[CML 031880] 「日本と北朝鮮の拉致再調査合意はやらせの『出来レース』」という日刊ゲンダイの煽情記事をさも重要記事のように拡散する「外交というものに無知な素人の反応」について

higashimoto takashi higashimoto.takashi at khaki.plala.or.jp
2014年 6月 10日 (火) 21:24:19 JST


「日本と北朝鮮の拉致再調査合意はやらせの『出来レース』」という日刊ゲンダイ紙の「売らんかな」の煽情記事でしかない見方
をいかにも真実を伝える記事であるかのように一部に大騒ぎしている人たちがいます(北朝鮮の政策には私も多くの、それも許
しがたいほどの批判を持っているのですが、同国を「かの国」と呼び、無前提、無根拠、安易に批判する一部の(場合によって
は多くの)メディアの報道姿勢に対しても私は許しがたいものを感じています)。
http://blog.goo.ne.jp/kimito39/e/a7a82ed08794ea2a0996bab0de0cc4d2

しかし、「今回、政府の発表やNHKの報道が、いかにも現地で中味を埋める作業をしたように言い、また、安倍晋三が重大な決
断を下したように宣伝するものだから、その宣伝を真実だと素朴に信じ込んでいたのならば、TBSの報道を聞いて、「やらせだっ
たのか」と驚き憤る感想も出るかもしれない。が、それはあまりに外交というものに無知な素人の反応というものだ」とそうした大
騒ぎに一太刀浴びせている記事がありますのでその要旨をご紹介させていただこうと思います。

「世に倦む日日」ブログの「安倍晋三と外務官僚のアクロバティックス」(2014年6月2日付)という記事。私の見るところ、この「世
に倦む日日」ブログ記事は目も当てられないほどの裏づけのない推量記事も多いのですが、この筆者はときどきクリーンヒット
を放ちます。ご紹介する記事はそのクリーンヒットのひとつといえるだろう、と私は見ています。また、この記事の場合の「推量」
は的を射ているようにも思います。

先に私は、オバマ来日にともなうTPP日米交渉(甘利明TPP担当相=フロマン米通商代表会談)の際、わが国のメディアの多く
は「大筋合意には至らないまま『今後の道筋』を確認するにとどまった」(毎日新聞 2014年04月26日)と報道したのに対して、読
売新聞とTBSのみがアメリカ側の要求を全面的に呑む「密約」合意説を報道した意味合いを解く2本の記事をご紹介しました。

■天木直人氏のオバマ離日直前まで続いたTPP日米交渉「密約」説 ――TPP日米交渉は実は合意されていた。国民は安倍内閣
に完全にだまされたということになる 附:五十嵐仁氏の「密約」説(弊ブログ 2014.04.26) 

http://mizukith.blog91.fc2.com/blog-entry-861.html
■ウシとブタで安保を買った安倍政権 ――天木直人氏と五十嵐仁氏のTPP日米交渉「密約」説を裏づける山田厚史氏(デモクラ
TV代表・元朝日新聞編集委員)の論証記事(弊ブログ 2014.05.08)
http://mizukith.blog91.fc2.com/blog-entry-872.html

が、今回も、日本と北朝鮮の拉致再調査合意の「真相」に迫ったニュースを流したのはTBSでした。上記の「ウシとブタで安保を
買った安倍政権」の記事で山田厚史氏は「(密約は)真相が表面化した時、一大事になる。政府に同調的な論調の読売は、リー
クの受け皿になったのだろう」と密約を国民に秘密にする場合の「ガス抜き」の必要性を説いていますが、今回もTBSは、その
「ガス抜き」報道の役割を担ったようです。TBSにも読売と同じような政府に同調的な、政府がリークを託しやすいグループ(ある
いは個人)が存在することを強くうかがわせます。

以下、「安倍晋三と外務官僚のアクロバティックス - 6月末に訪朝発表か」(世に倦む日日 2014-06-02)の要旨。
http://critic20.exblog.jp/22189882/#22189882_1

・一部に、日朝の「拉致再調査」合意はやらせだったという発言が出ている。5/31のTBSの報道特集で、今回の合意内容がストッ
クホルムでの交渉前に全て事前に決まっていたという説明がされ、それを聞いての反応だ。しかし、この外交を「やらせ」の言葉
遣いで表現するのが適当かどうかは、首を捻らざるを得ない。基本的に、国と国との重要な外交交渉は、事前に事務方の協議
で合意事項が詰められ、会談時は最後の(発表文の)調整がされるだけだ。特に首脳会談の場合は、会議は単に形式だけの
イベント(マスコミ撮影会)にすぎない。

・今回、政府の発表やNHKの報道が、いかにも現地で中味を埋める作業をしたように言い、また、安倍晋三が重大な決断を下し
たように宣伝するものだから、その宣伝を真実だと素朴に信じ込んでいたのならば、TBSの報道を聞いて、「やらせだったのか」
と驚き憤る感想も出るかもしれない。が、それはあまりに外交というものに無知な素人の反応というものだ。実際は、ストックホル
ムの実務者協議は、やらせでも何でもなく、厳しい交渉が行われていた。厳しい交渉とは、北朝鮮が要求する総連本部ビルの安
堵について、どう決着させるかの鬩ぎ合いである。ストックホルムの3日間は、その問題に費やされたのだ。

・外交当局による「再調査」と「制裁解除」の取引は、今年3月の時点でほぼ成立していたのだ。残された難問が朝鮮本部ビルの
取り扱いで、これについては外務省が事務レベルで動かすことができず、安倍晋三の政治判断待ちになっていたのに違いない。

・安倍晋三が自身の「決断による成果」を国民に誇示したいがために、無理に時間を引っ張り、会談終了から1日置いて東京で
「合意成立」を発表する演出に出たと考えるのが自然だ。安倍晋三の政治は、すべて人気取りが目的である。ストックホルムで
合意発表していたら、手柄は伊原純一のものになってしまう。

・世間から指導力を称賛されたい一心の安倍晋三は、自分の決断でこの成果を得たのだとマスコミに宣伝させるため、わざわざ
伊原純一に「決裂」を発表させ、東京に戻して報告させる「儀式」をやり、そこで「決断」して合意を成立させたという形にした。演
出と宣伝のため、人気取りのため、5/28ではなく5/29に「合意発表」をしたのだ。

・TBSの報道特集の話は、決して真相を十分に捉えたものではなくて、その一部を伝えただけにすぎない。「拉致再調査」と「制裁
解除」の取引が、すなわちメインの合意内容が、ストックホルムの前に日朝間で決まっていたということなど、特にスクープでもサ
プライズでも何でもないし、目を剥いて驚くような衝撃の報道ではない。

・今回の交渉の胸突き八丁は「総連本部案件」の攻防と決着だったのである。TBSの報道は、むしろその真相を隠すもので、今回
の政治の本質を逸らすものだ。おそらく、あの記者は、外務省か官邸から、「こう言っとけ」と教唆されている。


東本高志@大分
higashimoto.takashi at khaki.plala.or.jp
http://mizukith.blog91.fc2.com/



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