[CML 040340] 今日の言葉 ――「時間」はなぜ消されたのか。なにか恐るべきことがわが身に迫っているという予感。それが「内的力」となって噴きあがった。辺見庸の描く1937年の風景。

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2015年 10月 28日 (水) 11:48:40 JST


【「1★9★3★7」(辺見庸)を読む】
「なにかとてつもない内的力にかられて」、著者は、本書を書いたといいます。なにか恐るべきことが、わが身に迫っていると
いう予感、それが「内的力」となって、噴きあがったのでしょう。(略)1937年の風景もまた、日本人が忘れたがっている記憶の
ひとつといえるでしょう。著者は共同通信の北京特派員時代に、堀田善衛の『時間』(1955年刊)という小説を読みました。

主人公は中国人の知識人、陳英諦で、かれは南京に侵攻した皇軍(日本軍)によって、妻子を殺され、自分も殺されそうにな
ります。その主人公の目に、日本人はどのように映ったかが、この小説のテーマといえるでしょう。いま南京大虐殺は、忘れ
られるどころか、そんなものはなかったとされるような勢いです。最近は、大虐殺の責任は中国にあるという開き直った主張さ
え見かけるようになりました。戦争はもう遠くなったようにみえます。戦後70年という言い方は、70年戦争がなかったことを意味
するかのようです。

しかし、はたして、そうでしょうか。この70年のあいだに、世界で戦争がおこらなかった年は、1年とてなかったのではないでしょ
うか。戦後70年を「平和」ということばでくくるのは抵抗があります。実際、70歳になる著者にとっても、戦争はつい先ごろのでき
ごとでした。著者のなかでは「戦争」─「中国」─「父」がひとつながりになって思い返されていきます。(略)長江河岸で中国人の
死体が燃やされる光景を、著者は脳裡に思いえがきます。小説『時間』のなかには「積屍(せきし)」ということばが、何度かでて
くるといいます。積み重なったしかばね。それが、南京大虐殺の実際です。1937年6月には盧溝橋事件が発生しました。その翌
月、近衛内閣は「国民精神総動員実施要項」を閣議決定、「挙国一致」の精神によって、国家総力戦に突入せよとの号令を発
しました。

そして、国民は、天皇が治める国家の「皇運」に、こぞって寄与するよう求められました。最近の「一億総活躍社会」というスロー
ガンを聞くと、これとたいして変わらないと思うのは、ぼくだけでしょうか。総動員の牽引役として期待されていたのがマスコミで
す。当時はまだラジオの時代ですが、1937年10月にNHKは「国民唱歌」の放送を開始し、その第1回に「海ゆかば」を流しまし
た。「なにかただごとでない空気の重いうねりと震えがこの歌にはある」と、著者は書いています。「大君のための死を美化して、
それにひとをみちびいてゆく、あらかじめの『弔歌』」──それが「海ゆかば」なのでした。「海ゆかば」のしかばねと、虐殺による
「積屍」は同じしかばねのはずなのに、いっぽうは大君(おおきみ)の名のもとで美化され、もういっぽうは人間として扱われてい
ないのはどうしてか、と著者は問います。この問いに立ち止まってみるところから、本書ははじまっています。ゆっくり読んでいま
す。(海神日和 2015-10-27 )

      【沖縄への禁じ手】
      「敵に塩を送る」といえば相手の苦境を救う美談の意味合いだが、昨今の使われ方は往々にせちがらい。「そんなこと
      をしたら敵に塩を送ることになる」などと浅慮を戒められる。思い出すのは自民党幹事長だった石破さんだ。去年1月
      の沖縄県名護市長選挙で、基地移設推進派候補の応援に入った。そこで「500億円の名護振興基金」をぶち上げる。
      露骨な「札びら」への反感は大きかったとみえ、結果は反対派候補が勝った。人の「心」を軽く見た授業料は高くついた
      はずだが、きわどい話がまたぞろ持ち上がってきた。普天間飛行場の移設先とする辺野古周辺の3地区に、政府が振
      興費を直接交付するという。切り崩し狙いか、まつろわぬ名護市の頭越しにお金を渡すそうだ。奇手というより禁じ手の
      部類に思われる。法律の細道をすり抜ければ可能でも、懐柔めいた策など封印するのが政治の節度であり矜持でもあ
      ろう。それともこれが首相の言う「沖縄の方々の理解を得る努力」なのだろうか。普天間の代替地に名護市東海岸が浮
      上して19年がたつ。賛否は割れ、住民投票や選挙のたびに地域や職場、親兄弟にいたるまで亀裂は深まった。「傷だ
      らけさー。基地の話はもうこりごり」。老いた女性の悲嘆を、かつて取材で聞いたことがある。仮に本土のどこかに似た
      ような状況があったとして、頭越しの直接交付という異様な策を政府はとり得るだろうか。答えに想像が及ぶとき、沖縄
      で噴き出す「差別」の一語が胸を刺す。(朝日新聞「天声人語」2015年10月28日)

【山中人間話】

以下、省略。下記をご参照ください。
http://mizukith.blog91.fc2.com/blog-entry-1606.html


東本高志@大分
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