[CML 032193] 「河野談話」検証報告 私たちの国は民主主義の国か? 私たちの国のメディアは民主主義の国のメディアと言えるのか? この彼我の社説の違いはなにか?

higashimoto takashi higashimoto.takashi at khaki.plala.or.jp
2014年 6月 25日 (水) 14:20:29 JST


日本のメディアの社説(朝日、毎日、東京、読売、産経、日経)と海外メディア(ニューヨーク・タイムズ)の社説の違いをクローズアップ
してみました。日本のメディアの場合、ウルトラ・ライトの産経新聞の主張は論外としても他のどのメディアの社説も程度の差こそあれ
「アンタも悪いが、アイツも悪い」的なけんか両成敗論。およそ批評の名に値しません。対して、ニューヨーク・タイムズの社説は明確
に安倍首相及び日本の国家主義者を批判するものです。この彼我の社説の違いはなんでしょう? どこからくるものでしょう?

「ニッポンの戦争を下支えしてきたthe Sekenというしろものを心臓部に内包するマスメディア」(辺見庸「日録22」2014年6月24日)の「大
勢順応主義」という世間性に起因するものでしょうか?それとも、「『マーケットは間違えない』というビジネスの論理を受け入れ、それ
に基づいてことの適否を判断しているのにもかかわらず、自分たちがマーケットに選好されていないという事実は隠蔽している」(内田
樹「twilog」2014年6月25日)メディアの体質がそうさせているものでしょうか? 

「どうして新聞はこんなに批評性を失ってしまったのか」(同前)。それはおそらく「the 
 Seken」を構成する私たちの責任でもあります。私
たちの国のメディアの退廃は私には日本がW杯で敗けてもなぜかハイタッチしたり、道頓堀川に飛び込んで空騒ぎする若者たちの現
代世相の光景と重なって見えます。私たちは「世間」から外れる(志を持つ)。「われわれはひとりひとり例外になる。孤立する。例外で
ありつづけ、悩み、敗北を覚悟して戦いつづける」(辺見庸8月31日講演)ほかないのでしょうか。

・日本による歴史の目隠し 第二次世界大戦時性奴隷への謝罪(注:河野談話)が再び論争になる
(ニューヨーク・タイムズ社説 peacephilosophy訳:2014年6月24日)
http://www.nytimes.com/2014/06/23/opinion/apology-for-world-war-ii-sex-slaves-is-again-at-issue.html
http://peacephilosophy.blogspot.ca/2014/06/new-york-times-editorial-criticizes.html
「アジアの安全保障のために日本と韓国の間に建設的な関係が今ほど大切なときはないというときに、米国の同盟国であるその二
国は困難な歴史を乗り越えることができないでいる。(略)安倍晋三首相はこの報告書の発表をもって、1993年の談話へのコミットメン
トを再確認した。(略)しかしこの報告書が韓国との緊張を和らげることを意図されたとしたらそれは失敗に終わった。(略)この報告書
は、河野談話が舞台裏における韓国との激しい交渉の結果生まれたものであると言っており、確実な証拠に基づいたものであるかど
うかに疑問を呈しているように見えるものだった。日本国外の多くの歴史家は、日本の軍隊が女性たちに慰安所で働くことを強いたこ
とに合意しているが、日本の国家主義者たちはこの女性たちが売春婦であった、そして当局によって奴隷状態を強いられたのではな
いと主張し続けている。安倍氏は、そもそも検証を指示することで、限定的な国家主義的政治一派の歓心を買うことにより、この戦時
中の犯罪の被害者たちを不当に扱い、自国に損害をもたらしている。(略)日本の国家主義者たちは疑いようもなくこの報告書を政府
に談話を撤回させるよう圧力をかけるために使うであろう。今こそ安倍氏は自国と世界に対し「否定論者」は間違っているということを
明確にすべきであろう。安倍氏が進んでこの政治一派のご機嫌を取り続けることは日本が地域における指導的役割を果たしていく能
力を妨げている。米国が、アジアにおいて増している中国の強気の行動に対処していくために合理的な戦略を作っていくには、日本と
韓国との協力がどれだけ得られるかに大きく掛かっているのである。(略)民主主義国家であり世界第三位の経済大国として、日本が
過去を書き換えようとしているとみられるようなことがあってはならない。」

・「慰安婦検証 問題解決の原点に返れ」(朝日新聞社説 2014年6月21日)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11201305.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11201305
「この検証が行われたのは、日本政府が行った元慰安婦の聞き取り調査の信頼性を問題視する声が上がったからだ。談話の作成過
程を明らかにすることで韓国を牽制する狙いもあったのだろう。(略)安倍首相はかつて、慰安婦への謝罪と反省を表明した河野談話
の見直しを主張していた。だが、国際社会からの強い反発もあって、河野談話を見直さないとの方針に転じた。もう談話に疑義をはさ
むのはやめるべきだ。慰安婦問題が日韓の大きな懸案に浮上して、四半世紀がたとうとしている。(略)もっとも大切なのは元慰安婦
たちの救済であることは論をまたない。韓国政府に登録した元慰安婦の生存者は54人になった。日韓両政府に、互いをなじり合う余
裕はない。河野談話をめぐって「負の連鎖」を繰り返すことなく、今度こそ問題解決の原点に返るべきだ。」

