[CML 037836] 「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録問題についての声明
nakata mitsunobu
mitsunobu100 at gmail.com
2015年 6月 11日 (木) 15:52:33 JST
日本製鉄元徴用工裁判を支援する会 中田です。複数のメーリングリスト・個人
に送信しています。重複受信される方申し訳ありません。
表記の声明が 「強制動員真相究明ネットワーク」と「朝鮮人強制労働被害者補
償立法をめざす日韓共同行動」との共同で出されましたのでお知らせし ます。
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「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録問題についての声明
日本政府が推薦している「明治日本の産業革命遺産」23資 産の世界遺産への
登録について、6月28日からユネスコ世界遺産委員会での審議が行われる予定で
ある。報 道で伝えられているように韓国、中国政府からは、そのなかに戦時期
に日本政府が植民地・占領地から連行した人びとの強制連行・強制労働の 現場
を含むことから、登録反対、あるいは、その事実を明示すべきことの意見表明が
なされている。 朝鮮人強制連行・強制労働の真相究明に取り組んできた立場か
ら、以下の見解 を明らかにする。
1、日本政府は過 去に誠実に向き合い、戦時期の強制連行・強制労働について
の認識を明確にすべきである。
日 本政府が登録を目指している資産のなかには、侵略戦争のための軍需生産維
持のために朝鮮人・中国人・連合軍俘虜が労働した施設が含まれて いる。そこ
での朝鮮人・中国人・連合軍俘虜の労働は、日本政府の決定に基づいて進められ
たものであり、その実態は強制動員・強制労働とし か呼びようのないものである。
韓国や中国からの指摘に正面から答えようとしない態度は、日本のなかでの歴
史修正主義の蔓延という国際社会の疑念を呼び起こしかねない。こ れまでも、
日本帝国の加害の歴史を否定、ないし軽視する認識は、日本社会の各種メディア
で流布されているだけでなく、安倍内閣の閣僚、安 倍首相と親しいとされる文
化人、安倍首相自身も行ってきた。
こ のことを考えるならば、日本政府はこれを機会に戦時期の強制連行・強制労
働についての認識を明確にすべきである。また、この問題の解決に向けての契機
とすべきであ る。
な お、事実認定をめぐっては、韓国政府の発表や韓国のマスコミ報道で伝えら
れている、世界遺産申請施設で労働していた朝鮮人の人数、そのう ちの死亡者
数は、事実誤認に基づく点がある。無用な混乱を避けるためにも、史料にあたり
正確な理解をもとに、議論し情報を発信するべきで ある。
2、日本政府は、時期区分、登録対象を見直し、強制連行・強制労働の歴 史を
ふまえて申請すべきである。
日 本政府や登録を推進している関係団体は、今回の世界遺産登録は1910年まで
の急速な産業化をめぐるものであり、戦時期の朝鮮人・中国人などの強制連行・
強制労働は無関係としてい るが、この説明は通用しない。1910年という区切り
自体がなぜ設定されたのか疑問である。それ以降にそこで起きた歴史事象を「な
かったこと」には できない。
端島炭坑(軍艦島)の建物の多くが1910年代以降の建物であり、明治期のもの
はほとんどない。端島炭坑を登録対象とするならば、1910年 は共通した区切り
の根拠にはなりえない。
松下村塾は吉田松陰の私塾であり、吉田は対外膨張の構想を説いていた。門下
生には軍拡や植民地獲得の政策を主導する政治家や軍人となった人 物がいる。
それが世界遺産にふさわしいかどうか疑問である。
こ の産業遺産登録に向けて、明治期の産業革命の遺産を観光資源として利用
し、利益を上げることがねらわれている。福岡の炭鉱の産業遺産は排 除され、
鹿児島と山口を中心に遺産群をつくり、長崎や釜石、韮山を加えて明治産業革命
遺産の物語をつくりあげた。産業革命にともなう民衆 の苦難や強制労働など加
害の歴史への視点はない。歴史を重視するのではなく、観光利益のために、官邸
主導で登録をすすめてきたのである。 申請については、時期区分、登録対象を
見直し、強制連行・強制労働などの歴史 も入れるべきである。
3. 世界遺産の登録ではユネスコの理念である平和や人権をふまえるべきであ
る。
各種遺産の保存と活用は、国家主義的な歴史観の宣伝や観光利益の目的をもっ
て行うべきものであってはなら ず、とりわけ、平和と人権尊重を理念として尊
重しているユネスコが管轄し、人類の普遍的価値についての評価をもとにしてい
る世界遺産の登 録にあたっては、平和や人権を脅かしてきた思想や歴史との関
係を考慮する必要がある。
今 回の日本政府が登録を目指している資産中に含まれる炭鉱等の労働現場で
は、朝鮮人・中国人・連合軍俘虜の強制労働に加えて、受刑者や国内 の被差別
民衆などが奴隷のように使役された歴史を持つ。
こ れらの事実に触れずに、産業化の成功物語として世界遺産に登録しようとす
ることは、世界遺産条約やユネスコの理念にそぐわない。ユネスコ は、国家主
義的な歴史観の宣伝や観光利益のためではなく、人権と平和の理念を踏まえて歴
史遺産の登録をおこなうべきである。
今 回の明治産業革命遺産の登録申請問題には、以上のような問題点がある。
「1910年以前の日本の産業化」のみが評価され、被害国の指摘に耳を閉ざしたま
まで登録がなされてはならない。ユネスコの世界遺産登録においては、このよ
うな問題点を克服すべきである。
以 下に参考資料として、明治産業革命遺産に関する現場での、朝鮮人・中国
人・連合軍俘虜の強制労働の実態に関する表をあげる。このような強 制連行・
強制労働の歴史をふまえて遺産として登録することが普遍性を示すものになるだ
ろう。
2015 年6月11日
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