[CML 037308] IK改憲重要情報(64)

河内 謙策 kenkawauchi at nifty.com
2015年 5月 3日 (日) 14:01:58 JST


IK改憲重要情報(64)[2015年5月3日]

 私たちは、内外の改憲をめぐる動きと9条改憲反対運動についての情報を発信しま
す。(この情報を重複して受け取られた方は失礼をお許しください。転載・転送は自
由です。)
   
弁護士 市川守弘、弁護士 河内謙策

連絡先:〒170-0005東京都豊島区南大塚3-4-4-203 河内謙策法律事務所
(電話03-6914-3844,FAX03-6914-3884)

 弁護士アピールを支持する市民の会
 http://2010ken.la.coocan.jp/kaiken-soshi

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(河内の体調悪化のため、「お休み」をいただいておりましたが、健康が少し回復し
ましたので、ボチボチと発信を再開させていただきたいと思います。これまでと同
様、以下は、河内の個人的見解です。宜しくお願い申し上げます。)

  新新日米ガイドラインの衝撃

 御存知のように、4月28日に「改定」された「日米防衛の協力のための指針」が発
表されました(以下、「新新日米ガイドライン」と呼びます。)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/na/st/page4_001144.html

 皆様どういう感想を持たれたでしょうか。
  私の第1印象は、「やっぱり」ということでした。
 というのは、昨年来の集団的自衛権を巡る政府・マスコミの論議が、非常に抽象
的・法律的で、何が本当に問題なのかという実態面を隠ぺいする形で進められてきた
ことに対し、これは「謀略ではないか」という疑問を私が持っていたからです。手嶋
龍一・佐藤優も、これが、中国を刺激してはいけない、ということを「理由」とした
政府の「悪智恵」だったことを認めています(手嶋龍一・佐藤優『賢者の戦略』新潮
新書、212頁)。
 だから、日米支配層の立場からすれば、いつかは集団的自衛権論議の基礎にある実
体、本当の狙い、「本音」を明らかにしておかないと、実際の「運用」で困ると考え
たはずです。それゆえ、新新日米ガイドラインが登場したのです。

 では、戦争法制、新新日米ガイドライン、4月28日に発表された「日米共同ビジョ
ン声明」の関係をどう考えるべきでしょうか。 
 私は、日本の民衆にとっては、三者は一体のものであり、集団的自衛権反対運動
は、新新日米ガイドライン反対、日米共同ビジョン声明反対をもその運動目標にする
よう努力すべきだと考えます。
 また、三者の中で、中軸的な位置をしめるのは、
新新日米ガイドラインであると考えます。新新日米ガイドラインを実効あらしめるた
めに、他の二者があると言っても過言ではないと考えるのです。元外務次官の寺崎太
郎は、「行政協定が一番重要で、そのために安保条約があり、それを成立させるため
に講和条約があった」と述べているそうです(孫崎享『戦後史の正体』146頁)。興味
ある見解です。

  新新日米ガイドラインの狙いは何か

 新新日米ガイドラインの内容がいかに恐るべきものかは、一読すれば明らかです。
 中国を意識した改定と言われますが、「中国を意識した」というのは言葉のレト
リックで、正確に言えば「米中戦争を視野においた」ということです。
 日本国際問題研究所の小谷哲男氏が、「新しいガイドラインのポイントは、自衛隊
と米軍の一体化が地理的制約なしに高まり、しかも常設される調整メカニズムによっ
て、情報と情勢認識の共有と部隊運用の調整が平時から有事まで常に行われることで
ある。このガイドラインによって、日米はより効果的に中国の挑戦に対応することが
できることになる」述べていることは、私と小谷氏は立場は異なりますが、正確な要
約と思います。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/4945


 私が一番注目するのは、新新日米ガイドラインの適用範囲が、「周辺」という枠が
取り払われ、地球的規模に拡大しているということです。
 とはいえ、新新日米ガイドラインの中心的な対象地域はアジア・太平洋です。
 米中戦争勃発の場合に、アメリカは、マラッカ海峡等を機雷封鎖し、中国を経済的
に崩壊させることを企んでいると言われています(いわゆるシーレーン防衛とは異な
ります。御注意ください。兵頭二十八『北京が太平洋の覇権を握れない理由』草思社
文庫、140頁以下)。ガイドラインの地理的制限の撤廃は、単なる地理的問題ではな
いのです。世界一といわれる日本の海上自衛隊の対潜水艦戦闘能力と機雷掃海能力
を、米中戦争に活用するためには地理的制限を撤廃する必要があるのです。

