[CML 041672] 今日の言葉(2)――大道寺将司は当時26歳。死刑判決を受けてからは「峻厳な『生き様』の詩型として俳句を選んだのである」。大寒の空のはたての蒼さかな。

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2016年 1月 23日 (土) 18:22:27 JST


【ひそやかに骨の泣く音や春の霜】
1970年代に企業爆破事件を起こし、逮捕された大道寺将司は当時26歳。死刑判決を受けてからは、外部の人と会うこと
も折々の風光や草木に触れることもない極限の日々を過ごしている。そんな日々の深い思念を語る自己または他者として
選んだのが俳句であった。しおりを執筆した福島泰樹は「峻厳な『生き様』の詩型として俳句を選んだのである」と記している。

本書は2012年以来の490句を所収。乱れのない有季定型である。ときに句座をともにしているかのような錯覚を抱かせる
が、著者は野の夕焼けも川瀬の音も、26歳までに得た記憶の景を言葉で再生しつつ一句一句を紡いでいるのである。季語
は折々の心象を具現する言葉として機能し、言えぬ多くを季語に語らせているのだ。<大寒の空のはたての蒼(あお)さかな>
<秋雨の濡れし山河をひた濡らす>など定型本態の格を持ち、<寒風に歪む骨身を押しゆけり><身にしむや辻に惑ひし
ふくらはぎ>などは、肉体の得た感覚を季語の中に投じている。

26歳より前の記憶の景は年々の景として季節ごとによみがえる。<水澄みて刹那の記憶新たにす>。古い記憶に新たな記
憶が重なる。通読後の印象をひと言でいうなら、著者の後書きの「死刑囚である私が作句を喚起されるものと言えば加害の
記憶と悔悟であり、震災、原発、そして、きな臭い状況などについて、ということになるでしょうか」、そのままであるといえよう。

かつて身を賭けて一事のために行動した作者の意志はその後も不断に保持されており、<被曝せる獣らの眼に寒昴><セ
シウムの記憶薄れし神無月><薄氷(うすらい)の割れて開戦前夜かな>など、社会問題に敏感に反応する。<鬼門超す骸
(むくろ)を花の見送れり><ひそやかに骨の泣く音や春の霜>などは集中の佳句。作者は現在がんを病み病舎に暮らす。
身の苦痛軽からんことを祈るばかりである。(宇多喜代子「『残(のこん)の月』書評」(共同通信配信) 2016年1月23日)


以下、省略。全文は下記をご参照ください。
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東本高志@大分
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