[CML 033858] 【東洋経済オンライン】「沖縄の民意」は、なぜ無視され続けるのか 知事選に向けヒートアップする本土・沖縄関係

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2014年 9月 14日 (日) 18:49:57 JST


【東洋経済オンライン】「沖縄の民意」は、なぜ無視され続けるのか
知事選に向けヒートアップする本土・沖縄関係
http://toyokeizai.net/articles/-/47666

屋良 朝博 :ジャーナリスト 2014年09月11日

「名護だけが沖縄ではない」と言い切った仲井真弘多・沖縄県知事(左)。11月の知事選で安倍政権は仲井真知事再選に向け、あらゆる手を打ってきそうだ(ロイター/アフロ)

7日の名護市議会選挙で、米軍普天間飛行場の同市辺野古移設に反対する市議が過半数を占めた。これで2010年の名護市長選と市議選、今年の市長選と市議選と、反対派が「4対0」で勝ったことになる。しかし政府はこの民意に逆らい、美しい海を埋め立て米軍に提供する方針を変えない。沖縄情勢は11月の知事選に向けてますます混沌としていく。

反対派は余勢を駆って、11月の沖縄県知事選に臨みたいところだ。名護市議会(定数27議席)選では、公明市議2人を含む反対派16人が当選した。実は公明党沖縄県本部は普天間問題で「県外移設」の主張を変えていない。公明党沖縄県本部の金城勉幹事長は「名護(市政)では中立の立場だが、争点となった辺野古問題では反対の世論が明確となった」と語っている。選挙公約をあっさり反古にした自民党沖縄県連とは一線を画していることが、知事選をめぐる大きな注目点となる。

沖縄県知事「名護だけが沖縄でない」

仲井真弘多知事は名護市議選の結果について、「(同日行われた)他市町村議会の選挙をご覧になればわかるとおり、私の政策に賛成する方向が多いと思う。名護だけが沖縄ではない」と言い切った。名護以外の4市議選では仲井真知事に同調する市長側の候補者が過半数を占めたが、『琉球新報』のアンケートでは全当選者の過半数が反対を表明している。情勢認識の誤りだけでなく、これは敵失だ。「沖縄だけが日本でない」という言葉にあるように、「安保・抑止力」を紋所とする政府と同じ志向を、仲井真知事も県内の一地域に向けている。

辺野古受け入れを決めた後の知事の言動には危うさがつきまとう。例えば先月、地元の反対を押し切って政府が辺野古の埋め立てに着手したとき、記者からコメントを求められても、知事は「工事の進捗でいちいちコメントしない。防衛局に聞いてくれ」と他人事を装った。

この“他人事”がまさしく、沖縄問題の元凶であることを知事は認識していないのだろうか。日米同盟は大事、米軍駐留も必要だが、基地は沖縄でね、という無責任な日本の安保政策は、多くの無関心によって成立している。多くの関心事ではない基地問題について、日本外交は米国と交渉するつもりはさらさらない。そう思わせるエピソードがあちこちで聞こえてくる。

つい先日、泡盛を飲みながら安全保障が専門の大学教授から聞いた話に、思わず筆者はのけぞってしまった。ある日、国際政治学会の大御所に呼ばれた会合に出てみると、テレビなどでもお馴染みの外務省キャリア外交官がいた。日米外交交渉の実態を聞き取りしよう、という会合だった。

「日本の対米交渉はどうですか」。大御所が尋ねた。すると、米軍普天間返還をめぐる交渉にも深く関わったキャリア外交官はこう答えたそうだ。「米政府が考えていることを言い当てることです」。

対米外交での無作為が沖縄問題を複雑にする

その場がしばらく沈黙に包まれた。同席した研究者らは言葉を失う。会合を主催した大御所もしばし所作を失う。「君たちに議論はないのかね」と大御所が苛立つ。キャリア外交官は「米側の意向に沿って大筋決まります」と淡々と語ったらしい。

いやはや、こんなものだろうか。信じがたいが、これが日米交渉の実態だとすると、選挙でいくら民意を示しても基地問題は変わらない。

確認するつもりで、別の国際政治研究者にこのエピソードを話してみた。てっきり、のけぞり、怒り、落胆すると思いきや、反応はいたってクールだ。「いまさら……、その大御所もナイーブな人だね」。どうやら対米外交は交渉しないことらしい。

