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2014年 5月 18日 (日) 11:36:36 JST


京都新聞社説:【集団的自衛権】  憲法9条の骨抜き許されぬ
http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20140516_3.html


 国民の生命と財産を守ることは政治の最大の務めに違いない。しかし、そのためなら、最高法規である憲法の解釈をねじ曲げてもいいのだろうか。
 安倍晋三首相は、私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇話会」(安保法制懇)が、集団的自衛権の行使容認を求める報告書を示したのを受け、憲法解釈の見直しや関連する法整備について検討する「基本的な方向性」を表明した。

 記者会見で安倍首相は、集団的自衛権行使の限定的容認は「抑止力を高め、憲法上も許される」とし、閣議決定による憲法9条の解釈変更を目指す考えを示した。

 首相の「お気に入り」を集めた安保法制懇は、法的根拠のない私的機関に過ぎない。その提言を論拠に、平和主義を体現する憲法9条を骨抜きにすることは政治の横暴であり、法治の否定である。

 歴代政権は「集団的自衛権は憲法9条が禁じている」とし、個別的自衛権や警察権の範囲内で有事や国際協力など個々の課題にどう対応するかに心を砕いてきた。従来の解釈では想定される事態に対応できないというのなら、憲法改正の手続きを踏むのが筋だ。

 現実優先の解釈変更

 安倍首相は記者会見で、海洋進出を企てる中国や核開発にこだわる北朝鮮など、日本を取り巻く安全保障環境が厳しいことを強調した。それは認めよう。しかし、そうした現実があるからといって、憲法を無理やり曲げて解釈することは許されない。

 安保法制懇の提言は、現実に憲法解釈を合わせようとする危険な論理で組み立てられている。「憲法論ゆえに国民の安全が害されかねない」「個別的自衛権だけで国民の生存を守り国家の存立を全うできるのか」と問う。

 そのうえで(1)密接な関係のある外国への攻撃(2)放置すれば日本の安全に重大な影響を及ぼす恐れがある(3)被攻撃国の要請・同意を得る−などの条件を付け、憲法が許容する「必要最少限の自衛措置」として集団的自衛権行使は許されるべきと結論付ける。

 自民党で高まる「限定容認論」に配慮した書きぶりだが、全く「限定」になっていない。急迫不正の侵害があり、他に適当な手段がない場合、必要最小限の実力を行使できる−という専守防衛に徹する従来の「自衛権発動3要件」からは明らかに逸脱している。

 先制攻撃も可能に

 特に(2)の条件下では、ミサイル攻撃などの恐れがあれば、日本が先制攻撃することも可能になりかねない。国連憲章は集団的自衛権を認めているが、それに憲法解釈を合わせるべき必然性はない。

 安保法制懇は、国連平和維持活動(PKO)などの国際協力、平時でも有事でもない「グレーゾーン」への対応にも提言した。その中で、9条が武力行使を禁じる国際紛争は日本が当事者の場合だけという新解釈を示し、国連決議に基づく多国籍軍への参加も可能とした。詭弁(きべん)に他ならず、さすがの安倍首相も取り上げなかった。

 日米安保条約では、日本が基地を提供する代わり、米軍は日本防衛義務を負う。集団的自衛権を行使できれば自衛隊が米軍を守れ、日本は米国と対等な立場となり、独立性と主体性を持てる−。これこそ安倍首相が目指す「戦後レジームからの脱却」の核心だろう。

 しかし、そうした日本の姿を国民は望んでいるのだろうか。共同通信の4月の世論調査では、憲法解釈変更への反対が52・1%で、賛成の38・0%を上回った。

 「アリの一穴」狙う?

 会見で安倍首相は、有事の際、外国から脱出する邦人を乗せた米艦船を例に挙げた。集団的自衛権を行使できなければ、この船を自衛隊は守れない、という訳だ。

 なるほどと思わせるが、従来の個別的自衛権で説明できるのではないか。時限付き特措法などによる対処も十分可能だろう。安倍首相が集団的自衛権に執着するのは「アリの一穴」が狙いではないかという疑念を消せない。

 今後、解釈変更の閣議決定に向け、自民党と公明党の協議が本格化する。安倍首相は「期限ありきではない」と、公明の同意がない見切り発車を否定したが、高村正彦自民副総裁は、年末の日米防衛協力指針(ガイドライン)改定に「間に合うようにせねば」とスケジュール感をにじませる。

 国の在り方の根幹にかかわる問題なのに、熟議を尽くす熱意が自民から感じられないのは困ったことだ。長く戦後政治を担ってきた責任政党として、過去の政府解釈を総括し、国民に説明すべきだ。

 「平和の党」を掲げる公明は踏ん張りどころだ。集団的自衛権を「限定容認」しなくとも、個々の事例に対応できるという立場は、合理的かつ現実的だ。野党がふがいない中、ブレーキ役をしっかり果たしてほしい。

 この機会にいま一度、憲法の前文と9条を読み返してみたい。戦争によってアジア・太平洋地域に未曽有の惨禍をもたらしたことへの痛切な反省と自己批判が込められている。その重い意味をかみしめるなら、解釈変更が軽々に許されるはずがない。

[京都新聞 2014年05月16日掲載] 		 	   		  


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