[CML 037318] IK改憲重要情報(65)

河内 謙策 kenkawauchi at nifty.com
2015年 5月 4日 (月) 13:49:17 JST


IK改憲重要情報(65)[2015年5月4日]

 私たちは、内外の改憲をめぐる動きと9条改憲反対運動についての情報を発信しま
す。(この情報を重複して受け取られた方は失礼をお許しください。転載・転送は自
由です。)
   
弁護士 市川守弘、弁護士 河内謙策

連絡先:〒170-0005東京都豊島区南大塚3-4-4-203 河内謙策法律事務所
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 (河内が、昨日、新新日米ガイドラインについての見解を「IK改憲重要情報(64)」
で発表したところ、評論家の古是三春氏が、以下のような見解を河内に送ってくださ
いました。皆様の検討材料にしていただければ幸いです。)


メモ 中国の東、南シナ海における海洋戦略と日米を軸とした対中包囲網
                 150503古是三春

■「これ以上の海上覇権拡大を許さない」−日米首脳による強烈な対中メッセージ

 4月28日からの安倍総理訪米でもたれた日米首脳会談は、日米同盟強化の方向性を
明白にしながら、両首脳それぞれの言葉で海洋覇権拡大を図る中国の野望を許さぬ決
意が示された。東・南シナ海、さらにはインド洋に至るまでの海上における安全保障
戦略において、強烈な対中メッセージが発せられた。
 共同記者会見の場で、オバマ大統領からはあらためて「尖閣諸島は日米安保条約第
5条が他の日本の地域と同様に適用される(防衛の対象である)」と言明すると共
に、「(日本を含む周辺諸国と)緊張が中国との間で生じていることを過小評価しな
い。中国は東アジアや東南アジアで力を拡大しようとしている。中国のやり方は間
違っている」と厳しい指摘を行った。安倍総理は、「一方的な現状変更の試みに、
(米国と)一致して断固反対する。いかなる紛争も国際法に基づき平和的に解決され
るべきだ」と言明。日米両首脳そろって、「実力行使」を前面に押し立てて東・南シ
ナ海での島嶼領有や海洋権益拡大を進めようとする中国をけん制し、インド洋を含む
中国が乗り出しつつある海洋での「法の支配を広める」意思を表明した。

■2004年以来、着々と進めてきた日米軸のインド洋〜南シナ海「対中包囲網」形成

 実は、米軍再編・リバランス戦略が決定された2003〜2004年、米軍主力が沖縄から
グァム、オーストラリアに後退配備することでプレゼンスの「希薄化」と共に中国が
海洋支配権拡大に打って出ることが懸念された。日米は、その対策として中国と権益
主張が対立する諸国の対処能力を向上させるための事業を実施することに合意。米軍
がベトナム、フィリピン、インドネシア、インドと共同訓練を展開することと併せ
て、日本は自衛隊による国際的な「能力構築支援事業」として同じ諸国に対して海軍
運用力の向上のための教育訓練の援助(ベトナムへのキロ級潜水艦導入に伴う教育の
提供=インドとも協力、インドネシア海軍の天候観測業務への研修支援)、資材・装
備の供与(インド、インドネシアへのUS-2飛行艇供与、フィリピンへの巡視船供与)
を実施しつつある。
 また、オーストラリアも日米同盟とリンクして中国の海洋進出に対応し、海軍の対
処能力向上に取り組むこととし、日本との新型潜水艦共同開発に踏み出そうとしてい
る。
 これらの動きにより、2020年までには南シナ海を取り巻く諸国、西太平洋やインド
洋をにらむ諸国による対中牽制システムが相当に強固なものとなる見通しになった。

