[CML 034437] 『鷗外の怪談』(作・演出:永井愛、東京芸術劇場)、お勧め!

masuda miyako masuda_miyako1 at hotmail.com
2014年 10月 12日 (日) 17:13:18 JST


皆様

 こんにちは。増田です。これはBCCでお知らせしています。重複・長文、ご容赦を!

 

 現在、週1回近現代史ゼミを受け持っている予備校の教え子を誘って、昨日、件名演劇を観てきました。内容に大逆事件が入っていると聞いたため、授業でこの事件を考えたばかりだったので「これは、ちょうどいい!」と思ったのでした。

 

 お芝居というもの、希には期待はずれ(笑)もありますが、さっすが、永井愛さんの作・演出の二兎社のお芝居、もう、期待以上でした!

 

 観る前は『怪談』とあるからには、秋水や菅野スガさんの亡霊(笑)でも出てくるのかしら? と思ったんですけど、さにあらず…

 

 たいへん、重層的なお芝居でした。幕開けは妻のしげさんと姑の峰さんとの壮絶なバトルで…でも、とっても、可笑しいやり取り…夫を愛するゆえ、息子を愛するゆえの譲れない、でも、なんだか、ずれている二人。そして、どちらの女性も、とってもとってもチャーミング!

 

 あとの登場人物は、鷗外=林太郎、スバル編集発行人で弁護士の平出修、三田文学の編集長の永井荷風、鷗外の親友の賀古鶴所(かこつるど)に、作者が創作した新宮出身の新米女中のスエの、たった7人です。

 

 でも、大逆事件の被告について平出が話す中で秋水やドクトル大石、高木顕明、スガさんたちが、まるで、舞台に存在するかのように見事に浮き出てくるのです。大日本帝国が「国ぐるみ」で仕掛けた冤罪、権力犯罪の、あまりの惨さとともに…

 

 で、大逆事件とくれば仕掛け人の山縣有朋も浮かび上がります…鷗外の出世の保証人(?)であり、大逆事件について、鷗外も入れて相談会(?)も持っていました。鷗外は、それは「思想への弾圧」であることを見抜きながら、明確に山形のやり方に反対しなかった…できなかった(?)ことへの良心の呵責に苦しみます。

 

 そして、また、ドイツ留学中に愛し合ったエリスを裏切ったこととも重なり…懊悩する鷗外。そこに、どこからともなく聞こえてくる拷問に苦しむ声と賛美歌…鷗外が10歳まで(だったと思う)育った津和野藩は、明治維新期、捕まった長崎浦上の隠れキリシタンを改宗させるため、三尺牢に入れるなどひどい拷問を行い多数の人が乙女峠で殉教しました。

 

 『怪談』というのは、これでしたか…それは、どんな弾圧にも屈服しない「信仰」者、「思想」者の崇高さも示していて…ただ、フツーの人間は弱いので、屈したとしても責められませんよね…

 

 鷗外は軍医・森林太郎としては山縣に明確な反対はできなかったけれど、作家・森鴎外として『沈黙の塔』(ネットの青空文庫で読めます

http://www.aozora.gr.jp/cards/000129/files/3336_23054.html)

を書き、「危険な書物を読む奴を殺すのです。」と秋水たちを被害者として描きます。

 

 新宮出身の新米女中は挙動不審な動きをしますが…これまた、可笑しみがあり…彼女は新宮で、貧しい人からは医療費を取らないドクトル大石のお世話になったのでした。でも、処刑後は「前世が悪かったんです。今度生まれる時は…」と諦めます。

 

 このあたり、「日本人」的(?)…鷗外と永井荷風は、ドレフュス事件のゾラとそれを支持したフランス民衆の話をします。「日本人」についても、考えさせられます。

 

 とにかく、登場人物がみんな、みんな、とっても個性的で、鷗外も含め、すっごく可愛く(笑)、笑いと涙のうちに、本当にいろいろと考えさせられるのです。

 

 大逆事件の秘密主義、非公開、メディアへの脅し、そして、真実が隠蔽され、権力者の思うがままに無実の人が絞め殺されていく恐怖…安倍晋三内閣の下で秘密保護法が作られていく21世紀の日本社会は...

 

 教え子たちも「とっても良かったです!」と言ってくれたので、本当に誘い甲斐がありました。

 

 池袋の芸術劇場では26日までやっています。愛知県、兵庫県、栃木県、滋賀県、山形県、新潟県、岩手県、宮城県、島根県、長野県、神奈川県、北海道でも公演があります。

http://www.nitosha.net/ougai/ticket.html

 

 高校生以下は1000円! U25は3000円です。ぜひぜひ、若い人たちを誘って観に行かれたら、どうでしょうか?

 

皆様、私は二兎社から一円もいただいてませんからね(笑)…念のため。

  		 	   		  


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