[CML 031777] 「冷静さ」とはなにか。見る目の問題について

森中 定治 delias at kjd.biglobe.ne.jp
2014年 6月 5日 (木) 08:27:48 JST


東本さん

メール有り難うございました.

>江口氏の論は、憲法96条1項前段の国会発議要件(各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議)を軽視して同上1項後段の「国民投票」要件のみを特に重視しているという点で立憲主義の重要性を言いながら、その立憲主義のなんたるかをよくわきまえないきわめて主観的な論であることを指摘しておく必要があるでしょう。

そうですね.
中田氏がご紹介くださった江口氏の論考は,国民投票で賛同さえ得られれば,憲法96条1項前段の国会発議要件(各議院の総議員の三分の二以上の賛成で,国会が、これを発議)を抜いてしまうことを秘めている可能性があるというご指摘ですね.江口氏の論考1ページ目の最後に”民主主義におけるプロセスの話だからだ”とあり,それを狙った論考だと一概に決めつけることはできないけれども,その可能性を含んでおくことは必要だと思います.

興味深いご指摘を有り難うございました.
あらためて拝見すると,「みずき」というブログをやっていらっしゃるのですね.今後時々拝見させて頂きます.
御礼まで.

森中 定治



On 2014/06/04, at 21:23, higashimoto takashi wrote:

> 森中さん
> 
> 中田氏の転載記事を「冷静」な記事と評価されておられるようですが、見る目を誤っていると思います。
> 
> 中田氏の転載する江口氏の論はたしかにその冒頭で「たとえ憲法改正ではなく解釈改憲とはいえ、国のあり方を規定する憲法に対す
> る認識を問うものに対して、主権者である国民の共感なしに行うのは、そもそも国民主権の原理に反する行為である」と述べて「集団
> 的自衛権」の行使容認には反対するスタンスを示していますが、その論では「議論を通じ、投票などによる国民の理解も得られた上で、
> 運用ルールに対してもより明確に定めることができれば、集団的自衛権の行使は可能かもしれない」とも述べています(p1)。
> http://diamond.jp/articles/-/53821
> 
> 上記の論で「投票」とあるのは「投票などによる国民の理解」という言葉からも国民投票のことを指しているでしょう。そして、上記の論
> に「議論」とあるのも「国会の中での議論」のことではなく、「国民の間での議論」を指していることはこれも文脈上明らかです。
> 
> そうであるならば、上記の江口氏の論は、憲法96条1項前段の国会発議要件(各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、
> これを発議)を軽視して同上1項後段の「国民投票」要件のみを特に重視しているという点で立憲主義の重要性を言いながら、その立
> 憲主義のなんたるかをよくわきまえないきわめて主観的な論であることを指摘しておく必要があるでしょう。
> 
> 憲法学の泰斗の樋口陽一東大名誉教授は憲法96条の国会発議要件について次のように述べています。
> 
> 「96条はこれは憲法の前文の言葉ですけれども『正当に選挙された国会』で三分の二以上の合意が得られるまで熟慮と議論を尽くす。
> それでもなお残るであろう三分の一の意見を含めて十分な判断材料を国民に提供するのが国会議員の職責である。――96条の意味
> はそういうことであるはずです。」(「『96条の会』発足記念シンポジウム講演」26:14頃)
> http://www.youtube.com/watch?v=h3v9Iw5u4BM
> 
> 憲法研究者の上脇博之さんも「姑息な安倍改憲の危険性~96条先行改憲、解釈改憲、立法改憲~」という論攷の中でこの点に触れて
> 次のように述べています。
> 
> 「日本国憲法の改正手続は、国民投票だけで決まるのではなく、国会の発議とセットですし、かつ国会の発議なしには国民投票もありえ
> ないのです。それゆえ、国会の発議を軽視することは、日本国憲法の硬性性を正しく理解していないことになります」。
> http://www.jilg.jp/research-note/2013/07/11/639
> 
> 国会発議要件を軽視した憲法改正「国民投票」論は、上記に見た立憲主義の本質性を理解していないがゆえにしばしば危険な論へと
> 転化します。橋下大阪市長の江口氏とほぼ同様の憲法改正「国民投票」論は集団的自衛権の容認、憲法「改正」容認の主張とセット売
> りの主張であったことを顧みれば、そのことはほぼ自明でしょう。
> http://bit.ly/1tHrINU
> 
> 江口氏の論を安易に「冷静」な記事と評価するのは危険なことのように思います。
> 
> ただし、解釈改憲、集団的自衛権容認に抗するための憲法研究者の大同団結、統一戦線の立場からは江口氏のような論者との共闘
> もおおいに重視しなければいけないことは言うまでもありません。
> 
> 
> 東本高志@大分
> higashimoto.takashi at khaki.plala.or.jp
> http://mizukith.blog91.fc2.com/
> 
> 
> From: 森中 定治
> Sent: Wednesday, June 04, 2014 10:14 AM
> To: 市民のML
> Subject: [CML 031752] ダイヤモンド・オンラインご紹介 感謝
> 森中です.おはようございます.
> 
> 中田さんが昨日のCML031739でご紹介くださった,集団自衛権に関する江口さんの論考,大変興味深く拝見いたしました.やはり冷静に意見を述べられますと,気持ちよく心に入ってきます.先般来鼻血問題にしても,言葉の使い方にしても感情的な意見が行き交ったように思います.やはり冷静に話をしないと相互理解が深まらないように思います.
> 
> 私達も先般,4月12日に,市民シンポジウム「対論!人類は原発をどうするのか?」と題して午後1時から6時まで約半日に渡る長い対論を行いました.原発反対派と容認(必要)派との対論で,約650名のご参加を頂きましたが,ご参加くださった方も半分ずつ位ではないかと思います.両派が相互に敬意を保ち,言いっぱなしや枝葉末節を相互に突きあう不毛な場にならなかったのは,私としてもよかった,開催した甲斐があったと思っています.頂いたコメント等は以下の私のブログにまとめましたので,ご覧頂ければ幸いに存じます.
> http://blog.goo.ne.jp/delias/e/3d80d03a0714a3a116e239673086d7f8
> 
> 会場からいただきました講演者に対する質疑応答がまとまりました.小出裕章先生への質問に対する回答,森中および両講演者に対する質問と回答に分けて日本生物地理学会のHPに掲載いたしました.以下のアドレスが日本生物地理学会のポータルHPです.その“一番下”の『市民シンポジウム』をクリック頂くと質疑応答を見ることができます.核心を突いた質問があり,これを読むだけでも,当該シンポジウムのエッセンスが分かるのではないかと思います.是非ともお読み頂きますようお願い申し上げます.
> なお,クロージングを務めてくださった公共哲学の山脇直司先生が「デーリー東北」に寄せてくださった記事も同じく掲載しておりますのでご覧下さい.
> http://biogeo.a.la9.jp/
> 
> 当日の全経過を8つのYoutubeに分割して公開いたしました.これは上記のHPからも見ることができますが,以下に簡単なタイトルを付けて掲載いたします.
> 来年4月11日(土)も画期的なシンポジウムができればと考えております.よろしくお願いいたします.
> 
> 市民シンポジウム『次世代にどのような社会を贈るのか? 対論!人類は原発をどうするのか?』
> 1.趣旨説明 森中定治
> http://youtu.be/WCv7M1dkpBg
> 生物学系の学会がどういう経緯で,またなぜこのような一般公開の市民シンポジウムをもつのか? なぜ反原発派と原発容認派が対論するのか? 今後の人類に必要なものとは?
> 2.小出裕章講演
> http://youtu.be/NOIREmfyYpc
> 3.森中定治講演
> http://youtu.be/Nk2sX8ZCCZY
> 4.加藤登紀子 コメントとアカペラ
> http://youtu.be/tdl1daUOdUI
> 5.講演者への質問 飯野健次,後藤政志,
> 会場からの質問に対する返答 小出裕章,森中定治
> http://youtu.be/dF_weSFyNSM
> 6.ゲストの談話1 秋本真利,小山芳郎,木下幹康
> http://youtu.be/5JW1Jxg3lQk
> 7.ゲストの談話2 鈴木達治郎,須永昌博,山脇直司,吉岡律夫
> http://youtu.be/F0ZO_2echs8
> 8.講演に対するコメント 飯野健次,後藤政志
> クロージング 山脇直司
> http://youtu.be/7jmJgcPYU-E
> 
> 講演者およびゲスト(敬称略)
> 秋本 真利(自由民主党衆議院議員)
> 飯野 謙次(特定非営利活動法人 失敗学会副会長)
> 加藤 登紀子(歌手)
> 小山 芳郎(ジャーナリスト,元NHKプロデューサー)
> 木下 幹康(東京大学,PTS)
> 後藤 政志(原子力市民委員会委員,NPO APAST 理事長)
> 鈴木 達治郎(長崎大学核兵器廃絶研究センター副センター長・教授,前原子力委員会委員長代理)
> 須永 昌博((社)スウェーデン社会研究所所長)
> 山脇 直司(東京大学名誉教授,星槎大学学部長)
> 吉岡 律夫(NPO「トリウム熔融塩国際フォーラム」理事長)
> 森中 定治(日本生物地理学会会長,綾瀬川を愛する会副代表)
> 
> On 2014/06/03, at 17:47, nakata kentarou wrote:
> 
>> M.nakataです。
>> メールを送らせていただきありがとうございます
>> <拡散歓迎>
>> ””””””””””””””””””””””””””””””””””””””
>> <シリーズ>
>> ■【ダイヤモンド・オンライン:集団的自衛権の行使容認の是非】



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