[CML 031440] ジェイムズ・ペトラス「キエフ一揆:反抗する労働者たちが東部で権力を握る」2

Yasuaki Matsumoto y_matsu29 at ybb.ne.jp
2014年 5月 20日 (火) 18:40:01 JST


(2)
*
ウクライナ一揆:帝国主義拡張 の集積

*  アメリカとEUは世界のどこででも、効果のあるあらゆる手段を用いて独立
した国民主義的な非同盟の政府を破壊し、それらを帝国主義の取り 巻き国家に
変えよ うとしている。たとえば、現在のNATO‐武装傭兵によるシリア侵略
は、膨大な数のシリア国民に対する血まみれの結果を顧みることなく、 国民主
義的で世俗 的なアサド政権を放逐して親NATO従属国家を確立する方向に向
けられている。シリアに対する攻撃は様々な目的にかなうものだ。それは、 ロ
シアとの同盟と 地中海の海軍基地を消し去ること、パレスチナへの支援とイス
ラエルへの反対を破壊すること、イスラム共和国イランとレバノンの強力な武装
勢力ヘズボラー党 を包囲しシリアの地に新たな軍事基地を設立することである。

 NATOによるウクライナの強奪は、ロシアに対しては「下から上に」、中東
に対しては「上から下に」届いてその莫大な石油の富の支配権 を統合する複合
的な効果を持っている。

  ロシアの同盟国あるいは貿易相手国に対する最近のNATOの戦争はこの予
測を確信的なものにさせる。リビアでは、独立した非同盟のカダ フィ政権が、
モロッ コ、エジプト、チュニジアなどの卑屈な西側取り巻き諸国とは確固とし
た対称をなして立ちはだかっていた。そのカダフィは放逐され、リビア は巨大
なNATO の空爆を通して破壊された。エジプトの大規模な反ムバラク民衆反乱
と民主主義の勃興は軍事クーデターによって覆され、その結果として残虐 な軍
事独裁者の下 でアメリカ‐イスラエル‐EUの周囲を巡る国に舞い戻った。
NATO追随者とイスラエルによるガザのハマス、レバノンのヘズボラーに対す
る武装侵略は、イ ランに対するアメリカ‐EUの経済制裁とともに、全てがロシ
アの潜在的な同盟者あるいは貿易相手に対して方向づけられている。

 アメリカ合衆国は、東ヨーロッパでの「選挙と自由市場化」を通してのロシア
包囲から始まり、ウクライナ、カフカス諸国、中東そしてアジ アでの軍事力と
殺人部隊とテロと経済制裁の使用にいたるまでに、激しく行動している。

*ロシアでの政権転換:世界的な 強国から従属国家へ 
*
 ワシントンの戦略的目標は外部世界からロシアを孤立させその軍事能力を破壊
し経済を突き崩すことであり、それはロシア内部にいる NATOの政治的・経
済的な協力者たちを強化してさらなる分割に導き、従属にも準ずる状態に引き戻
すという目的を持っている。

  この帝国主義的な戦略の最終目的は、モスクワでネオリベラルの政治的傀儡
を権力の座に据えることだ。それはちょうど、悪名高いエリツィン 時代の10
年間に ロシアに対する略奪と破壊を監督した者たちのようなものである。アメ
リカ‐EU権力によるウクライナの掌握はその方向に向けての大きな一 歩である。

*包囲・征服戦略の評価
*
  現在のところ、NATOによるウクライナの奪取は計画通りには進んでいな
い。何よりもまず、クリミアの基地に関するロシアとの軍事条約合 意にあから
さまに 違反して行われた明白な親NATOのエリートたちによる暴力的な権力
強奪のために、ロシアはクリミア地域にいる圧倒的多数の民族的ロシア 人民を
保護する目 的で介入せざるをえなくなった。自由で開かれた住民投票に続い
て、ロシアはその地域を帰属させその軍事的な立場を確保した。