・「河野談話の検証 これで論争に終止符を」(毎日新聞社説 2014年06月22日)
http://mainichi.jp/opinion/news/20140622k0000m070077000c.html
「談話が問題解決を目指した政治的文書の性格を帯びていたのは確かだ。事前調整があったのは、韓国が受け入れ可能な内容でな
ければ意味がないと日本も考えたからだろう。そのことで談話の信頼性や正当性が損なわれたと考えるのは誤りだ。(略)菅義偉官房
長官が談話継承を改めて強調したのは当然だ。米国務省のサキ報道官は「米国は河野談話を見直さないとした菅長官の声明に留意
している」とその姿勢を支持した。韓国側にも配慮を求めたい。過剰な表現で一方的な批判をするのは控えてほしい。こうした言動への
日本国民の不快感が、談話見直しへの一定の支持につながっているからだ。過去を冷静に見つめ、未来に生かす発想を互いに今一
度思い起こそう。検証をその契機にしたい。」

・「日韓と慰安婦 互いに譲歩し解決図れ」(東京新聞社説 2014年6月21日)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2014062102000125.html
「政府は従軍慰安婦問題で旧日本軍の関与を認めた「河野談話」の検証結果を国会に報告した。韓国側は反発しているが、互いの見
解に接点を見いだし、もう一度解決を図るべきではないか。(略)韓国政府は河野談話の内容には関与していないと主張しており、検証
結果に反発している。韓国側に説明を尽くさねばならない。(略)韓国の元慰安婦たちの生存者は五十四人、平均年齢は八十代後半に
なった。日本側の償い事業は未完のまま終了したが、日韓両政府は互いに譲歩し、被害女性を救済する人道的な解決策をもう一度探
るべきではないか。 オバマ米大統領は四月に訪韓した際、「慰安婦問題はおぞましい人権侵害だ」と述べた。国連機関の会議でも、日
本批判が出る。これまでの努力が十分理解されないのは残念だが、国際社会の視点は依然厳しいものがある。」

・「河野談話検証 外交的配慮が事実に優先した」(読売新聞社説 2014年06月21日)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20140620-OYT1T50186.html
「いわゆる従軍慰安婦に関する河野官房長官談話の綻びが、改めて浮き彫りになった。(略)韓国側が「韓国国民から評価を受け得る
ものでなければならない」と談話の修正を求めるなど、日韓両政府が緊密に表現を調整した実態が明らかになった。焦点の慰安婦募集
の強制性について、談話は「甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた」としている。(略)事実関係よりも政治的妥
協と外交的配慮を優先したのは明らかだ。極めて問題の多い“日韓合作”の談話と言えよう。(略)河野氏は談話発表時の記者会見で、
強制連行の有無についての質問に、「そういう事実があった」と答えた。誤った認識をさらに広げた河野氏の罪は重い。(略)談話の見直
しは、いずれ避けられないのではないか。」

・「河野談話の論議打ち止めに」(日本経済新聞社説 2014/6/21)
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO73095710R20C14A6EA1000/
「安倍政権が従軍慰安婦問題に関する「河野談話」の作成過程を検証した報告書をまとめた。(略)新たな論争を生みそうだが、あえて
提言したい。もう打ち止めにしよう、と。(略)自民党の保守派などは「軍の関与や強制連行を示す証拠はない」と談話を批判してきた。
(略)検証すると決めた時点では、談話の信ぴょう性を弱め、見直しにつなげる思惑があったようだ。(略)昔のできごとにはいくら調べて
もはっきりしないことが少なくない。元慰安婦の証言の食い違いなどを指摘しても水掛け論になるばかりで、得るものは少ない。いま政府
が取り組むべきは、長期的な日本の国益を見据えて外交政策を進めることだ。東アジアの不安定な安全保障環境を考えれば、民主主
義・市場経済の価値観を共有する日韓が角を突き合わせてよいことはない。河野談話の蒸し返しはもうやめて、未来につながる日韓連
携を考えるときだ。」

・「河野談話」検証 やはり見直しが必要だ 国会への招致で核心ただせ(産経新聞主張 
 2014.6.21)
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140621/plc14062103140019-n1.htm
「信憑(しんぴょう)性のない作文をまだ継承しようというのか。(略)検証では、唯一の根拠とされた元慰安婦16人の聞き取り調査がまと
まる前にほぼ談話がつくられ、聞き取りは事実の究明より「儀式」として行われたことが明らかにされた。事実に目をつぶり、政治決着を
急いだ談話の虚構性が一層明確になり、その信頼性が、根本から崩れた。根拠のない談話により、日本の名誉は著しく傷つけられてい
る。やはり談話は、破棄、撤回を含め見直さなければならない。(略)海外でも、韓国だけでなく米国など国際社会に「日本軍の性奴隷」
といった誤解と曲解が広がっている。相手の意向を踏まえ、謝罪を重ねる外交姿勢は国益を害し、国際的にも信用されない。根拠が崩
れた河野談話という負の遺産をなくし、事実を発信していかねば、過去の問題が蒸し返され、新たな謝罪要求を生むばかりだ。」



東本高志@大分
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