[CML 037727] もうひとりの「ベ平連」の盟友の死 ――「知性」と「誠実」の人、吉川勇一さんを悼む
higashimoto takashi
higashimoto.takashi at khaki.plala.or.jp
2015年 6月 4日 (木) 20:22:12 JST
吉川勇一さんの生前、私は、吉川勇一さんのホームページをしばしば訪ねました。私と吉川さんとの関係はただそれだけのこと
です。しかし、吉川さんはずいぶん風来坊の私に付きあってくれたような気がしています。吉川さんの発する一字一句に私が魅
かれることが多かったからでしょう。吉川さんとはずいぶん対話したような気もしています。そういうことどもが私に「吉川さんはず
いぶん付き合ってくれた」という思いを抱かせるのでしょう。
それはやや難しく言えば「思想の共有」ということなのでしょうが、吉川さんは盟友小田実との思い出について弔辞で次のように
述べています。
「一九六五年、ベ平連の運動のなかで知り合ってから半世紀近く、私は、さまざまな市民運動で、あなたとともに活動し
てきました。ベ平連の運動のときには、「小田と吉川の二人の組み合わせで、この運動は進められた」というようなこと
が、よく言われました。しかし、振り返ってみて、私の代わりとなるような人は、私の周囲にいくらでもいました。私よりも
若い世代の人びとの中から、私をはるかに超えるような能力を持った人びとはつぎつぎと生まれていました。しかし、あ
なたに代われるような人はついに現われませんでした。運動に加わった知識人のなかで、あなたは稀有な存在でした。
正直言って、個々の細かい点や局面では、あなたの言うことに矛盾があったり、私に賛成できないことも少なくはありま
せんでした。よく喧嘩もしました。しかし、状況を骨太に捉えて、判断を述べ、進む大きな方向を示す、その点ではあな
たは少しもブレルことなく、常に運動の中軸にあって信頼の置ける人でした。」
「個人的な思いを述べる時間がなくなりました。私のこれまでの人生の道筋を定める上で、ベ平連運動でのあなたと鶴
見俊輔さんとのお付き合いが決定的な位置を占めております。ありがとうございました。
二〇〇七年八月四日 吉川勇一」
だから、私も、吉川さんにただ「ありがとうございました」とだけ伝えたいと思います。
以下、「今日の言葉」として。
【巨きな足跡を遺した「生涯平和運動家」吉川勇一さんを悼む】
吉川勇一さんが慢性心不全で5月28日に亡くなった。84歳だった。戦後平和運動における傑出したリーダーの1人で、まさに
「巨星墜つ」の感を禁じ得ない。根っからの大衆運動家だった。(略)ベ平連の発足集会には加わらなかったが、1965年の暮
れから、その事務局長を務めたのが吉川さんだった。当時、ベ平連に詳しい者の間では「ベ平連は小田実代表のアイデアと吉
川事務局長の官僚性でもっている」と言われたものだ。確かに、小田氏の自由奔放な発想と、吉川さんの卓越した事務能力が
ベ平連の活動を支えていたとする見方は間違いではないだろう。しかし、ベ平連の極めてユニークが活動が、すべて小田個人
の発想によると見るのは当を得ないのではないか。むしろ、小田氏を含む文化人のほか、ベ平連に結集してきた無数の市民
たちの創造的な知恵が、ベ平連のユニークな活動を生みだしたのではないか、と私は思う。そう見た場合、さまざまなアイデア
や提案をうまくまとめ、プロモートする人物が必要になる。そのような役割を果たす人物として、吉川さんはうってつけの人物だ
ったのではないか。だから、私は1970年代にある雑誌から吉川さんの人物評を頼まれた時、彼を「天性のオルガナイザー」
として紹介した。事務局長というポストにありながら、吉川さんは一段高いところから他人に号令をかけるというタイプではなか
った。むしろ、率先して自ら行動を起こすというタイプだった。つまり、「口舌の徒」でなく、あくまでも実践家であった。しかも、
「運動にとって大切なことは、組織の維持でなく、目的を達成することだ」という信念の持ち主だったから、組織の維持にきゅう
きゅうとしなかった。ベ平連も、ベトナム停戦が1973年に実現すると、翌74年に解散してしまった。(略)突然の悲報。いまわ
の際に吉川さんの脳裏を横切ったのはどんな思いだったのだろうか。おそらく、自分が生涯をかけて守り通そうとした憲法9条
の改変が目前に迫っていることへの憂慮だったのではないか。昨年6月15日に東京・池袋で開かれた「声なき声の会」の記
念集会で、吉川さんはこう発言した。「私たちは、改定された日本国憲法に反対せざるをえなくなるかもしれない。政府や自治
体の命令に従わなけれ処分されるだろう。でも、自分が正しいと思ったことをやらなければならないとしたら、市民的不服従、
非暴力直接行動という道がある」9条改定後に市民がとるべき行動にまで言及せざるを得なかったほど、吉川さんには、安倍
政権が推し進める改憲作業に対する危機感、切迫感が強かったのではないか。(岩垂弘「リベラル21」2015.06.04)
http://lib21.blog96.fc2.com/blog-entry-3199.html
東本高志@大分
higashimoto.takashi at khaki.plala.or.jp
http://mizukith.blog91.fc2.com/
CML メーリングリストの案内