[CML 041748] 今日の放射線防護の基準とは、核・原子力開発のためにヒバクを強制する側が、それを強制される側に、ヒバクがやむをえないもので、我慢して受忍すべきものと思わせるために、科学的装いを凝らして作った社会的基準であり、原子力開発の推進策を政治的・経済的に支える行政的手段なのである。

檜原転石 hinokihara at mis.janis.or.jp
2016年 1月 29日 (金) 09:20:11 JST


檜原転石です。

国際放射線防護委員会(ICRP)が現在採用しているリスク推定は――
「1mSv(公衆の年間被ばく線量限度である)の被ばくで 10,000人中1人ががんに
なり、そのがんの半分が致死的」ですが、このリスク値は放射線影響研所(放影
研)の疫学調査を使っています。その疫学調査が広島原爆被爆者寿命調査による
から、当の広島原爆被爆者寿命調査の信頼性に関する疑問点は知っておく。

ICRPが、未だに広島・長崎の原爆被爆者調査に基づいて低線量被ばくのリスク係
数を決めているのは、時代遅れである。



▼高浜3号機がきょう再稼働 新基準適合で3基目

2016年1月29日 朝刊
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201601/CK2016012902000130.html

 関西電力は二十九日夕、高浜原発3号機(福井県高浜町)の原子炉を起動し、
再稼働させる。原子力規制委員会の新規制基準に適合した原発では九州電力川内
原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)に次いで三基目。プルトニウム・ウラン
混合酸化物(MOX)燃料を使用するプルサーマル発電では初めてとなる。

関電によると、原子炉に制御棒が規定時間内に挿入できることを確認する駆動試
験を二十九日午前に実施。問題がなければ同日午後五時ごろに原子炉を起動させ
る。三十日午前六時ごろに核分裂が安定的に持続する「臨界」に達し、二月一日
に発電・送電を開始する。


 高浜4号機は三十一日に核燃料を装填(そうてん)、二月下旬に再稼働する。
政府は原発三十キロ圏の自治体の広域避難計画を了承したものの、これに基づく
訓練は実施されておらず、実効性への懸念は強い。


 高浜3、4号機は昨年二月、規制委の審査に合格。十二月に福井県知事と高浜
町長が再稼働に同意した。二基の再稼働を禁じた仮処分決定を福井地裁が取り消
し、法的にも動かせる状態になった。


 3号機は百五十七体の燃料集合体のうち、二十四体がMOX燃料。4号機でも
MOX燃料が使われる。



▼中川保雄『〈増補〉放射線被曝の歴史 アメリカ原爆開発から福島原発事故ま
で』明石書店、2011年



頁225──

 ヒバクとその防護の歴史においておさえられるべきことは、まず第一に核兵器
の開発と核軍拡、および原子力開発とその推進策が、世界の各地でいろいろな種
類の、膨大な数にのぼるヒバクシャを生みだしてきたことである。第二に、その
犠牲の上に核・原子力開発を進めてきた当の国家や原子力産業が、その推進策に
添う放射線被曝防護策をも作り上げてきたことである。第三に、その被曝防護策
の基礎にあるのは、放射線被曝による生物・医学的影響に関する科学的評価であ
るが、それもまた、ヒバクの犠牲を強いる人たちによって、自らの利益にかなう
ようなやり方で評価されてきたということである。
 今日の放射線防護の基準とは、核・原子力開発のためにヒバクを強制する側
が、それを強制される側に、ヒバクがやむをえないもので、我慢して受忍すべき
ものと思わせるために、科学的装いを凝らして作った社会的基準であり、原子力
開発の推進策を政治的・経済的に支える行政的手段なのである。
 しかし、この歴史の実態と真実は、これまで明らかにされることはほとんどな
かった。なぜなら、「放射線防護」に関するほとんどすべての解説や説明が、ヒ
バクを強制する側の人々によってもっぱら書かれてきたからである。ヒバクを押
しつけられ、犠牲を強いられる人々の側から、ヒバク防護の歴史が語られること
はこれまでなかったのである。
 その結果、前述のような基本的性格を持つ放射線防護基準が、「国際的権威」
とされるICRPによって「科学の進歩によりなされた権威ある」国際勧告とし
て示され、それを受けた形で原子力推進国がそれぞれの国の法体系の中にその国
際勧告を採り入れる、という仕組みが築き上げられてきたのである。
 これを「科学の進歩」と呼ぶ人びとがいる。そのような人びとは、何よりも被
曝の犠牲に眼をつむる人たちである。また、ICRP勧告が核軍拡および原子力
推進策と結びついてきた事実を、そして放射線被曝の危険性を過小評価してきた
ことを、隠そうとする人たちである。歴史が示しているように、核と原子力の時
代に築かれた放射線被曝の社会体制は、ヒバクを押しつけ、ヒバクの犠牲を隠
し、ヒバクの危険性を過小に評価しておきながら、それらのいわば犯罪的行為を
「科学」の名の下に正当化するヒバクの支配体制である。それは、原発推進の支
配体制の重要な構成部分を成しているのである。