■「主権維持行為」を継続する体制へ−長期にわたる対峙状況を覚悟した中国

 一方の中国は、2000年代以降、日米を軸とした西太平洋「安定化」に向けた取り組
みの進捗を察知して、駆け込み的に東・南シナ海での海洋権益拡大に向けた動きを活
発化させてきた。それは、東・南シナ海共に2012年、ピークに達した。
 尖閣諸島への執拗な公船による周辺海域遊弋と領海侵犯、航空機・無人機の領空侵
犯、南沙、西沙諸島でのベトナムやフィリピン漁船、当局との衝突と強引な岩礁奪
取、資源調査(試掘)等の強行が2012年には日常化し、それは今日まで続いている。
最近は、こうした行動を中国側が「主権維持行為」と呼び、南シナ海では支配下に置
いた岩礁や小さな島嶼の周辺を埋め立て、飛行場や簡易な停泊施設まで建設してい
る。
 今後、中国は仮に日米が「一方的な現状変更の試みを許さない」との態度を強める
としても、独自の「法理」(大陸棚自然延長論など)で自国の海洋主権を主張し「南
シナ海には公海は存在せず、米国などが我が物顔に航行したり飛び回ったりするよう
な横暴は許されない」とも国内外に表明している以上、「主権維持行為」を長期にわ
たり断固として継続していくことで、自国の立場の正当性を裏付けていかなくてはな
らない。したがって数十年のスパンで営々と主権を主張する海域で司法権を持つ公船
をパトロールさせ、航空機で上空からも哨戒を継続していく体制を構築する決意をし
たと見て間違いない。 

■偶発的な紛争発生とエスカレートを恐れる米国

 以上のように、2012年を境に日米と中国は本格的な対峙状況に入り、「緊張が日常
化」した。米国が恐れているのは、こうした対峙状況の中、何かのアクシデントで武
力行使が双方で余儀なくされることである。事態をコントロールできるかどうか、き
わめて怪しいからだ。そこで、中国との対決姿勢をとる一方で、軍当事者間の「ホッ
トライン」設置も図り、基本的に昨年から米中間ではこれが機能するようになった。
実は、日中間の軍当事者間ホットライン設置についても2006年以来、断続的に交渉さ
れてきたが、いまだ合意に至ってない。
 いずれにしろ、東・南シナ海は、日米同盟を軸に結集した諸国と海洋権益拡大を
図ってきた中国との間でかつての冷戦に等しい状況が現出している。米ソを軸とした
冷戦時代との違いは、対立する双方が経済交流面では比較にならない規模で大きく相
互依存していることである。これは日米両国とも対中国で共通した事象であるし、他
の諸国もほとんど違いはない。偶発的な紛争発生とそのエスカレートは、双方に大き
な経済交流途絶による損失を生じさせることが避けがたく、「ルールある対峙」の確
立も志向されているといえる。
 
■想定される衝突の形−中国側のシナリオ

 いずれにしろ、中国にとっては「主権維持行為」が実効性を担保するためには、さ
らなる事態の進展を想定した軍事作戦の展開体制が求められる。
 現在、東・南シナ海での「主権維持行為」継続を裏付けるためと、中国のシーレー
ン確保、海洋権益拡大(熾烈化する埋蔵資源獲得競争において、大陸棚資源の絶対確
保を最低ラインとする)を追求するために構築が図られている軍事作戦体制は、次の
通りだ。

(1)「接近阻止戦略」に基づく戦術ミサイル(弾道・巡航)の飽和発射作戦→東シ
ナ海
(2)同じく潜水艦作戦(米空母艦隊の行動牽制)→東シナ海
(3)制空権の「屋根」の下での島嶼確保継続→南シナ海
(4)弾道ミサイル潜水艦の遊弋による「報復戦力」維持→東・南シナ海
(5)無人航空機を含めた航空(飽和)攻撃→東シナ海(南西諸島)

