[CML 030208] 田母神俊雄20代得票の考察

林田力 info at hayariki.net
2014年 3月 13日 (木) 23:36:37 JST


2014年東京都知事選挙では田母神俊雄候補が60万票以上を得票した。特に世代別得票割合では20代の田母神支持の割合が高い。朝日新聞の出口調査によれば、投票した20代の4分の1近くが田母神氏に投票したという。これをショッキングに捉える傾向が強いが、むしろ他の世代と比べて20代の支持割合が高いことは社会の健全性を示すものである。

 田母神支持の大きな要因は貧困と格差に苦しむ人々のルサンチマンである。そのような人々は左翼に期待しても不思議ではないが、左翼は戦後レジームの脱却を阻止することばかりに注力する傾向が強いために、既得権擁護の勢力に映ってしまい、魅力を感じられないために右傾化する。それ故にブラック企業批判などで若年層の問題意識に応えることが適切な解決策になる。

 一方で田母神支持は貧困と格差に苦しむ人々のルサンチマンだけでは正当化できない問題がある。それは特に若年層の田母神支持で顕著になる。若年層が田母神氏を支持することは、他の世代が田母神氏を支持するよりも深刻な問題がある。田母神氏は選挙戦ではイメージ戦略を徹底した。その手法には主義主張は別として見習う価値があると言えるほどである。選挙戦でのイメージ戦略によって田母神氏を支持した人々は、選挙前の田母神氏の言動を支持しているとは限らない。これに対してインターネットに親しむ若年層は田母神氏の普段の言動を承知した上で支持している割合が高い。

 田母神氏は沖縄駐留米兵の女性暴行事件に際して「朝の4時ごろに街中をうろうろしている女性や女子高生は何をやっていたのでしょうか」とTwitterで呟いた。これは愛国者や民族主義者の発言でもない。雇われ右翼の発言である。このような発言を支持するメンタリティは、貧困と格差に苦しむ人々のルサンチマンでは正当化できない。

 「暴行される女性にも非がある」は虐げる人々と虐げられる人々がいる中で、虐げられる側を叩き、虐げる側を擁護する論理である。これは公務員バッシングや生活保護バッシングとは次元が異なる。公務員も生活保護受給者もワーキングプアに苦しむ人々から比べれば強者である。公務員や生活保護受給者が自分達の苦しみの元凶であるかは考えてほしいところであるが、ワーキングプアよりも相対的に恵まれていることは否定できない。主観的には持たざる者から持つ者へのバッシングである。

この点では在日韓国朝鮮人へのヘイトスピーチも本気で在日特権というフィクションを真実と捉えている人々ならば、主観的には持たざる者から持つ者へのバッシングになる。これらと「暴行される女性にも非がある」という抑圧者を擁護する論理は質的に異なる。十把一絡げにネット右翼を論じることはできない。

 確かに「貧困と格差に苦しむ人々が右傾化する」は一つの真実である。一方で、この命題は「ネット右翼は貧困と格差に苦しみ、しかも正しい抗議先を知らない哀れな人々である」という結論になり、左翼の精神衛生上、好都合なものである。それ故に多用されているが、それが田母神支持層の全てではない。ネット右翼は高学歴高収入が多いとの指摘もある(古谷経衡『ネット右翼の逆襲』)。

 残念ながら世の中には「だます人間と、だまされる人間では、だまされる人間が悪い」「いじめっ子と、いじめられっ子では、いじめっ子が悪い」を理解できない人々がいる。私は東急リバブル東急不動産に不利益事実を隠して新築マンションをだまし売りされた経験があるために身をもって理解している(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』)。その種の人々は自分が虐げられる側になることはないと高をくくっている。

このようなメンタリティが20代の割合が高いことは不思議ではない。幸いなことに自分が虐げられる側になった経験がない人々でも社会経験を積めば、自分が細い糸の上を歩いており、一つ間違えば糸から転げ落ちていたかもしれないとの想像力を持てることは多い。

これに対して世代傾向的に見るならば社会経験の浅い20代は「自分の成功は自分の努力の結果」と考えがちである。これはあくまで世代傾向的な議論である。言うまでもなく20代でも、他者の痛みに想像力を持てる人々は多い。そもそも20代の全てが田母神氏を支持した訳でもなく、棄権者を含めれば多数派でもない。一方で世代傾向的に見れば20代で田母神氏割合が高いことは仕方のないことと言える。
http://www.hayariki.net/poli/tamogami2.html
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林田力(『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』著者)
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