[CML 038178] 志位共産党委員長の外国特派員協会講演 ――「政権を取っても自衛隊は当面維持します」論の問題性に関する15年前の指摘
higashimoto takashi
higashimoto.takashi at khaki.plala.or.jp
2015年 6月 28日 (日) 21:08:57 JST
・志位共産党委員長の外国特派員協会講演 ――「政権を取っても自衛隊は当面維持します」論の問題性に関する15年前の指摘(Blog「みずき」 2015.06.28)
http://mizukith.blog91.fc2.com/blog-entry-1359.html
共産党の志位和夫委員長はこの6月23日、外国特派員協会で記者会見し、共産党が政権についても当面自衛隊は維持する考えを示しました。この点について、ビデオニュース・ドットコムが簡潔に同会見の趣旨をまとめていますので以下引用します。
「共産党の志位和夫委員長は6月23日、外国特派員協会で記者会見し、共産党が政権に就いても、当面自衛隊は維持する考えを示した。共産党の安保政策について質問を受けた志位委員長は、日米安保条約を現在のような軍事同盟から対等の有効条約に変質させていきたいとした上で、「日本を取り巻く国際環境が平和的な成熟が出来て、自衛隊はなくても日本の安全は大丈夫だという圧倒的多数の合意が熟したところで、自衛隊解消に向かうというのが私たちのプラン。自衛隊との共存の関係が一定期間続くことになる」と語り、共産党が伝統的に違憲としてきた自衛隊を当面は維持する方針を明らかにした。また、他の野党との選挙協力については、先の総選挙では沖縄の4つの選挙区で共産党を含めた野党候補の一本化が行われ、すべての選挙区で勝利を収めたこと引き合いに出した上で、「共闘関係は、条件が生まれた時には大胆に追及する。ただ、野党の間でも国政の基本問題で政策的な違いがあまりに大きい問題がたくさんある」と述べた。ただし、安保法制に反対するという一点での野党協力はあり得るとの認識を示した。安保法制については安倍首相が国会で「違法な武力行使をした国を日本が協力することはない」と説明しているが、アメリカが先制攻撃した過去の戦争について日本政府は一度も武力攻撃に反対したことがないと指摘し、日本政府にはアメリカの違法な武力攻撃を違法といえるのか、と疑問を呈した。」(「ビデオニュース・ドットコム」2015年6月23日から)
さらにビデオニュース・ドットコムは、この志位委員長の記者会見の評価を同ビデオニュース主宰者でジャーナリストの神保哲生さんと社会学者の宮台真司さんが議論する形で番組にしています。
「共産党の志位和夫委員長は6月23日の外国特派員協会の講演で、共産党が政権に就いても、直ちに自衛隊は廃止しない考えを示すなど、現実路線とも思える政策を明らかにしている。昨年12月の特派員協会での講演では、天皇制について質問されると「当面天皇制は維持する」と回答している。共産党としては、元来からの主張である天皇制の廃止や日米安保の破棄、自衛隊の廃止、非武装中立路線などは基本政策として堅持するものの、それを直ちに強行するのではなく、民主主義制度の下で民意を問いながら、自分たちが理想とする政策を徐々に実現していきたいと考えているのだという。果たして共産党は他の野党と共闘路線を張れるような政党になったのか。今後、共産党が連立与党の一翼を担うことはあり得るのか。ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が、共産党の変質の本気度を議論した。」(「ビデオニュース・ドットコム」2015年06月27日から)
神保さんと宮台さんの議論では、共産党の「自衛隊当面維持」宣言を「現実路線」と評価する一方、同党の「野党共闘」政策と同党の党内民主主義の問題については疑義を述べています。私は神保、宮台両氏の共産党の「現実路線」評価についても同党の「野党共闘」政策の評価についても異見がありますがここでは述べません(宮台氏が提起した同党の党内民主主義の問題性の論点については意見を同じくします)。
ここでは共産党の「自衛隊当面維持」宣言は正しいのかという論点に絞って、共産党から批判される存在としての『さざ波通信』編集部が執筆した「革新運動の大義を裏切った決議案」の論攷を紹介する形で言及するのみに留めます。といっても、同論攷自体がたいへん長いものですので、その中からさらに同党第22回大会決議案(2000年9月20日)における同党自衛隊政策批判(それもさらに抜粋しています)に絞って言及しておくことにします。全文は「革新運動の大義を裏切った決議案」(『さざ波通信』編集部 2000/10/26-28)をご参照ください。
今回の外国特派員協会で行った志位共産党委員長の「政権を取っても自衛隊は当面維持します」論はすでに15年前に徹底的に批判され尽くしている論だと私は思っています。では、共産党のこの15年間はなんだったのか。端的に言って、私は、この15年間は同党の「右傾化」とそれに比例する形でのこの国の「右傾化」の歴史だったと見ています。すなわち、「今の日本の右傾化は正確に言えば、左翼の右傾化」(時事解説「ディストピア」 2015-06-13)の歴史だと見てよいものだと私は思っているという
ことです。
以下、「革新運動の大義を裏切った決議案」(『さざ波通信』 2000/10/26-28)から。
・第22回大会決議案(2000年9月20日)の自衛隊政策について(抜粋)
