[CML 028820] 見てない人でもわかる「永遠の0」がなぜ特攻礼賛か

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2014年 1月 9日 (木) 03:51:22 JST


CMLの一読者です。映画「永遠の0」は酷い映画でした、以下は見てない人でも
わかる「永遠の0」がなぜ特攻礼賛か、です。

●見てない人もわかる全部書いてあるあらすじ
 2005年フリーターの若者健太郎(三浦春馬)の祖母が死に、祖父(夏八木勲)
がひどく悲しむ。葬儀の席で実は自分の本当の祖父は今のおじいさんではなく宮
部久蔵(岡田准一)であり特攻で死んだと聞く。健太郎は久蔵の昔の戦友を訪ね
どんな人物か聞くと自分の命を最優先して戦闘に加わらず海軍一の臆病者である
と戦友1は言う。だがガダルカナルで部下だった戦友2(橋爪功)は腕のいい零
戦乗りでありよい人と言い、戦友3は家族を守るためだったと言う。久蔵の臆病
を馬鹿にした戦友4(新井浩文)はそのあまりの腕の良さに考え直す。戦争の経
過で久蔵は真珠湾、ミッドウェー、ガダルカナルを経験、内地で飛行教官となり
そして特攻隊へ配属される。そこで久蔵は特攻機の護衛を長くやり大変やつれて
いる。特攻は下手な若者ばかりが行くのだがある日なぜか久蔵は特攻に行く。出
撃間際に予科練で教え子であり久蔵を尊敬している若い戦友5(染谷将太)と飛
行機を交換、交換した機は故障機で戦友5は命拾いする、機内には妻子を頼むと
のメモがあった。久蔵は帰還せず、戦後戦友5は久蔵の妻子の面倒をみて結婚し
今の祖父(夏八木勲)になっていた事が明らかになる。健太郎や姉、母らは感動
して泣くのであった。

●感想:人工的で退屈なお涙ちょうだい映画
 原作がベストセラーの「愛国エンタメ」小説であり、原作者が右翼の安倍首相
を正面から応援しているため用心して見たが、退屈だった。

 全体が主人公久蔵がなぜ「命が大事で戦闘放棄する」という突飛な行動を取る
のか、久蔵がなぜ特攻するのか、などの謎を田中泯などの語り手に若者(三浦春
馬)が聞く事で明らかにするミステリ的構成だが、あまりに謎がくどく、かつ最
後は一番近くにいた祖父(夏八木勲)が知ってました、というありえない堂々巡
り的&ご都合主義的展開でこうしたミステリ的面白さはない。

 久蔵が命を大事にする為戦闘に加わらないという非現実さ、強制された訳でも
ないのに必ず死ぬ特攻をなぜ志願するのか明らかにされないこと、特攻出撃の瞬
間に飛行機の故障を察知し後輩と飛行機を交換し、故障で特攻から生き残るであ
ろう彼に妻子の世話を頼むというあまりに無理な展開などは、原作者&映画制作
者は観客の感動を誘うよう仕組んだつもりだろうが、戦争の実際を知る大人には
説明不足で感動できず白けるだけだ。
 これらの仕組みはあまりに人工的すぎる、しかし原作に既に感情移入している
若者には効果的で感動させ涙を誘うのだろう。
 
 
 更に問題なのは、制作者の提示しているこの映画の感動の根源的仕組みは「久
蔵さん、特攻で家族を守ってくれてありがとう」だが、映画はそれを明示的には
言わないし論理的にはあり得ない話である事だ。つまり映画のキモの部分はあり
得ない幻でできている。家族を守りたいなら久蔵は最後まで特攻しなければよ
い。なぜ特攻したか?その場にいた田中泯も「わかならない」と言っている。
 これは明らかに変だ、映画は久蔵が特攻に志願した経緯をあえて語らず、戦争
を知らない観客により「仕方がない」と勝手に合理化される事を期待しているよ
うだ。映画は表向き(明示的セリフのよるもの)では特攻は外道で駄目と言って
いるが、家族を泣かせるシーンで暗黙には賞賛している。

 なぜ映画のキモ部分を暗黙や勝手な想像にするかは、経緯を明示的に描いた場
合を想像すれば判る。その場合日本が犯した戦争全体の是非や、その戦争の中で
一個人がそれにどう向かうのかのテーマが明らかになるからだ。実際過去の特攻
映画ではそれが一つの焦点であり「戦争はしなければならない、しかし死ぬのは
いやだ」の間で特攻隊員は苦しむ、死なねばならない理由を求めようとする。そ
して戦後の多くの映画は結局特攻はなんの意味もなかった、とまとめている。
 
 今回の映画でももし明示的に描けば。日本国の犯した戦争は悪い、久蔵は志願
の将校であり、戦争に主体的に賛成し前向きだったとせざるをえないだろう。で
あれば特攻で死んだとしても「家族のため」にはならない、そんな個人的な行動
ではないからだ。
 
 従ってこの暗黙の合理化は重要な争点だ、これによって映画は全てを仕方がな
いで片付け、結果として戦争や特攻を肯定してしまうからのだ。こう分析すると
この映画は巧妙に、特攻の肯定・日本の戦争の肯定をしていると結論せざるを得
ない。原作者はこうやって観客(読者)の感動や肯定感情が特攻から戦争全体に
及ぶ事を期待しているのではないだろうか?

●配役(1941〜45年)
岡田准一(宮部久蔵・零戦戦闘員で後に特攻隊で死亡)命が大事で戦闘に加わら
ない戦闘機乗り、松乃の夫
井上真央(久蔵の妻・松乃)語り手の若者の母、役名以上の役割なし
染谷将太(予科練生・零戦乗り・久蔵の教え子)久蔵に惚れ込む、同じ特攻隊で
出撃し飛行機を交換、戦後は松乃を助け結婚してしまう
新井浩文(零戦乗り・久蔵の仇役・語り手4)久蔵に反駁するがあまりに腕がい
いのでほれ込む
濱田岳(零戦乗り・久蔵の部下・語り手2)ガダルカナルで部下、生きろという
教えに感動する

●配役(2005年)
夏八木勲(松乃の夫)=2005年の染谷将太、実は久蔵の教え子で後釜だった!
田中泯(零戦乗り・語り手4)=2005年の新井浩文
橋爪功(零戦乗り・語り手2)=2005年の濱田岳
三浦春馬(佐伯健太郎・久蔵の孫)話の語り手、若者観客の代弁者


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