▼島薗進・宗教学とその周辺
中川保雄『放射線被曝の歴史』に学ぶ(1)
http://mys1.sakura.ne.jp/shimazono/?p=236


▼低線量内部被曝の危険を⼈々から覆い隠すICRP学説の起源
http://www.inaco.co.jp/hiroshima_2_demo/pdf/20150501.pdf

 ICRP学説は私たちの⽣活の隅々まで⽀配している

・・・恒常的な放射能汚染⾷品安全基準作りを開始しま
 す。それが、2011年4⽉21⽇に第1回会合を開催した「放射性物
 質の⾷品健康評価に関するワーキンググループ(WG)」でし
 た。WGは、同年7⽉26⽇の最終会合まで合計9回の会合を開いて
影響評価を⾏い、厚労⼤⾂に答申します。この答申に基づいて厚
 労⼤⾂は、放射性セシウムで飲料⽔10Bq /kg、⼀般⾷品で
100Bq/kgを⾻⼦とする現在の放射能汚染⾷品基準を決定しま
 す。この時、WGが全⾯的に依存したのが、ICRPの勧告でした。


・・・

フクシマ事故の避難基準よりも
 さらに苛酷な原⼦⼒災害対策指針

つまり原⼦⼒災害対策指針の
採⽤する避難基準は100mSv以上ということです。
 今チェルノブイリ事故の避難基準を5mSv以上、フクシマ事故
の時の避難基準を20mSv以上として⾒た時、原⼦⼒災害対策指
 針がいかに苛酷な避難基準を採⽤しているかがおわかりでしょ
 う。この苛酷な避難基準を勧告しているのもICRPなのです。

ICRP学説の特徴-「放射線防護の3原則」

・・・

チェルノブイリ事故で、旧ソ連政府は深刻な経済的打撃を受け
 ました。避難の基準を「5mSv 以上の被曝」としたため、避難者
の数は数⼗万⼈にのぼりました。そればかりではありません。避
 難者は医療費無料や避難先・居住先住居の提供、その他命令によ
 る避難者ばかりではなく、⾃主的避難者にも数々の援助や補償を
⾏ったため、その財政負担はきわめて重いものになりました。チェ
 ルノブイリ事故は旧ソ連邦の崩壊を早めた、といわれるゆえんで
 もあります。チェルノブイリ原発を引き継いだ独⽴ウクライナ政
 府にも、避難者への補償、医療費援助など⼀連の賠償政策はきわ
 めて重くのしかかっています。チェルノブイリ事故のような苛酷
 事故が発⽣した時、いかに政府(社会)の負担を軽減するか、この
課題はICRP によって⼤きなテーマとなりました。

といっても取りうる⼿段はそういくつもあるわけではありませ
 ん。経済的負担を軽減する(便益が⼤となる)ためには、避難者を少
なくすればいいのです。そのためには避難基準を変更すればいい
 のです。(「被曝状況を変化させるようなあらゆる決定」)
こうして、3 つの被曝状況が打ち出されました。
 本来は公衆の被曝上限は「年間1mSv」です。被曝線量が
1mSv を超えるような⼈々は避難させなければなりません。(旧ソ
連政府はチェルノブイリ事故の時、年間1mSv 超の被曝線量基準で避難させること
 はできず、5mSv 以上としました)
これを2007 年勧告で、緊急被曝状況なる新たなカテゴリーを
作り出し、20mSv から100mSv の間で、「避難基準を選びなさい」
としました。こうすると、政府や事業者の負担は⼤幅に削減され
 ます。(社会的便益が増⼤)⼀⽅で、避難基準が上がるわけですから、
 公衆の被曝線量は増⼤し、健康影響のリスクは⼤きくなります。(害
が⼤きくなる)
その場合には、「放射線被曝の状況を変化させるようなあらゆ
 る決定は、害より便益が⼤となるべきである」なので、表5 のよ
 うな、新たな被曝強制(強要)の新基準が打ちだされたわけです。

