[CML 029256] 愛の亡霊に見る日本という国家

大山千恵子 chieko.oyama at gmail.com
2014年 1月 28日 (火) 22:13:35 JST


クリエイティブ・コモンズ<http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%82%A8%E3%82%A4%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%96%E3%83%BB%E3%82%B3%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%82%BA>
の了承を得て、転載。

救援連絡センター <http://www.toben.or.jp/message/libra/pdf/2007_6/p14_15.pdf>
発行「救援」紙の、2面の連載コラムより。
 *愛の亡霊に見る日本という国家*


大島渚監督の映画『愛の亡霊』<http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%84%9B%E3%81%AE%E4%BA%A1%E9%9C%8A>
を再見、大島監督の国家に対する厳しい眼差しに改めてたじろいだ。ぼやっと観ていたら単なるメロドラマもどきの悲恋物語だが、その背景の設定が凄い。

舞台は山奥の農村、時代設定が明治時代。ちょうど農村の共同体規範が国家規範に移り変わる時代。これが絶妙。当時、日本は共同体規範を壊し、国家規範を人々に強要して「富国強兵」政策に全力を注いでいた。国家管理の戸籍制度を導入して徴兵と徴税を確保する。

農村に車夫とその妻・せきがつましく住んでいた。そこへ日清戦争から復員除隊した若い男・豊治が帰国。豊治が、せきを車夫から奪おうとし、思い
つめた豊治とせきは車夫を殺してしまう。物語の本筋はその三年後、車夫の不在を不審に思った村民が口々に噂を振り撒く。この噂が、せきと豊治を心理的に追
い詰めていく、その描写は鬼気迫る。

そんなある日、噂を聞きつけてか巡査がやってくる。そしてさかんに、せきにカマをかけるのである。村の噂と警察とで二人はさらに追い詰められていく。ノイローゼとなったせきは、自殺を図ったりと、さらに追い詰められ、一日中それ以外のことは考えられなくなってしまう。

そんな二人の前に、車夫の幽霊が登場。その幽霊が可笑しいのだが、二人を恨むでもなく生前同様に酒を飲んだり芋を食ったり淡々と振る舞う。最初は幽霊におびえた二人だが、幽霊を恐れることもなくなる。二人にとって幽霊よりも村の噂や警察の追及の方が恐怖なのだ。

終盤、村の若旦那が、縊死体となって発見され、当初は若旦那が車夫を殺してそれを苦に自殺したのでは、とこれまた噂が流れる。実は若旦那に猜疑
心を持った豊治の犯行であった。若旦那の妻は「怪しい奴は捕らえて、締めあげて白状させろと巡査に迫るが、巡査は「文明開化の時代だから慎重を期さなくて
はならない」と答え、思わず笑った。ともあれ国家規範は知らず知らず人々に浸透していく。

二人は自分たちだけの世界に閉じこもっていく。そこへ警官(=国家)が大挙して二人を襲い、逮捕。

結局二人は村民一同の面前で拷問を受け、自白を迫られる。何が文明開化なんだか。証拠は何もないのだ。

既視感覚に襲われないだろうか。村民の噂を現代のマスメディアに置き換えれば、まるきり同じ構図だ。メディアの扇動で一般市民が断罪し、国家に刑罰を強要する。国家を支えるこのような日本人のメンタリティは百年以上経っても、何一つ変わっていない。

http://blog.goo.ne.jp/chieko_oyama/e/1cf6080d0f1de4bb4accb6b438d3cfa9

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大山千恵子
ブログ 「千恵子@詠む...」 毎日更新http://blog.goo.ne.jp/chieko_oyama


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