[CML 034656] Re: 西崎文子東大教授(政治学)の朝日新聞インタビュー記事の認識と発言について ――ネットでの匿名の脅迫や名誉毀損も「対面状況で顔を隠して同じ言葉を発した場合と同じ罪に問われる」というルールを徹底させる必要がある

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2014年 10月 25日 (土) 22:01:21 JST


前田 朗です。
10月25日

東本さん

ご苦労さまです。また、引用ありがとうございます。

西崎発言はインタヴュー発言とのことで、どこまで本人の主張を正確に表現して
いるかはわかりませんが、本人が確認したうえで公表されているはずですから、
批判されてもやむを得ません。

たしかに粗雑な主張ですね。誹謗中傷書き込みが名誉毀損や侮辱に当たるか否か
は、まじめに書いたか不真面目に書いたかで変わりがありません。東本さんの言
う通りです。むしろ、まじめに書いた侮辱こそ重大な被害結果を引き起こします。

もっとも、「殺人予告などの強迫」(正しくは脅迫)はまさに脅迫罪に当たる場
合ですから、西崎発言が念頭に置いていないことかもしれません。相手の名誉を
傷つける名誉毀損・侮辱罪の実行行為と、「殺す」などの害悪の告知を要件とす
る脅迫罪の実行行為とは、別物です。西崎発言が念頭に置いているのは名誉毀損
類型であって、さすがに脅迫類型であれば、西崎さんも東本さんと同じ判断をす
るのではないかと思います。

多くの研究者はヘイト・スピーチを一つの行為、一つの犯罪として理解していま
す。そのため、名誉毀損型だけを念頭に置いて議論しています。ここに誤解があ
るのです。

ちなみに、私はいくつかの論文で、ヘイト・スピーチの行為の類型論を提案して
きました。まだ、十分整理できていないのですが、現在は7つに分類しています。

1)	差別表明型
2)	歴史否定型(「アウシュヴィツの嘘」のような例)
3)	名誉毀損型
4)	脅迫型
5)	迫害型
6)	ジェノサイド煽動型−−以上は「暴力を伴わないヘイト・スピーチ」
7)	暴力付随型−−「暴力を伴うヘイト・クライム/ヘイト・スピーチ」

従来、憲法学者や弁護士の議論は、このうち1)や3)だけを取り上げて、あた
かもそれがヘイト・スピーチの全てであるかのごとく扱ってきました。

4)〜6)を抜きに議論してもヘイト・スピーチの本質を理解できません。しか
も、「複合犯罪」として理解する必要もあります。複合性を正しく把握したうえ
で、東本さんが言う「暴力」の側面をいかに理論化するかが現在の課題です。

安田浩一さんは、「ヘイト・スピーチは言葉の暴力ではない。暴力そのものであ
る」と言っています。現場の体験に基づいた正しい議論です。

私の主張に引きつけて言えば、「ヘイト・スピーチは言葉でもあり、言葉の暴力
でもあり、暴力そのものの場合もある」となります。

ではまた。






----- Original Message -----
> 東大の政治学教授の西崎文子さんが(西崎さんはTBSの『サンデーモーニン
グ』にコメンテーターとして出演している有名人
> でもあるらしいのですが、私はテレビは見ませんので知りませんでした。ちな
みに私は「主義」でテレビを見ないわけではあり
> ません。単に「面白くない」から見ないというだけのことです)昨日の毎日新
聞のインタビュー記事で「議論の作法」に関するイ
> ンタビューを受けて次のように述べています。「議論の作法」というテーマは
おそらく同教授をインタビューした同紙客員編集
> 委員の近藤勝重記者が考えたものでしょう。同インタビュー記事の「まとめ」
役の小国綾子記者はインタビュー記事の前振り
> として次のように書いています。「世の中に極端な物言いが増え、不寛容な空
気が漂っている。異なる意見を唱える相手を全
> 否定し「売国奴」「国賊」などの言葉を投げつける。今求められる「議論の作
法」について、政治学者・西崎文子東大教授(55)
> に近藤勝重・客員編集委員が聞いた」。
> http://mainichi.jp/shimen/news/20141024dde012040003000c.html
> 
> さて、西崎文子教授のインタビュー発言は次のようなもの。
> 
> 「一つは、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)での、「非国
民」「反日」などと相手を全否定する物言いが目立ちます。
> ツイッターでは、わずか140字で発信するだけなのですが、周囲の反響や評
価を感じられる。彼らはある意味、真面目に書き
> 込んでいるので、規制できる類いのものではありません。こういう行為が人を
傷つけ、不寛容を助長すると気付かせるような社
> 会を模索していくほかありません。しかし、ヘイトスピーチは次元が違います。
実際に人が街に出て、行動を起こしている。極め
> て暴力的な要素をはらんでいます。言論の自由を守りつつも、取り締まりの対
象にすべきだと思います。一方、雑誌メディアが
> 「売国奴」などの言葉を使うのは別問題です。朝日新聞に対する「売国奴」な
どの過激な批判は、部数増、売り上げ増を狙って
> いるのでしょうが、メディアがこういう風潮に加担するというのは、自分で自
分の首を絞めているのではないか」。
> 
> この西崎教授の認識と発言は私は正しくないと思います。以下、その理由を述
べます。 
> 
> 
> 以下、省略。全文は下記をご参照ください。
> http://mizukith.blog91.fc2.com/blog-entry-1043.html
> 
> 
> 
> 東本高志@大分
> higashimoto.takashi at khaki.plala.or.jp
> http://mizukith.blog91.fc2.com/ 
> 
> 




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