[CML 034798] オランダ国王の天皇主催の宮中晩餐会でのあいさつ報道をめぐって(2) ――パロディとしてのオランダ国王の宮中晩餐会「闖入者」論

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2014年 11月 3日 (月) 23:48:47 JST


辺見庸の「日録1-6」に晩餐会、あるいは宮中晩餐会について以下のような文章があります。
http://yo-hemmi.net/article/407888815.html

     晩餐会にちん入してはならない。そういうことになっている。だいいち、宮中ではちん入のしようがない。ちん入とは、
     おもえば、おもしろい動作であり身ぶりだ。バルザックにもユゴーにもシェークスピアにも、ちん入シーンはかならず
     といってよいほど登場する。「ビリディアナ」だってそうだ。物語はだからこそ成立しえたのだ。かつて、ちん入は、し
     ばしばではないにせよ、ときにはありえたできごとであった。入ってはならないとされるある(場ちがいな)場所に、こ
     とわりなしに、とつぜん入りこむこと。狼藉。当惑。狼狽。顰蹙。ざわめき。ちん入者の演説がはじまる。唐突な。見
     せ場だ。バルザック、ユゴー、シェークスピアはだからこそ出色たりえた。ちん入者が剣を抜き、テーブルに飛びの
     っていう。淑女、紳士のみなさま、ひとことお聴きいただきたい。この国の無残、貧困、とほうもない格差をよそに、
     あなたがたはいままさに貧者らの血税によりあがなわれた贅沢きわまる酒食を口にしている。淑女、紳士のみなさ
     ま、あなたがたのなかには、あろうことか、悪政の主導者首相Aもすまし顔でメインテーブルにおわせられる。立て、
     にっくきA。わしがここで成敗してくれん!……といった物語は消滅した。すなわち、そうした「抗う身ぶり」と発想が
     失われてしまったのだ。みずからの身ぶりをうしなった時代は、どうじにまた、その身ぶりにとりつかれてもいる、と
     いう。バルザックもユゴーもシェークスピアもない宮中晩餐会は、ただたいくつなだけである。たんなる税金ドロボー。
     宮中晩餐会にはちん入者がいなければおもしろくない。わたしたちは「抗う身ぶり」におどろいてみたいのだ。
                                                           「日録1-6」2014/10/30)

辺見はオランダ国王夫妻来日歓迎の宮中晩餐会の感想を書くにあたって、いまという時代、「(闖入者の)物語は消滅した。
そうした『抗う身ぶり』と発想が失われてしまった」と慨嘆していますが、私は、今回の宮中晩餐会におけるオランダ国王の
口舌(答礼スピーチ)の裡には辺見が「失せた」と嘆くバルザックやユゴーやシェークスピアの「抗う身ぶり」が王統の伝統ゆ
えの「身ぶり」としてもしかしたら保たれているのかもしれない。国王が“humiliation”(凌辱)と発したときその「身ぶり」は発
せられた言葉の裡の裡に襞のように張りついていただろう。私はそう思いたい。張りついていておかしくはない。

国王のそのときの言葉。

Zo vergeten wij ook niet - zo kunnen wij niet vergeten - de ervaringen van 
onze burgers en militairen in de Tweede
Wereldoorlog. De wonden die in die jaren zijn geslagen, blijven het leven 
van velen beheersen. Het verdriet om de
slachtoffers blijft schrijnen. De herinneringen aan 
gevangenschap,dwangarbeid en vernedering tekenen het leven
van velen tot op deze dag.

So we will not forget - cannot forget - the experiences of Dutch civilians 
and soldiers in the Second World War. The
wounds inflicted in those years continue to overshadow many people's lives. 
Grief for the victims endures to this
day. Memories of imprisonment, forced labour and humiliation have left scars 
on the lives of many.(英訳)

それゆえに、私たちは第二次大戦中におけるオランダの市民と兵士の経験を忘れないし、忘れることはできない。そのと
きに負わされた傷の痛みは多くの人々の生に暗い影を投げかけてきた。犠牲者に対する嘆きのうめき声は今日までも続
いている。牢獄と強制労働と陵辱humiliationの記憶は多くの人々の生活にいくつもの傷跡を残している。(保立道久訳)

附:
もちろん、国王のスピーチは紳士的なもので、答礼スピーチとして一点の非もありません。あらかじめ準備され、そのスピ
ーチの要旨も天皇の下にもあらかじめ届けられていたはずですから、天皇も「長きにわたって培われた両国間の友好関
係が、先の戦争によって損なわれたことは、誠に不幸なことであり、私どもはこれを記憶から消し去ることなく、これから
の2国間の親善にさらなる心を尽くしていきたいと願っています」と前もって歓迎のスピーチの中で述べることもできたの
でしょう。
http://www.sankei.com/life/news/141029/lif1410290051-n1.html


東本高志@大分
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