 なお、2020年までに中国海軍は補助艦艇とあわせて3隻の実用空母を中心とした遠
征艦隊の編成を予定しているが、これらはアフリカ方面まで延びた中国シーレーンの
安定化のために運用されると筆者は見ている。パキスタンからパイプラインを中国西
部に向け陸路建設する計画もあり、その際、天然ガス・石油の輸入先であるイランか
らパキスタンまでの海域のコントロールも必須で、航空兵力をともなう中国空母艦隊
が求められる活動場所となろう。
 したがって、日米を軸とした沿岸諸国との衝突の主な舞台は沖縄〜台湾方面、南シ
ナ海で前者の場合、台湾の併合とセットされた状況下での中国の作戦展開となる。
 東シナ海では、上記(1)と(2)、(5)の同時発動でリバランス下でも前方展
開した米空海軍航空隊と海空自衛隊が中国軍と死闘を演ずることになる。本格的に戦
端が開かれたら、ミサイル飽和攻撃で迎撃ミサイルを十分に繰り出せない(原則的に
飛来するミサイル1発に迎撃ミサイル最低2発で対処するが、展開する地上発射、海
上発射の迎撃ミサイルすべてを使っても飛来が想定される数の数分の1しか破壊でき
ない)ため、自衛隊の基地、駐屯地を中心に大損害を出すことが避けられない。空自
も囮の無人機(旧式機の無線操縦も含む)にも振り回された上に、実働数でまさる中
国実戦機と消耗戦を強いられ、損失レシオこそ日米側有利でも作戦不能に近くなるま
で作戦間に機体と要員が失われる。
 日米の空のカバーが弱まると、中国側は台湾〜南西諸島の一部へ地上部隊を上陸さ
せる蓋然性が高まる。
 一方、南シナ海は潜水艦、艦艇、航空機を動員しての周辺国との消耗戦となるが、
占拠した島嶼には海軍歩兵や一部陸軍特殊部隊を配置し、犠牲を省みず死守する体制
をとることになる。基本的に、米軍以外に水陸両用作戦で島嶼奪還をできる能力のあ
る軍部隊は存在しないので、多大な犠牲を払うにしても「公海が一切ない中国の領
土、領海」である南シナ海の「主権維持活動」は継続されることになる。
 東・南シナ海ともに、日本にとっても周辺諸国にとってもシーレーン、重要な交易
路であり産業展開のインフラでもあるため、紛争の長期継続は各国とも経済マヒにつ
ながる。どんな帰趨になるにしろ、紛争の長期化は望ましくなく、中国側とどこかで
折り合いをつけなくてはならなくなる。
 こうしたシナリオを考えるとき、最終的に米軍の存在が決め手になるにしろ、世界
各地で紛争が頻発する状況の上、米国の総合的な国力も低下し対中国でも相対的な経
済的地位が低下していく中で、日本やその他の「対中同盟国」が連携した対処でどれ
くらい中国の軍事力に大きな打撃を与えられるかが、紛争の帰趨を大きく左右する。
沖縄を中心とした南西諸島は中国のミサイルが雨と降るような主戦場となるが、それ
に耐えて米軍来着時の反撃の足場を確保し続けるという厳しいシナリオの想定と準備
が、日本にはとりわけ求められる、沖縄が白旗をあげるとき、台湾の命運が尽きるこ
とになるだろう。
 その点で、ゲリラ戦対応もできる形での島嶼防衛体制の維持は、東シナ海での戦略
的安定を図る上で欠かせない課題だ。ミサイル攻撃下でも耐えて中国側地上部隊の上
陸を妨害できるのは、こうしたアナログな防衛作戦だからだ。
 なお、東・南シナ海での衝突に朝鮮半島情勢が絡む可能性は否定できないが、北朝
鮮、韓国ともに局外にとどまろうとする蓋然性も高い。韓国は下手に紛争に関与する
なら、もっとも中国から手の届きやすい位置にある上、北朝鮮の攻撃を招く恐れも強
くなる。逆に韓国が局外にとどまるなら、中国は首都に近い後背地の安全を保ちやす
いため、この方面での衝突をあえて避ける可能性もつよい。
 一方で、もし東・南シナ海方面で上記のような紛争が本格かするなら、中国の「改
革・開放」路線転換以来、経済成長の牽引車だった上海から南の地方は、物資流通
ルートも金融市場もマヒして大きな経済的打撃を受けることは明白だ。

以 上













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