[CML 031797] 美味しんぼ「鼻血問題」 福島出身の弁護士はどう見たか? ――石森雄一郎弁護士の問題提起は美味しんぼ「鼻血問題」議論の結論になりうるものではないか

higashimoto takashi higashimoto.takashi at khaki.plala.or.jp
2014年 6月 6日 (金) 16:51:29 JST


美味しんぼ「鼻血問題」に関して、弁護士ドットコム(6月5日付)に広島市在住の石森雄一郎弁護士へのインタビュー記事が掲載
されています。同弁護士の美味しんぼ「鼻血問題」に関する初期のコメントは本メーリングリストにおいてもすでに紹介させていた
だいていますが、今回のインタビュー記事では、同弁護士は弁護士さんらしく感情的な問題は排して、理論的、論理的な問題とし
て美味しんぼ「鼻血問題」の問題点、論点を再構成し、再提起しているように見えます。とても共感できる内容です。私としては、
石森雄一郎弁護士の問題提起は今回の私たちの「鼻血問題」の議論の最終結論になりうるものだし、また、ならなければならな
いだろう、とも思っています。

石森弁護士の論点提起自体が簡潔ですので要点整理はしませんが、要点箇所と思われるところはボールドにしました。下記を
ご参照ください。

■美味しんぼ「鼻血問題」 福島出身の弁護士はどう見たか? ――石森雄一郎弁護士の問題提起は美味しんぼ「鼻血問題」議論
の結論になりうるものではないか(弊ブログ 2014.06.06)
http://mizukith.blog91.fc2.com/blog-entry-894.html

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■美味しんぼ「鼻血問題」 福島出身の弁護士はどう見たか?(弁護士ドットコム 
2014年06月05日)
http://www.bengo4.com/topics/1605/

福島に行ったら鼻血が出た――。原発事故以降の福島県を描いた漫画『美味しんぼ』の表現が、大きな論争を巻き起こしている。
漫画そのものは「福島の真実編」と題した一連のエピソードが終わったところで休載に入ったが、その後も論争は続いている。福
島生まれの弁護士は『美味しんぼ』の表現をどう受け止めたのだろうか。福島県出身で、現在は広島市で開業する石森雄一郎
弁護士に話を聞いた。

●多様な意見や可能性を慎重に検討すべき

「私は東日本大震災発生時、福島県郡山市に住んでいました。そして震災から2年の間、同地に居住し、福島県内で家族、友人、
職場関係者、被災者と話してきましたが、この期間に震災前と比べて鼻血が出やすくなったという声を聞いたことはありませんで
した。私自身、原発事故後に鼻血が出たことはありません。

ただ、もしかしたら、『美味しんぼ』で書いてあるような症状に悩んでいる人がいるかもしれません。仮に作中の『放射性物質の影
響で鼻血が出る』という意見が、現在の医学的通説と大きくかけ離れたものであっても、これを『真実と異なる』と簡単に断じるこ
とはすべきではないでしょう。

今後の福島の状況を慎重に判断するためには、『美味しんぼ』に出てくる意見を簡単に否定することはむしろマイナスで、多様な
意見、可能性を慎重に検証する姿勢は絶対に必要です」

●簡単に結論を出せないから、苦しんでいる

「一方で、『放射性物質の汚染が健康に及ぼす影響』については、福島第一原子力発電所の事故直後から、さまざまな意見が
福島県民を取り巻いています。

安全なのか、危険なのか。福島県民の中には、どの意見を信じていいのか判断できず、それゆえに、解消できない不安を抱え
ている人が大勢います。

そうした観点から、子育てのあり方や生活のあり方について、家庭内で大きな意見の対立が起き、それがきっかけで離婚に至
る夫婦も現実にいるのです。

福島県民にとって、この問題はそれぐらい繊細なことがらで、現在も多くの人が翻弄され続けています。『安全か否か』について、
簡単に結論を出せないからこそ、福島県内に残った人も、県外に避難した人も、避難先から帰還した人も、それぞれの決断が
正しいのかどうかを考え、悩み、苦しみ続けているのです」

●いとも簡単に「断定」した姿勢が問題

「しかし、『美味しんぼ』の作者は、『福島は危険』『福島に滞在することで鼻血が出る』という意見をもつ双葉町前町長や岐阜環
境医学研究所所長ら、極めて限定された人の意見を聞いただけで、いとも簡単に、そして安易に、その意見が客観的に正しい
と『断定』し、それが『福島の真実』であるとしました。

騒動後に発表された言葉をみると、作者は『福島を危険視する意見内容が批判されている』と感じたようです。たしかに、そうし
た観点から批判した人も少なからずいたでしょう。しかし、もし作者の表現に、結論に至るまでの悩みや慎重さが感じとれたなら
ば、今回のような大騒動までには至らなかったはずです。

問題となった『美味しんぼ』の回を読んで、私が率直に思ったのは、『こんなに簡単に結論が出せるはずがない』ということです。
作中の『意見内容』が問題なのではなく、一つの意見にすぎないものを、ほとんど悩みを見せずに、いとも簡単に客観的事実と
して『断定』する表現姿勢が問題なのです。

福島県民ですら、いまだに悩み続け、判断できないことがらについて、いとも簡単に『福島は危険』と『断定』した作者の姿勢が、
騒動の大きな原因です。作者はそのことに気付くべきです」

      引用者注:上記のような『美味しんぼ』作者批判を決して「言論弾圧」などというべきではないでしょう。あえて注してお
      きます。

●「福島だけの問題」なのか?

「作者が意識しているかどうかは分かりませんが、『放射性物質の拡散と人体への影響という問題』を、『福島県だけの問題』の
ように描くことについても強い異議があります。

原発事故による放射性物質の拡散は、福島県のみならず東北、関東も含む非常に広範囲に及ぶものです。場所が離れていて
も高い値の放射線量が検出される場所は、福島県外にも広範囲で存在しています。

放射線の健康への影響について描くのであれば、『福島の真実』という表題は明らかに読者を誤導するものですし、福島県外に
も取材範囲を広げるべきだったと思います。そうした表題をつけてしまった作者自身も、『原発事故の問題は福島だけの問題』と、
誤解しているように思えてなりません」

石森雄一郎弁護士(広島弁護士会所属)
2002年3月 早稲田大学法学部卒業
2008年3月 中央大学法科大学院既習コース卒業
弁護士登録年2009年
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なお、先月30日に福島県相馬郡医師会は原発事故前とくらべて同事故後に鼻血の症状を訴える人は増えていないとする調査
結果を発表しましたが、そのことについてはこちらに書いています。同記事で私が言いたかったことは、右派的傾向の強い片山
さつき議員の「美味しんぼ」批判は正論である、と言わなければならないところに、いまの一部の「脱原発」運動の陥っている悲
惨な「淀み」と「現実」がある、と言うことでした。ご参照ください。
http://mizukith.blog91.fc2.com/blog-entry-891.html



東本高志@大分
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