[CML 039228] 今日の言葉 ――自分たちが参加あるいは共感する運動への批判(批評)者を目障りな「敵」とみなして打撃を与えることを正義だと信じ込んでいるらしき発想にはどこか恐ろしいものがある。
higashimoto takashi
higashimoto.takashi at khaki.plala.or.jp
2015年 8月 19日 (水) 16:18:32 JST
【鄭さんへの人権侵害的バッシングに加担する人たち】
6月18日、韓国人研究者の鄭玹汀さん(略)はご自身のfacebook上に、SEALDs(シールズ―自由と民主主義のための学生緊急行動)
の声明文について問題を提起する批評文を載せました。その内容は、日本の戦争責任問題や歴史認識問題についてSEALDsの声明
文の姿勢を問い、そこに垣間見られる若い世代のナショナリズムについて警鐘を鳴らしたものです。それは日本の社会運動に対し、
外国人の視点からその問題点を客観的に指摘した、きわめて妥当な内容の批評でした。しかし、鄭さんがこの批評文をfacebook上
に載せた直後から、多数のSEALDs支持者による一方的で猛烈なバッシングがツイッター等を通じて始まりました。それは鄭さんの文
章に対する単なる批判ではなく、誹謗中傷・罵倒の限りをきわめ、彼女の全人格を根本的に否定するものでした。果ては名誉毀損や
脅迫とおぼしき行為にまで至り、日本に住む外国人としての静謐な生活が実際に脅かされています。深刻な人権侵害といえるでしょう。
(略)社会正義の実現のために実践行動を行う社会運動家や、学術的真理の追究を使命とする大学研究者や、真実の究明と伝達を
本分とするジャーナリズムは、自らの言論に対して、一般人よりもはるかに厳しい社会的責任を負っています。そうした社会運動家・
研究者・ジャーナリストが、外国人研究者の問題提起に対して誠実な応答を怠り、あまつさえ人権侵害的バッシングに積極的に加担
したり助長したりするという醜悪な光景が、私たちの眼前で展開されているのです。
鄭さんへの人権侵害的バッシングに加担する人
たちは、安倍政権の戦争法案を批判するSEALDsの運動に何らかの形で参加あるいは共感しており、自分は正義の側にいると思い込
んでいるふしがあります。安倍政権の戦争法案を阻止することが、日本社会の将来の平和にとって喫緊の課題であることは言うまで
もありません。しかし、SEALDsに対し貴重な問題提起をした鄭さんを、自分たちが参加あるいは共感する運動にとって目障りな「敵」と
みなして、彼女に打撃を与えることを正義だと信じ込んでいるらしき彼らの発想には、どこか恐ろしいものがあると私は感じます。鄭さ
んへの人権侵害的バッシングに加わっている人びとが、国家権力の手先や極右勢力ではなくて、安倍政権に批判的な社会運動家・
研究者・ジャーナリストたちであるという事実に、私は驚愕させられます。自分たちが正義と考える政治目的を実現するために、善良
な市民(ましてや外国人)の人権を暴力的に蹂躙することも辞さない、といった雰囲気が日本の社会運動に広がってゆくならば、それ
はこの社会の民主主義を根元からやせ細らせ、腐食させてゆくことになるでしょう。それは、ある種のファシズムを日本社会に呼び込
むことにつながりかねません。いまも進行している鄭さんへの人権侵害事件は、こうした事態の不吉な前兆であると、私は考えます。
(大田英昭「長春だより」2015-08-19)
【戦後世代の戦争責任】
戦争の後に生まれた人というと、今この会場では私をのぞくほとんどすべての人ということになるでしょうか。戦争のあとで
生まれた人に戦争の責任があるのか、あるいは戦争犯罪を含めて責任があるのか。私は直接には、まったくないと思いま
す。自分が生まれる前のことをコントロールのしようがない。責任をとるということに関する近代法の基本的な考え方は、意
思の自由が保障されている場合の行動に限るわけです。強制されたときにとった行動に、その人に責任がないというのが、
少なくとも近代法系な考えでしょう。鉄砲を突き付けられて「隣の家の鶏を盗め」と言われて、隣の鶏を盗んでも、それは盗
んだ人の責任ではい。なぜなら盗まなければ射殺されるかもしれないから。
生まれる前に何が起ころうと、それはコントロ
ールできない。自由意思、選択の範囲はないのです。したがって、戦後に生まれたひと個人には、戦争中のあらゆることに
対して責任はないと思います。しかし、間接の責任はあると思う。戦争と戦争犯罪を生み出したところの諸々の条件の中で、
社会的、経済的、文化的条件の一部は現在も存続している。その存続しているものにたいしては責任がある。もちろんそ
れに対しては、われわれの年齢のものにも責任がありますが、われわれだけではなく、その後に生まれた人たちにも責任
はあるんです。なぜならそれは現在の問題だから。(「加藤周一『戦後世代の戦争責任』」)
【山中人間話】
以下、省略。下記をご参照ください。
http://mizukith.blog91.fc2.com/blog-entry-1472.html
東本高志@大分
higashimoto.takashi at khaki.plala.or.jp
http://mizukith.blog91.fc2.com/
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