 ロシアが黒 海での海軍の存在を保持した一方で…、キエフにあるNATOクー
デター政府は、ウクライナの東半分にある民主主義を好みクーデターに反対 す
るロシア語支配 地域に対して、大規模な軍事的攻撃を発動した。その地域の
人々はウクライナの文化的な多様性を反映する連邦制政府を要求し続けているの
だ。アメリカ‐EU がクーデター政府に奨励したのは、大規模な民衆の異議に対
して「軍事的返答」を推し進め、ネオナチのテロを用いてロシア語を話す多数派
か ら市民的権利を剥 奪し、選挙で選ばれた指導者の代わりにクーデター政府が
指名した地域支配者の受け入れを民衆に強制することだった。この抑圧への反応
とし て人民自衛委員会 と地域の武装部隊は即座に立ち上がり、当初ウクライナ
軍は、何千人もの兵士たちが、キエフに設置された政権つまり西側の利益のため
に自分 の同胞たちを撃つ ようなことを拒否したために、後退を余儀なくされ
た。しばらくの間、NATO後援のネオリベラル・ネオファシスト連立クーデ
ター政府は 「権力基盤」の瓦解 と苦闘せざるを得なかった。同時にまた、EU
とIMFとアメリカからの「援助」は対ロシア貿易とエネルギー供給の停止に対
する埋め合わせ に失敗した。そこ でキエフのクーデター政府は、訪問したアメ
リカのCIA長官ブレナーのアドバイスのもとで、選び抜かれた「特殊部隊」を
(民族的に)多様 なオデッサの街に 派遣し、「見せしめ的」虐殺を企てた。市
の最大の労働組合本部を焼き討ちしてその中に閉じ込められてネオナチによって
脱出を妨害されたほ とんど非武装の 41人の市民たちを惨殺したのだ。死者の
中には、ネオナチの暴力から逃れようとした大勢の女性たちや10代の者たちが
含まれていた。生存 者たちはむごたら しく殴られ、ビルが燃えている間に傍観
していた「警察」によって投獄された。

*来るべき一揆‐クーデター政府 の崩壊
*
  オバマのウクライナでの権力掌握とロシア孤立化の努力は、EUの中でいく
つかの反対を引き起こしている。アメリカの制裁措置はロシアとの 深いつなが
りを持 つヨーロッパの多国籍企業に明らかな被害を与えている。東ヨーロッパ
とバルカンと黒海におけるアメリカの軍事的増強は、主だった経済的な 契約を
途絶させな がら、大規模な軍事衝突への緊張と脅威を高めている。アメリカ
‐EUによるロシア国境への脅威はプーチン大統領への民衆の支持を増大させ ロ
シアのリーダー シップを強化している。ウクライナでの戦略的な権力掌握は、
ネオファシストと民主的な勢力との間で、ウクライナの政治の二極分化を先鋭化
させ深化させてい る。

 帝国の戦略家たちがエストニアとポーランドで軍事的増強を推し進め激化させ
てウクライナに軍事力を投入している一方で、全体的な権 力の掌握は不安定な
政治的・経済的基盤の上に乗っかっているのだが、それは、血みどろの内戦と民
族間の殺し合いのさ中で、今年中にも崩壊 しうるものであ る。

 ウクライナのクーデター政府は早くも国の三分の一で、民主主義的でありクー
デター政権に反対する運動と自衛軍部隊に対する政治的な 支配力を失ってい
る。アメリカの軍事的な利益に仕えるためにロシアへの戦略的な輸出を断ち切っ
たことによって、ウクライナ人はその最も重 要な市場の一つを 失ったが、それ
は他と置き換えることが不可能である。NATOのコントロールのもとで、ウク
ライナはNATOが特定した軍事ハードウエア を買わなければな らないだろう
が、それはロシア市場に向かっていた工場群の閉鎖を導く結果になる。対ロシア
貿易の消失は、特に東部の熟練工業労働者の間で すでに大量の失業 を産み出し
ており、その人たちはロシアに移住せざるを得ないだろう。膨らみ続ける貿易赤
字と国家歳入の減少は全面的な経済崩壊をもたらす だろう。第3に、 キエフの
クーデター政府がNATOに従属する結果として、ウクライナ人はロシアから供
給されていた何十億ドル分ものエネルギーを失ってい る。高いエネル ギー・コ
ストは世界市場の中でウクライナの産業の競争力を失わせる。第4に、IMFと
EUからのローンを確保するために、クーデター政府 は食糧とエネル ギーに対
する補助金の打ち切りに同意しなければならないが、それは家庭の収入を激しく
目減りさせ年金生活者を極貧の中に放り込むことにな る。以前には工業 製品の
製造が保護されていた地方のどこにおいても、EUからの輸入がそれに置き換わ
るにつれ、倒産件数が増加しつつある。

