[CML 045906] クオータ制と政党主権

OHTA, Mitsumasa otasa at nifty.com
2016年 12月 6日 (火) 00:21:31 JST


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選挙におけるクオータ制実現には拘束名簿式比例代表制が不可欠というのは致命的な思い込みです。非拘束名簿を分割して一方に女性、他方に男性を搭載するだけで、簡単に男女ジェンダークオータは実現します。原発に賛成と反対の議員が入り混じっているなど、政党の体を成していない現在の政党の執行部が決める「政党主権拘束名簿」で主権者の候補者選択権を奪う必要などありません。

オーストラリアなどの単記移譲式比例代表制(優先順位付き投票で得票し過ぎた上位選好候補者の票を得票の足りない下位選好候補者に移譲)における政党推薦の順位付けでも、クオータはほぼ実現します。しかし、これも拘束名簿の思想です。

クオータ制は、私が提案している非拘束名簿の分割で実現できます。分割数によって男女ジェンダーだけでなく、3種以上の候補者カテゴリーが可能となります。

クオータ制と政党主権の抱き合わせ販売は、特に今日の日本において本当に不幸です。私の見るところ、上記の思い込みに合わせた後付けの理屈として政党主権を主張している方がいると推測しています。確信的に抱き合わせを狙いたい方もいるでしょうが。

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なお、私は無所属候補を差別する単純比例代表制には反対です。無所属候補も単純比例代表選挙に参入できることをもって無所属候補を差別していないということにはなりません。小選挙区制が少数政党などに配慮していないのと同様です。

政党候補が単純比例代表選挙で議席を獲得するということは、政党名簿ではなく政党候補者に対する投票だけを認める比例代表制を考えてみれば分かるように、議員1人の当選に要する当選基数(参院選であれば約100万票)を超える得票をした候補者、当選基数に満たない得票の候補者の「選挙互助」によって、通常は「候補者の一部」を当選させるというものなのです。落選した政党候補者は「選挙運動員」という意味合いを持ちます。

ところが無所属候補が単純比例代表選挙で当選するためには、1人で当選基数を超える得票をする必要があります。ある無所属候補と同じ主張をする運動員が複数いれば、当該候補が単独では当選基数に満たない得票をするような候補であっても、運動員の得票と合わせれば当選ラインに達する可能性があります。

これだけの考察で分かる通り、選挙における当選=選好度の測定というものには幅があって、選挙運動の多寡が候補者に対する選好に大きく影響するものなのです。

従って、無所属候補が必ず当選基数を超えなければ有権者からの選好を勝ち得ていないとはいえないわけで、無所属候補に「当選の幅」を許容する必要があります。

無所属候補の当選基数を引き下げるのも一案ですが、私は「当選の幅」を許容する制度として、まずは中選挙区比例代表併用制を提案しています。

中選挙区比例代表併用制を提案する
http://kaze.fm/wordpress/?p=164

国政規模の場合は中選挙区などに区割りをしますが、地方議会などでは一区でも通用するところがあるでしょう。一区の場合で中選挙区比例代表併用制の骨格を説明すれば、通常の多数代表制と同じように投票し、無所属候補が当選圏内に入れば当該無所属候補を当選させ、残りの議席を各党(候補者グループ)に得票数に基づいて比例配分するというものです。

この骨格に政党名簿投票などを少し肉付けするだけで、理想的な場合には死票をゼロにできます。なお、無所属候補を当選させた有権者による政党名簿投票は、二重の投票価値を防ぐために基本的にカウントしません。

ご意見いただけると幸いです。


太田光征


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