 私が次に注目するのは、「調整メカニズム」という言葉が、文書の中に何回も出て
くることです。
 「調整メカニズム」という言葉は、1997年の「新日米ガイドライン」でも用いられ
ていました。しかし、実際は、その運用が十分でないと判断されたので、今回、本腰
を入れて「調整メカニズム」の構築に取り組むようになったようです。
http://www.bousai.go.jp/oukyu/higashinihon/6/pdf/bouei.pdf
 調整メカニズムの中心的問題は、「指揮」の問題です。私がこの問題に注目するの
は、軍事というものの性質上、2か国の軍隊が実際の戦闘場面で協力するとなれば、
必ず、そこに上下の問題が出てくるからです。アメリカの軍隊と日本の軍隊が協力し
て戦争をしているときに、意見が違うときにどう処理するかを決めなければ、両方の
軍隊が壊滅します。
 では、日本の指揮官の指揮に米軍が従うことを日米ガイドラインは想定しているで
しょうか。これは絶対にNOです。つまり、アメリカの軍隊に対する日本の軍隊の協力
は、必然的にアメリカの指揮官の指揮のもとに日本の自衛隊が従うことになるので
す。これは、日本の主権にかかわる大問題なのです。

 新新日米ガイドラインは、アメリカと日本の支配者の思惑が合致してできたもので
す。
 アメリカの支配者は、現時点においては、中国と対決する姿勢を国内外に明らかに
する必要に迫られていました。中間選挙における民主党の敗北、オバマに対する批判
の増大、中東におけるイラン融和策にたいする混乱、アメリカ知識人における中国批
判の増大の中で、比較的批判が少ないアジア政策・中国政策で点数を稼ごうとしたの
だと思います。(アメリカ知識人における中国批判の増大については、「宮崎正弘の
国際ニュース・早読み」第4502号を参照してください。
http://melma.com/backnumber_45206_6187256/

 安倍政権は、衆議院選挙の「勝利」をふまえて、国民の「感情」的問題としての中
国問題で点数をかせぎ、戦争法制の国会審議を有利に進め、「悲願」である憲法改正
に進むために、アメリカに譲歩し、アメリカに協力したのだと思います(アメリカに
譲歩した内容が気になります)。
 それに、アメリカと日本の支配層は、現時点において、中国の外交攻勢に反撃をし
なければならない特別の理由を抱えていました。中国は、2014年に、2009年に積極
的膨張主義に転じて以来の外交的な「大失敗」を喫しました(中西輝政『中国外交の
大失敗』PHP新書)。そのため、習近平政権は、2015年になってからは「低姿勢」の
ポーズを強め、ベトナムなどの個別切り崩し、AIIBのキャンペーンをはって、一定の
「成功」をおさめ始めていたのです。
 したがって、新新日米ガイドラインは、けっして日本とアメリカだけを対象にした
ものではなく、アジア・太平洋地域において、中国の覇権確立の阻止、米日覇権体制
の維持・防衛・拡大を狙ったものであるということができると思います。
 アジア・太平洋地域全体を視野においた分析が重要であることを強調したいと思い
ます。日本の国内からだけ眺めたり、それにアメリカの分析をちょっと付け加える一
国主義的分析は、過去のものにしなければなりません。

        不十分な見解

 新新日米ガイドラインが明らかになった今日の時点で、従来集団的自衛権反対運動
で叫ばれてきた、
戦争をする国にするな、とか、海外での戦争をする国づくり反対、と言うスローガン
を民衆運動がかかげることは、間違いではありませんが、非常に不十分だと思いま
す。
 それは、国民の理性に訴えるのでなく、主として感情に訴えるという点で問題で
す。「戦争がいやだ」という感情は、私の評価では、両義的です。平和を求めるとい
う感情と同一ではありません。
 戦争反対という感情は、この戦争をつうじて支配層は何を狙っているのか、とか、
代替策として何があるか、とか、国民一人一人は何をすべきかという分析を揺るがせ
にしがちです。そして、運動主体に思考停止の惰性をもたらす危険があるのです。
 私は、「アジア太平洋の覇権をめざす新新ガイドライン反対」「日本はアメリカと
中国の覇権争い・戦争に関与するな」「国民主権をふみにじる新新ガイドライン反
対」「アジアの国・民衆と連帯して平和と共生のアジアをつくろう」というスローガ
ンが適切と思いますが、少なくとも「戦争をする国反対」「海外で戦争をする国づく
り反対」というスローガンは、いくつかのスローガンによって補充されなければなら
ないと思います。

 『朝日新聞』は4月30日付の社説で、「日米にとって、中国は明確な敵ではない。
経済の関係を深め、安全保障上危機を回避するため、知恵をしぼって向き合うべき相
手である。必要なのは、やはり和解の力に違いないない」と論じました。中国は敵で
はないから和解しなさい、とは、とんでもない暴言です。2009年以来の中国共産党政
権が日本にしてきたことを何と総括しているのでしょうか。『朝日新聞』は、リアリ
ズムを忘れて、イデオロギーを振りかざした「従軍」慰安婦問題の誤りを再び繰り返
そうというのでしょうか。

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                   以上

 







 



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