「今回の決議案における自衛隊政策は、事実上の自衛隊容認論である。(略)建前上、共産党指導部は自衛隊を容認していないと言い張っている(引用者注:2000年時点)ので、言葉の上でも容認したらどうなるかを確定的に言うことはできないが、今回の事実上の容認論を前にしても、党員の圧倒的多数が受け入れている現状を見るならば、名目の上でも自衛隊容認を打ち出しても、「国民との溝が埋まった」とか何とか言って受け入れられる可能性の方が、はるかに大きいと言わざるをえない。」
「自衛隊の解散を綱領に掲げる共産党が選挙で多数をとり、それを目標とする民主連合政府が合法的に成立したならば、この「行政権力」および「立法権力」上の要請をも満たしていることになる。にもかかわらず、違憲の自衛隊を解散させるにあたって、「国民的な合意の成熟」をあえて強調することは、すでにこの時点で、共産党の展望する民主連合政府が立憲的秩序にもとづかないことを告白するものにほかならない。ここに、すでに、自衛隊解散の展望を遠い将来に先送りする布石は打たれていたというべきだろう。」
「共産党が自衛隊の解散に着手するのは、「国民のみなさん」が、「万が一にでも大丈夫だと」考えるようになってからである。だが、「国民のみなさん」とは、いったい国民の8割なのか、9割なのか? また、「万が一でも大
丈夫」などという想定がそもそもありうるのか? 世の中に「絶対」ということがない以上、「万が一でも大丈夫」ということは、ありえない想定である。」
「この論法で言ったなら、自衛隊解消に着手することは永久にありえないだろう。このように、共産党が言う「国民的合意の成熟」にもとづく自衛隊解消論とは、理論的に想定不可能な状況を前提にしたものであり、まさに「自衛隊の半永久的存続論」以外の何ものでもない。だからこそ、われわれは、このような段階解消論を「事実上の自衛隊容認論」だと言うのである。」
・自衛隊活用論の意味するもの(抜粋)
「自衛隊を活用するとはどういう意味を持つのだろうか? それは、今回の決議案のように、「必要にせまられた場合には、存在している自衛隊を、国民の安全のために活用することは当然である」と言ってすますことのできる性質のものだろうか? まったく否である。(略)
まず第1に、自衛隊を必要な場合に活用するためには、日常的に軍隊としての訓練が行なわれていなければならない。軍隊としての、殺人装置、暴力装置としての部隊の訓練が行なわれていないかぎり、「必要にせまられた場合」に使用することなどできない。こうして、もはや共産党は自衛隊の訓練に反対することができなくなる。
第2に、自衛隊を必要な場合に活用するためには、必要な装備と予算が保障されていなければならない。必要な装備も予算もない軍隊など、「必要にせまられた場合」に使用できないからである。
第3に、自衛隊を実際に使う際の法的ルールづくりが必要になる。そのような法的ルールなしに自衛隊を使うことは、法治国家の原則を覆すことになるからである。軍隊を実際に使用する法的ルールのことを「有事立法」という。今回の決議案では「有事立法」について何も語られていないが、それも偶然ではない。自衛隊の活用を認めたかぎりにおいて、もはや有事立法に反対する根拠はなくなった。残るのは、どのような有事立法をつくるのか、ということだけである。
第4に、「必要にせまられた場合」に「国民の安全を守るために」自衛隊を活用することを認めることは、自衛隊が国民の安全を守る軍隊であることを認めることを意味する。だが、自衛隊が本当に国民の安全を守ることのできる存在なら、なぜそのような大切な存在をわざわざ解消しなければならないのか? 憲法9条に違反するからか? 国民の安全を守ってくれ
る軍隊を解散させなければならないような条項など、どうして守る必要があるのか? それなら、国民の安全を守らない9条を廃棄して、国民の安全を守る自衛隊を合憲にすべきである、ということになるではないか。
第5に、共産党の参加する政権で自衛隊を活用して当然なら、現在の保守政権でも「国民の安全を守る」ために自衛隊を活用していいはずである。この立場はまさに、軍事的祖国防衛主義の容認を意味する。今回の決議案は、現在の政府による自衛隊活用の是非について沈黙している。だが不審船事件に対する対応だけから判断しても、もはや現政府による自衛隊活用に党指導部が原則反対ではないことは明らかである。党指導部の判断基準はただ、本当に必要な自衛隊活用なのかどうか、という一点だけである。
第6に、真っ向から憲法を否定する自衛隊でさえ「必要にせまられた場合」に活用して当然なら、それ以外のあらゆる違憲の制度や、あるいは、違憲にいたらないが反動的な制度も、「必要にせまられた場合」に活用して当然ということになる。自衛隊を活用するのは当然だが、在日米軍を活用するのはだめだ、という論理が成り立つだろうか? 自衛隊を活用するのは当然だが、周
辺事態法を活用するのはだめだという論理が成り立つだろうか? 自衛隊を活用するのは当然だが、盗聴法を活用するのはだめだという論理が成り立つだろうか?
自衛隊の活用を認めるということがいったい何を意味するのか、それは以上簡単に見てみただけでも明白である。それは、あらゆる階級的基準を蹂躙するだけでなく、革新の大義のすべて、憲法の原則のすべて、党の過去のすべてを否定し、裏切ることを意味する。」
東本高志@大分
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