 クーデター政 府内でのネオファシストとネオリベラルの間で起こる暴力ざた
と不安定さと紛争のために、新しい投資が流れ込むことは無い。このクーデター
政府は、政府のそ の日暮らしを安定させるためだけにNATOのパトロンたちか
らの300億ドルの無利子借款を必要としているが、そんな大金は今すぐにでも
近い将来にでも やってくるものではない。

 この一揆を計画したNATOの戦略家たちが単にロシアを軍事的に弱めること
だけを考えていたのであり、ウクラ イナがロシアの市場とローンと供給エネル
ギーにあまりにも頼っていたというのに、キエフの傀儡政権をもちこたえさせる
政治的、経済的、社 会的なコストにつ いて一顧だにしなかったことは明らかで
ある。そのうえに彼らは、予測できたはずのこの国の東部地域の激しい反発によ
る政治、産業、農業面 での力学を見過ご していたようだ。その代わりにワシン
トンの戦略家たちは、住民移送と虐殺の中での大規模な民族浄化を伴ったユーゴ
スラビア式の解体を仕掛 けるという、彼ら の算段を基本に置いていたのかもし
れない。何百万の民間人が死亡したにもかかわらず、ワシントンはそのユーゴス
ラビアとイラクとリビアを 破壊した政策が政 治的・軍事的に大成功をおさめた
と認識するのだ。

 最も確実なことを言えば、ウクライナは長期に渡る深刻な不況に落ち込むだろ
う。それに は輸出、雇用および生産の急激な下降が含まれる。おそらくは経済
崩壊が国全体に及ぶ抵抗と社会不安を引き起こすだろう。それは東から西 に、
南から北に広 がっていくだろう。社会的な動乱と大規模な苦悩がウクライナ軍
の士気をさらに低下させるかもしれない。現在でさえキエフは兵士たちに食糧
をたまにしか与え られておらず、コントロールの困難なネオファシストのボラ
ンティア戦闘員に頼らざるを得ないのだ。アメリカ‐EUは、リビア・スタイル
の 爆撃による直接的 な戦い方を用いる介入はしそうにもない。もしそうするな
らば、アメリカでの世論が消耗な帝国主義戦争に苦しみ、ロシアの一次産品企業
と結 びつくヨーロッパ の商業的利害関係者たちが仰々しい制裁を耐え忍んでい
るようなときに、ロシアの国境を巡っての長い戦争に直面するだろうからである。

 こ のアメリカ‐EUによる一揆は、失敗しつつある政権と暴力的な紛争で引き
裂かれる社会を作ったが、それは大っぴらな民族主義的暴力を産み 出しつつあ
る。実 際に、その結果として起こってきたのは各地域の境界線を引き裂く競争
者たちを伴った二重権力のシステムである。キエフのクーデター政府 は、ロシ
ア包囲作戦 でNATOが信頼を置くことのできる軍事的な連動装置として仕え
るための一貫性と安定性を欠いている。それとは逆に、アメリカ‐EUの制 裁措
置、軍事的な 脅迫そして好戦的な言い回しは、ロシアに西側世界に対する「開
放性」を即座に考え直さざるを得なくさせている。国家安全保障に対する戦略
的な脅迫はロシア をしてその西側の銀行と企業とのつながりを見直す方向に追
いやっている。ロシアは公共投資と輸入代替を通して工業化を拡大させる政策に
頼 らざるをえなくな るかもしれない。ロシアの富豪たちは、その国外資産を
失ってきたために、ロシアの経済政策の中心的な役割を縮小させていくのかもし
れな い。