“ALARA”(アラーラ)の原則
・・・
中川保雄はその著書『放射線被曝の歴史』の中で、コスト・
 ベネフィット論は健康問題を経済問題にすりかえるものだ、と
述べていますが、このすりかえは、1977 年ICRP 勧告の中に盛
り込まれ、表4 に⾒るような『放射線防護の3 原則』が定式化し、
 現在に⾄っています。


・・・
表10 広島原爆被爆者寿命調査LSS(Life Span Study)の信頼性に関する疑問点⼀覧

調査があまりにも遅く開始
され、初期の死亡者数が失
われている。

不適切な参照集団(研究集団と参照集団とがともに降下物からの内部被曝をうけ
ている。)


⾼線量から低線量への外挿(細胞は⾼線量では死滅し、低線量で突然変異を起こ
す。)

外部被曝から
内部被曝への外挿(外部被曝は⼀様な線量を与えるが(単⼀の⾶跡)、内部被曝
では放射線源に近い細胞に⾼線量を与
えうる。)

線形しきい値無しの仮定

・・・

▼▼IPPNW情報
電離放射線の危険について
2013年10月19日ドイツ、ウルム市で開催された専門家会議概要 

http://www.fukushima-disaster.de/fileadmin/user_upload/pdf/japanisch/Health_Effects_of_Ionizing_Radiation_Japanese.pdf
・・・

・・・

5)ICRPが、未だに広島・長崎の原爆被爆者調査に基づいて低線量被ばくのリス
ク係数を決めているのは、時代遅れである。

ICRPなどの機関は今でも、広島・長崎で行なわれた研究調査を、放射線による健
康被害を予測する際の決定的な参照データとしている。原爆被爆者をベースにし
たリスク予測は、通常よりも増加した放射線量に長期にわたってさらされている
住民に対して適用することはできない。その理由は、下記の通りである:


日本の原爆被爆者が受けたのは、短時間の、貫通力のある高エネルギーのガンマ
線である。放射線 生物学の研究によると、そのような放射線は、放射性核種の
体内摂取によって起こるアルファ線や ベータ線による内部被ばく、あるいは、
通常の環境放射線範囲におさまる線量の、自然および人工 放射性同位体を原因
とする慢性的なエックス線やガンマ線による被ばくと比較して、体内組織への
損傷が少ないことが実証されている。158,159
・
原爆から放出された放射線は、非常に高線量だった。そのうな放射線はかつて、
低線量の放 射線に 比較して変異原性が高いと考えられていた。ICRPは現在で
もこの仮定が有効であるとし、彼らの発 する勧告の中では、発がんリスクの数
値を2で割っている。職業上放射線にさらされる労働者のグループを対象とした
研究は、この仮定に反する結果を出しており、もはやWHOも、リスク係数を二 分
することを正当とは見なさなくなっている。160,161
・
広島、長崎では、放射性降下物と中性子線による放射化がもたらした影響が顕著
であったにもかかわらず、放射線影響研究所(RERF)はこれらを考慮に入れな
かった。そのことによって、実際の放射線の効力は過小評価されることになっ
た。162
・
RERFの調査は1950年に始まったため、原爆投下後の最初の5年間の重要なデータ
が欠落している。このため、潜伏期間の短い催奇作用や遺伝的影響、がんの評価
が不完全であることを念頭におかな ければならない。
・
原爆投下後の広島・長崎を見舞った被災状況を生き延びることができたのは、特
に生命力の強い 人々であったと想像できる。つまりそれはひとつの選択された
グループ(適者生存)を形成したことになる。そのため、調査の対象となったグ
ループは、一般的な人口集団を代表していたとは言えない。このような選抜の働
いた結果、放射線リスクは約30%低く見積もられることになった。163
・
原爆被爆者たちの多くは、社会的に迫害されていた。そういった事情から、例え
ば子孫の結婚や社 会復帰のチャンスを逃さないように、出身地、また子孫に現
われた疾患について、彼らが正直な報告を行なわないことが度々あったと考えら
れる。164

▼[CML 031224] 放射線は老化を促進させる
http://list.jca.apc.org/public/cml/2014-May/031249.html


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