[CML 041880] 今日の言葉 ――本心でそうでないと知りつつ、口先だけ「ミサイル」と言い募り、攻撃性のない物体を「迎撃」すると空騒ぎするメディアとはなにか?空騒ぎする前にメディアはウォッチ・ドッグ(権力の監視者)であれ。
higashimoto takashi
higashimoto.takashi at khaki.plala.or.jp
2016年 2月 8日 (月) 11:50:50 JST
【言葉尻りをとらえて「大本営発表」と揶揄したいのではない】
2月7日朝、北朝鮮が予告どおり「人工衛星」の打ち上げと予告して宇宙ロケットを打ち上げ、大手メディアは一斉に「北朝鮮ミサイル
発射」と大々的に速報した。どのメディアも「長距離弾道ミサイル」あるいは単に「ミサイル」と表現している。政府が「『人工衛星』と称
するミサイルの発射」と発表しているのと歩調をあわせているのだ。ついでにいえば、アメリカ国務省も「北朝鮮のミサイル発射」(D.
P.R.K. Missile Launch)と公式発表している。一方、北朝鮮国営の朝鮮中央テレビは「地球観測衛星・光明星(クァンミョンソン)4号を
打ち上げ、軌道に進入させることに完全に成功した」と発表したという。各メディアは、ほとんど鍵かっこすらつけずに「ミサイル」と決
めつけて報道している。「北朝鮮が『人工衛星』と称する」という枕詞もつけず、単に「事実上の長距離弾道ミサイル」(読売新聞同日
付朝刊1面)と書いているところもある。NHKも速報ニュースのテロップは「北朝鮮ミサイル」、ナレーションでも途中から面倒くさくなっ
たのであろう、単に「事実上の長距離弾道ミサイル」と言っていた。BBCは「長距離ロケット」(long-range rocket)と報じている。ちなみ
に、日本共産党は「事実上の弾道ミサイル」、社民党は「北朝鮮によるロケット」と表記して談話を発表している。
「ミサイル」「人工衛星」「ロケット」の違いは何か。(略)軍事問題に詳しい西恭之・静岡県立大特任助教によれば、東倉里には高さ
50メートルの発射塔が完成しているが、「全長34メートル以上のロケットを、弾道ミサイルとして配備した国はない。逆に大陸間弾道
ミサイル(ICBM)は、地下サイロや自走式発射機に容易に配備できるように、全長を短縮される傾向にある」という。そのため「北朝
鮮が東倉里から発射されたロケットは弾道ミサイルではなく、衛星打ち上げなど非軍事目的のものだという主張について、真っ向か
ら否定できない」と指摘しているのだ。2012年4月に北朝鮮が予告した「光明星3号」の打ち上げは失敗したが、同年12月には同型
の2号機打ち上げに成功。人工衛星は軌道に乗り、米政府のサイトにもきちんと「人工衛星」と登録されている。今回の発射も、中谷
元防衛相も「何らかの物体を地球周回軌道に投入した可能性」を認めるコメントをしている。(略)
なぜ、「事実上の弾道ミサイル」などと公式発表にあわせた宣伝をせず、「北朝鮮は『人工衛星』と称するロケット様の飛翔体を発射
した」とか「政府は『ミサイル』と公式発表しているが、実際は人工衛星の打ち上げロケットの可能性が高い。だが、長距離弾道ミサ
イルの技術を磨く意図があるとみられるうえ、弾道ミサイル技術を使用した発射は国連安保理決議に違反する」ともう少し丁寧に、
事実に基づいて報道できないのか。
言葉尻りをとらえて「大本営発表」と揶揄したいのではない。本心でそうでないと知りつつ、口先だけ「ミサイル」と言い募り、攻撃性の
ない物体を「迎撃」すると空騒ぎする一方で、より大事なこと、いざ本物の「弾道ミサイル」あるいは「落下物」が飛んできた場合の周
辺被害を政府は十分に想定し、必要な対策をしているのかのチェックを、メディアがきちんとやっているのか、疑われるからだ。(略)
実は、これらの指摘は2012年4月の人工衛星「光明星3号」発射予告のとき、当時の民主党政権に向けられたものだった。あれから
4年近くたち、政府、官僚、メディア、国民は少しでも進歩しただろうか。(楊井人文(日本報道検証機構代表・弁護士) 2016年2月7日)
以下、省略。全文は下記をご参照ください。
http://mizukith.blog91.fc2.com/blog-entry-1779.html
東本高志@大分
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