミクスは参院選の争点である。

 だが、グローバリゼーションの荒波がうねる中、人口減少と少子高齢化の日本で成長を求める政策は正しいか、そもそも成長できるのか−−という根本が問われることはない。

 公明党は憲法改正のブレーキ役だが、アベノミクスのブレーキは踏まない。アベノミクス批判の野党も経済成長追求という前提自体を疑うことはない。

 参院選ポスター掲示板のどの片隅にも、経済成長に対する懐疑がない。

     ◇

 「全国民がグローバルな競争に立ち向かい、総活躍しなければならないなんてことないですよ」

 エコノミストの水野和夫法政大教授(62)が首をひねって苦笑いだ。

 この人、元は証券会社の調査マン。「資本主義の終焉(しゅうえん)と歴史の危機」(集英社新書、2014年刊、累計28万部)を書き、「資本主義は終わった」は流行語になった。目下、「株式会社は終わった」を主題に続編を準備中という。

 その水野によれば、

 現実に苛烈な国際競争にさらされている日本の輸出産業(自動車、電機、一般機械)の売上高は全産業の1割に満たない。

 逆から見れば、9割は内需型企業である。

 世界市場が相手の国際企業には不断の構造改革が必要に違いないが、内需型企業には、それと同質の自己改革や奮闘が求められているわけではない。

     ◇

 イギリスを欧州連合(EU)離脱へ向かわせた背景の一つとして、英紙「ガーディアン」の記者が「都市の経済成長を重視してきた政府に対する、地方住民の怒り」を挙げていた(本紙6月26日朝刊)。

 グローバル時代。経済政策ではグローバルな調整が優先され、ローカルな課題は後回しになる。

 都会の経済成長が田舎まで潤さないとすれば、地域が拠点の内需型企業はどうすればいいか。水野はこんなアイデアを語る。

 「株式の現金配当を制限して現物給付にする。たとえば鉄道会社が回数券を出し、スーパーマーケットが買い物券を出す。交換比率が決まれば地域通貨もできるでしょう。顔の見えない株主にマネーで支配される危険性を排除し、<株主>イコール<ユーザー>という地域社会を築く」

 グローバルなマネーゲームの悪弊が厳しく問われている今、「グローバリゼーションが進むほど、地域社会の安定が重要」「資本主義の先頭ランナー・日本からこそ転換を」という水野説は傾聴に値する。

     ◇

 右肩上がりの経済成長は20世紀後半以降、経済大国の変わらぬ目標であり、国内総生産(GDP)拡大こそ、日本の国力の基本だと考えられてきた。

 だが、国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、日本の人口は、10年の1億2806万人を基準にすると、60年までに3分の1が消え、2110年には当初の3分の1程度にまで縮小する。

 わが国の21世紀は、まさに人口減少の世紀(同研究所)だが、原因は複雑であり、小手先の策で克服できるとは思えない。

 参院選まで1週間。政策論戦の基本を、我々が直面している現実とどう向き合うか−−に絞ってほしいところだが、残念ながら、そうなっていない。

 せめて、GDP拡大で万事解決−−と言わんばかりの空疎な宣伝をやめてもらいたい。(敬称略)=次回は18日に掲載 		 	   		  


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