[CML 034167] エレンディール 剣の聖女 第三章(上)夜を裂く炎

林田力 info at hayariki.net
2014年 9月 28日 (日) 19:50:23 JST


華宮ゆう士『エレンディール 剣の聖女 第三章(上)夜を裂く炎』(セルバ出版、2014年)はファンタジー作品『エレンディール 剣の聖女』の第3巻である。舞台は戦争が続く中世ヨーロッパ風の世界である。主人公の村娘エモーヌは戦乱によって家も家族も失うが、不思議な剣を手にしたことで戦い続ける。

エモーヌの戦う目的は戦争を終わらせるためであり、それは前巻の第二章で達成できた。しかし、エモーヌは意に反して殺戮を続けることになる。この巻では初めて剣の論理が明らかになる。その主張は剣の側に立てば十分に納得できるものであった。むしろ人間の側の身勝手さを認識させる。

 剣のしていることは人間から見れば悪である。しかし、それを悪と糾弾することは人間側の理屈に過ぎない。価値観の多元性を理解せず、自己の正義が貫かれることに安易な確信を抱き、それが通らなければ他人を怒鳴り付ける教条主義者はダメである。

 強力な道具を手に入れてチート的な強さを得たが、道具を使いこなせずに暴走させて自滅するという展開は物語として珍しいものではない。それは『ドラえもん』にも見られる。本書は道具の側の論理が語られるところに新鮮さがある。

 話の本筋はエモーヌが自分を取り戻せるかである。物語の冒頭とオーバーラップする展開が見られた。相違点はエモーヌが他人を守るために戦ったことである。結末は新たな展開になり、予想がつかない。本書は第三章の上となっており、次は中になっている。まだまだ物語は続きそうである。
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■ 林田力 Hayashida Riki 
■■ 『東急不動産だまし売り裁判』著者
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