実は数年前、米外交官からも似たような話を聞いた。筆者が沖縄基地問題の解決策として持論にしている「海兵隊花道撤退論」を説明したときだった。

沖縄は海兵隊の各種部隊と長崎県佐世保配備の艦船の「落ち合い場所」となっている。海兵隊はアジア太平洋全域を活動エリアとしているため、「落ち合い場所」を沖縄に限定する必然性はない。日本政府が落ち合い場所を本土に移すか、あるいは海外に移転させる諸条件を整備してさえあげれば、海兵隊は現在の仕事を続けながら沖縄から移転することは十分に可能である。諸条件を整備してあげるのは政治の仕事であり、軍事ではない。

「日本側には建設的な提案がない」

米外交官は合理的だと歓迎してくれた。筆者は「なぜフレッシュな発想が日米間に生まれないのか」と問うた。米外交官は「安保政策で日本側の議論はゼロか100かで、建設的な提案がない。あと30年ほど待たなければならないでしょう」と言った。

近著「虚像の抑止力」(旬報社、2014年8月)でジョージワシントン大学のマイク・モチヅキ教授が沖縄基地問題をめぐる日本の安保論議を検証している。国際政治で著名な森本敏元防衛大臣、川上高司拓殖大教授、元外交官の岡本行夫氏、元陸将の山口昇氏の論文を取り上げ、沖縄基地の主要部隊である海兵隊分析の弱さを指摘している。政府の沖縄基地政策をサポートする安保専門家の論拠は実にあいまいであることがよくわかる検証となっている。海兵隊を含めて何でもありがたがって米国の意向に背かないようにするメンタリティーは、実は米政府に対する不信感の裏返しでもある。モチヅキ教授はそう分析している。筆者も同著で海兵隊花道撤退論を寄稿した。

以上を並べてみると、沖縄の民意は繰り返し反対を明示するが、日本の政治はそれを受け止めきれない。在沖米軍基地の7割を占める海兵隊は、実は沖縄に駐留する絶対的理由がないにもかかわらず、政府も安保専門家もこぞって「虚構の抑止力」を作り上げる。安保問題で日本外交力はお寒いばかりで、日本は沖縄を差し出すしか選択肢を見出せない。沖縄の一部保守政治はそれに同化する事大主義に陥る。

もはや、それがみえみえだから地元の反対は強まるばかりだ。米政府が米軍受入国に求める政治的持続可能性はもはや画餅となる。新たな発想が必要なのだが、その知恵がない。どうも日本はかつて同じような思考停止で道を踏み外したが、その癖は直っていないようだ。

沖縄の保守勢力は普天間問題で分裂した。自民党県連幹事長を務めたこともある那覇市の翁長雄志市長(63)は10日の市議会9月定例会で、県知事選への出馬を表明した。市議会の元自民市議らを中心に共産、社民なども翁長市長に相乗りする。出馬表明の中で翁長市長は、「イデオロギーでなく、アイデンティティーに基づくオール沖縄で、責任ある行動が求められている。今後100年置かれる基地を造らせてはならない。これ以上の基地の押し付けは限界だ。辺野古への移設は事実上不可能だ」と語った。

分裂した沖縄の保守勢力

翁長市長の出馬について、菅義偉官房長官は同日午前の記者会見で、「昨年暮れに仲井真弘多知事が埋め立てを承認し粛々と工事を進めている。この問題はもう過去の問題だ」と言い切った。政府は普天間問題の争点外しに躍起だ。県民の辺野古反対は各種世論調査で明らかだが、政府は新知事が誰であっても普天間問題はもはや“解決済み”と言い張る構えのようだ。知恵のない政府にとって沖縄の民意は邪魔なものでしかない。

日本の病理が見える沖縄問題。11月の沖縄県知事選で安倍政権は普天間の辺野古移設に賛成する仲井間知事を再選させるためあらゆる手を打ってくるだろう。このまま日本の病を進行させるか、民意で少しでも食い止められるか。大一番に向けた激しい攻防が、南の島で過熱している。 		 	   		  


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