[CML 029960] 参与連帯とは

林田力 info at hayariki.net
2014年 3月 1日 (土) 17:02:53 JST


日本海賊党はシリーズ「2014東京都知事選をふりかえる」第6回「参与連帯とは」を2014年2月28日にニコニコ生放送などで放送した。2014年2月の東京都知事選挙で候補者の宇都宮健児氏が言及していた韓国の市民運動団体・参与連帯について議論する。ゲストは韓国の政治事情に詳しいレイバーネット日本の安田幸弘共同代表である。聞き手はココペリ氏(宇都宮選対サポータス)、井上大輔氏(宇都宮選対サポータズ)、林田力である。

 言うまでもなく日本と韓国では様々な相違がある。単に韓国で成功したという理由だけで、日本で真似事をすることが成功をもたらすことにはならないし、適切でもない。宇都宮氏による参与連帯の持ち上げもシニカルな見方をすれば、弁護士で市民運動家の朴元淳氏のソウル市長当選と自己を重ね合わせる選挙キャンペーンに過ぎないとの見方も成り立つ。

しかし、安田氏の話を聞き、日本版参与連帯の意義は大きいものと考える。その意義は日本の既存の市民運動に対する破壊的効果を持ちかねないほどである。宇都宮氏が日本版参与連帯を提唱することは非常に勇気があると言える。

まず参与連帯の活動領域は幅広い。安田氏の言葉を借りれば「市民運動のデパート」である。韓国の社会運動について調べれば、どこでも参与連帯が登場する状況である。石を投げれば参与連帯に当たるようなものである。これは細分化された日本の運動状況が見習わなければならないことである。

これは脱原発や秘密保護法反対などのメジャーなテーマに皆が結集するということではない。反貧困運動や消費者運動や開発反対の住民運動などの個別テーマに専門性を持って取り組むことである。あくまで管見であるが、これは細川護煕陣営の脱原発至上主義の対極にある。脱原発至上主義に対して福祉や反貧困などの政策も掲げた宇都宮氏が参与連帯を持ち上げ、それが宇都宮支持者の心に響いたことは単なる選挙キャンペーン以上の理由がある。

 参与連帯も最初から専従職員を持てるような大きな組織であった訳ではない。参与連帯が様々な個別テーマに専門性を持って取り組めたことは疑問である。安田氏によると様々な分野の研究者を集めたためという。そのために「市民なき市民運動」と揶揄されることもあったという。

 日本版参与連帯を考えた場合、アカデミズムの研究者を揃えることを真似することは難しい。仮にできたとしても、既存の左翼的な運動に屋上屋を重ねるようにしか映らない危険が高い。現実に2012年東京都知事選挙の「人にやさしい東京をつくる会」の文化人の集まりは、そのようなものであった。そこには新鮮味がない。

 日本版参与連帯を考える場合は左翼的権威とは無縁で個別の問題に取り組んでいる市民層によって専門性を担っていくべきであろう。たとえば宇都宮氏の公約では犬猫の殺処分ゼロが評価されたが、この政策の価値はアカデミズムの文脈では中々見出しにくいものである。

 次に参与連帯の支持層である。韓国では学生運動や労働運動が古くから存在したが、参与連帯は市民運動という点に新しさがある。安田氏の言葉を借りると、「プチ・ブル」的な性格もある。そのために「都会の余裕のある市民が趣味でやっている」的な批判もあるという。

これに対して日本の市民運動には左翼の手垢が付いたイメージがある。「プロ市民」などという言葉があるくらいである。私は東急不動産消費者契約法違反訴訟原告として開発反対の住民運動と接点があるが、住民運動家には市民運動的傾向への違和感がある。消費者運動となると政治的中立を持って旨とするような風潮がある。市民運動が広い市民に訴求されていない。それらの層に訴求する運動を作ることが保守の固い岩盤を崩す上でも重要である。

この点について安田氏は在特会などネット右翼(行動する保守)の運動が政治への問題意識を持った人々を惹きつけており、その手法は学ぶ価値があると指摘した。この指摘には既存の左翼はシニア世代の既得権擁護の運動に映るという観点から同意する。

 最後に日本版参与連帯を考える上で留意すべき点は地域性である。参与連帯は建設反対運動や賃借人追い出し反対運動など地域性の高い運動にも取り組んでいる。日本でも、これらの運動に取り組むことは住民運動と市民運動の距離を埋めるためにも重要である。これらの運動は地域の活動が重要になる。ソウルも多くの区に分かれているが、安田氏によると、参与連帯は地域毎の活動よりもセンターによる分野別縦割りが特色という。

この点は日本版参与連帯では要検討である。ソウル特別市は1千万人超で人口面では東京都に匹敵するが、面積約600キロ平米は東京都区部程度である。東京都の特別区には基礎自治体の意識が強く、江東区と大田区では領土問題まで抱えている。東京都を見据えた場合、センター一括では地域への運動の広がりは覚束ない。

 番組では方向性として「文化運動的なこと」とのアイデアが出た。これは地域性が欠けている状況の中で実現可能な現実解ではある。海賊党主催番組らしい帰結でもある。各地から集まって一つの勢力・一つの文化を作ることはできるが、地域で多数派を作ることにはならない。インターネット上などで面白いことをやっている人がいて、緩やかにつながるということは放っておいても自然に実現していく。どのように地域に広げていくかという点が大きな課題である。
http://www.hayariki.net/poli/sanyo2.html
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林田力Hayashida Riki
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