  明白なことは、キエフでの権力掌握が決して「ロシア本土に突き刺さったナ
イフ」という結果にはならないことだ。キエフのクーデター政権の 最終的な打
倒と放 逐は、民主主義運動の急激な進展と労働者階級の自覚の高まりを基盤に
したウクライナの自治を先鋭化させうるだろう。これはIMFの緊縮財 政プロ
グラム、お よびウクライナの資産と企業を裸に剥いていく西側の機関に対す
る、彼らの戦いから現われるはずのものだ。キエフにいる西側の家来どものく
びきを投げ捨てる ことに成功するウクライナの工場労働者は、ロシアの大富豪
どものくびきに自分自身を縛りつける意図は持たない。彼らの戦いは、独立した
経 済政策を発達させ る能力を持ち帝国主義の軍事同盟者から逃れた、民主的な
国家を作るためのものである。

*エピローグ:

*/2014年メーデー:東部における二重の人民権力と、西部におけるファシズ
ムの盛り上がり/

  キエフのクーデター政府内でのネオファシストとネオリベラルの間での仲違
いは予想できたことだったが、それはメーデーの反政府派のデモ隊 と警官隊と
の間で 起こった大規模な騒乱によって明らかとなった。アメリカ‐EUの戦略で
は、ネオファシストを「奇襲部隊」として、そして選挙で選ばれたヤ ヌコ
ヴィッチの政 権を追放する際の街頭戦闘員として利用し、その後に彼らを切り
捨てる予定だった。国務補佐官ヴィクトリア・ヌーランドとキエフのアメリカ
大使との間で交わ されて録音された有名な会話に例示されるように、アメリカ
‐EUの戦略家たちは自分たち自身で指名したネオリベラルの家来どもに、外国
の 資本を代表して苛 酷な緊縮財政を押し付け、そして外国の軍事基地のために
条約を結ぶように奨励する。逆にネオファシストの戦闘員どもとその政党は国有
企業 を保持してナショ ナリストの経済政策を好むことだろうし、大富豪たち、
特に「イスラエル・ウクライナの二重の」国籍を持つ者たちに嫌悪を抱いている
ようで ある。

  経済戦略の推進に関するキエフのクーデター政府の無能さ、その暴力的な権
力の掌握、そして民主主義を好む東部の反体制派への弾圧は、「二 重権力」の
状況を 導いている。多くの場合に、民主主義的運動を抑圧するために派遣され
た軍隊はその武器を捨て、キエフのクーデター政府を見捨てて東部の自 治運動
に参加し た。

 ホワイトハウス、ブリュッセル、IMFという外部の支援者を除けば、キエフ
のクーデター政府は、あまりにもNATOに従属している ことによってキエフ
にいる右翼の同盟者たちから見捨てられ、またその権威主義と中央集権主義に
よって東部の民主主義的な動きからの抵抗を 受けている。キエ フのクーデター
政府は二つの椅子の間に倒れこんでいるのだ。それは大部分のウクライナ人の間
で正当性を欠き、キエフ政府庁舎群が占める狭 い土地のかけら以 外のあらゆる
場所で支配権を失っており、それらさえネオファシスト右翼によって包囲され、
幻滅を感じる従来の支持者から次第に距離を置か れているのだ。

  完璧に理解しておこう。ウクライナでの闘争はアメリカとロシアとの間での
ものではない。それは、片方にあるネオリベラル富豪群とファシストで構成され
る NATOお仕着せのクーデター政府、そしてもう片方にある工場労働者およ
び地域の戦闘部隊と民主的な委員会の間で行われているものなの だ。前者は
IMFと ワシントンを擁護し付き従っている。後者は地域産業の生産能力に頼
り住民多数派に応えることによって支配しているのである。

【引用・翻訳ここまで】


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